新型コロナウイルスのワクチン接種が高齢者をはじめ若年層も含めて全国で進められている。ワクチンを1回目接種した後に急な予定などで、2回目の接種をキャンセルした場合、キャンセルした後に「2回目のワクチンが打てない」という事態に陥っている人がいる。なぜそのようなことがおきているのか、現状を取材した。

#モデルナ難民 “やむを得ず接種キャンセル”で2回目のワクチンが打てない

今、ワクチン接種を巡ってSNSなどで「モデルナ難民」という言葉が飛び交っている。
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(Twitterの投稿より)
「まじかモデルナ難民じゃん」
「モデルナ難民をなんとかして下さい」

『#モデルナ難民』と書かれた投稿。一体何が起きているのか?取材班がTwitter上でメッセージを送ってみると、返信があった。
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(Twitterでのやりとり)
「7月に職域接種1回目を受けて8月に2回目を予定しておりましたが、直前に子どもの通う保育園でコロナが出て、子どもが濃厚接触者に該当し接種できなくなりました」
「1回目は接種できたのですが、2回目は仕事の都合でどうしても打てなくなりました」
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「モデルナ難民」とは、職域接種で1回目のワクチンを打ち終え、その後、やむを得ない事情で2回目をキャンセルして打てなくなった人たちのこと。国は企業などに接種機会の提供を求めているが、期間が終わるなどして2回目を打つことができないというのだ。
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職域接種で使われているモデルナ製ワクチン。かかりつけ医での個別接種などではファイザー製のワクチンが使われていて、大阪市民の場合、職域接種以外でモデルナ製ワクチンが打てるのは、マイドームおおさか(大阪府)・インテックス大阪(大阪市)・国際会議場(自衛隊)の大規模接種会場3か所のみに限られている。

仕事の都合で2回目接種をキャンセルしたAさん

大阪市内に住む、「モデルナ難民」のAさん(40代)は、6月30日に職域接種で1回目のワクチンを接種した。しかし、7月29日に予約していた2回目は打てなかったいう。

(Aさん)
「どうしても30日に仕事上で予定が入ってしまい抜けられない予定が入ってしまったので、キャンセルをやむなく。大阪府の大規模(接種会場)とかがあるので、そういうところで受けようって簡単にその時は思っていたんで」
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Aさんは勤務先の親会社が用意した職域接種を受けていて、キャンセル後、親会社から2回目の接種について通知が届いたという。

(Aさんに親会社から届いた通知の内容)
「職域接種の追加実施は予定していない。2回目接種については、接種可能な医療機関や大規模接種会場をご自身で探していただくことになります」

Aさんは、大規模接種を行う大阪府などに電話をかけたが「2回目だけの受け付けはしていない」と門前払いされたという。

大規模接種の窓口へ電話をかけるも…全て断られる

取材した日も、大阪市、大阪府、自衛隊の大規模接種の窓口へ電話をかけてもらうと…。

(大阪市の担当者)
「大阪市では、職域接種で受けられている方の2回目のご案内というものを受け付けはしておりませんので。(Q会社がもう2度としないと言っているんですけれども、そういう場合はどうにもならない?)大阪市ではそちらの受け付けをしていませんので」

続いて、大阪府に問い合わせてみると‥。

(大阪府の担当者)
「こちらマイドームおおさかでは、2回目だけの方は接種ができなくて。現状、不可能でして…こちらでは…」

そして、自衛隊は…。

(自衛隊の担当者)
「そういった場合ですと、一度、市町村に問い合わせていただく形になるんですけれども。(Q市町村はもう問い合わせしたんです。やっぱりダメだったので)そうですか。そうですと、他の会場にご連絡していただいて探していただくことになりますね」

Aさんはこの日も全て断られた。
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(Aさん)
「たらい回しで、結局わからないことになってしまいますよね。はぁー。悲しくなるね本当にね。なんか」

打ちたくても、もうワクチンが打てない。こうした「モデルナ難民」を救う手立てはないのか?

職域接種を行う企業間で融通し“救済接種”も

国内では今年2月からワクチン接種が始まり、約7か月で全人口の54.4%が2回目の接種を終えている(9月22日時点)。これまでに職域接種を行った企業は約3900に上っていて、9月11日に接種を行っていた企業に、2回目をキャンセルした場合について尋ねてみた。
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(職域接種を行う「大東建託」 伊藤直樹総務部長 9月11日)
「いわゆるモデルナ難民という人が少なからず出るよねと。どうしようというのはずっと課題であったんですけれども。他の企業で職域接種やっているところにお願いをして救済接種をやっていくと。お互いそこは助け合いながらという形になるかと思います」

職域接種を行う企業間でワクチンを融通しあう形で「モデルナ難民」を救済するという。

大阪府 1日10件前後の問い合わせも「受け入れることは難しい」

しかし、Aさんのように個人で探す場合はどうなのか?大阪府の担当者に、直接話を聞いてみると…。

(大阪府ワクチン接種推進課 藤田浩良課長 9月17日)
「職域接種はあくまでも企業が主体となって取りまとめていくものです。個人さんからの問い合わせであれば、我々はその方が職域接種の2回目かどうかの確認もなかなか難しいです。(Q個人からの問い合わせはどれぐらいありますか?)だいたい1日10件前後の問い合わせがあります。(Q毎日10人前後の問い合わせだと、本当に困って大阪府に電話してきていて、それくらいの人たちにもなかなか対応できないのですか?)結局、その10人を受け入れるとによって、1回も打てていない10人を断っていることになるんですね。そこのバランス、考え方だと思います」

 大阪府では受け入れることは難しいと話した。

近畿の各自治体の対応は‥?

では、他の自治体はどうなのか、京都府・滋賀県・奈良県・兵庫県・和歌山県に電話をかけて聞いてみると…。
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(京都府の担当者)
「府としては、すみませんがお受けしていないです」

(滋賀県の担当者)
「企業に言っていただいたら企業さんからリストをもらって対応させてもらいますという回答をしています」

(奈良県の担当者)
「会社さんが主体となって動いて会場を探すという形です」

京都府、滋賀県、奈良県では“個人”で『2回目だけの接種の予約は難しい』という回答だった。しかし、兵庫県は…
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(兵庫県の担当者)
「どうしてもという事情がいろいろ個々にございますので、その事情によって、県の方で対応や救済措置を考えると」

兵庫県は『個人であっても救済措置を考える』と回答し、和歌山県も同じく「個人でも救済措置を考える」という回答だった。

吉村知事「最後の受け皿として柔軟に対応していきたい」

大阪府でも個人に対して2回目接種の対応ができないのか。大阪府・吉村洋文知事に聞いてみると…。

(大阪府 吉村洋文知事 9月18日)
「どうしてもという方からご相談があれば、最後の受け皿として大阪府が、そこはしっかりと対応したい。柔軟に対応していきたいと思います」

取材班に対して、個人の2回目接種も“柔軟に対応”する考えを示した。

制度上の問題に翻弄される人たち。3回目の接種に向けた準備が進む中、ワクチンが打ちたい人全員に行き届く方法はないのか。「モデルナ難民」がどれほどの規模で存在しているのかなどは、分かっていない。

(2021年9月22日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『特命取材班スクープ』より)