今年5月の完全失業者数は、男性は前月比1万人増だったのに対して、女性は前月比で10万人増加した。MBSでは女性100人にアンケート調査を実施。すると約2割が「最近死にたいと感じた」と回答した。その背景には何があるのか、新型コロナウイルスで仕事を失い自殺を図った女性が取材に応じてくれた。

自ら命を絶った娘 母の胸の内

7026人。去年1年間で自殺した女性の数だ。男性が11年連続で減少傾向にある中、女性は増加に転じた。

関西に住んでいたマユミさん(仮名・50代)。去年の夏、自ら命を絶った。

(マユミさんの母親)
「コロナのクルーズ船の最初のニュースが流れたでしょう。あの時点から娘は神経質になっていました。『気晴らしにどこか行こうよ』と言っても一切出てこない。『こういう時期だから外には出られない』ということで。ずっとそれでした」

結婚して専業主婦だったマユミさん。母親と離れて暮らしていたが、新型コロナウイルスの感染が広がると外出を極端に控えるようになったという。
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(マユミさんの母親)
「そこまで深刻になる何かがあったのではないかと思うんですけれども。私はコロナで死んだと思っているんです。コロナさえなければね。毎日楽しく暮らせたのに」

母親がマユミさんに送ったLINEのメッセージ。体調を気遣う内容だったが既読にはならなかった。マユミさんの自殺について周囲には伝えていない。話せないことが多い中、同じことが繰り返されないために、取材に応じたという。

(マユミさんの母親)
「本当に苦しいんですよ。自死で亡くすということが。それを若い人が思いとどまってね、自分のお母さんとか大切な方がものすごく苦しむんだから、考え直して頑張ってほしいと思います」

“女性100人調査” 23人が「最近死にたいと感じたことがある」

今SNS上では、追い詰められた女性たちが悲痛な思いを綴っている。

【SNSより一部抜粋】
『コロナ禍長すぎ、また延長されるし。子育て、不便だし孤立』
『人生初の解雇だよ。死ねと言われているようで死にたい気分』

長く続く新型コロナウイルスと向き合う生活。どんな影響を及ぼしているのか。取材班は今年6月に夜の街を行き交う女性ら100人にアンケート調査を行った。

(アパレル店員)
「月15万円くらいあったんですけれどもそれが半分以下に。結構ギリギリまで追い詰められている」

このアパレル店員の女性(25)は「最近、死にたいと感じたことはありましたか?」という質問に「はい」と答えた。

(アパレル店員)
「軽く思っちゃったりはするって感じ。欲しいものも買えなかったりするので。コロナになってからです」

38歳の会社員の女性も同じ質問に「はい」と答えた。

(会社員)
「休業状態。楽なんですけれど、それでもやることがないと。(Q死にたいに“はい”と答えているがどのように考えたことがありますか?)めちゃくちゃ深くまではいったことはないですけれども、やっぱり人に会いたい」

風俗業界で働く24歳の女性は…。

(風俗業界で働く女性)
「周りの子とかも本当に死んじゃった子もいるので。(Q最近ですか?)最近。この状況で、仕事していてもメンタルやられて、相談する人もいないので、死んじゃったって聞きますよ。(Q収入は減りましたか?)めっちゃ減りました。この仕事は本当に暇なこと。なに頑張っても暇。そういうとき本当に死にたいって感じです。何してるんやろうと」
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今回100人にアンケートを取ったところ、23人の女性が「最近死にたいと感じたことがある」と答えた。その理由については、収入の問題や人間関係、家庭の問題を挙げる人が多く見受けられた。

(18歳学生)『家族と絶縁したから』
(24歳女性)『お金がなくなるとかなり辛いので死にたくなる』

「孤独感」「虚無感」で自殺を図った女性

大阪府内に住む橋本なずなさん(21)。飲食店とフィットネスジムでアルバイトをしていたが、去年4月に2つとも休業に追い込まれたという。

(橋本なずなさん)
「もうゼロですね。最後の収入と呼べるものが10万円の給付金。あれが最後でした」

なずなさんは母親と暮らしていて、高校を卒業後はアルバイトで家計を支えていたが、新型コロナウイルスで仕事を失い、精神的に追い詰められたと話す。

(橋本なずなさん)
「すごく自分の中で許せないことで、人に養ってもらうということが。自分の弱みを見せるじゃないですけれども、情けない姿・弱い姿を見せることが一番苦しかったことなので、結局何も自分ではできないからそれを見せるしかなかった。それがすごく苦しくて、自殺という自ら命を絶とうという選択に至ったんだと思います」

去年7月に自殺を図ったなずなさんは交際していた男性に助けられて一命をとりとめた。当時襲ったのは「孤立感」や「虚無感」だったという。

(橋本なずなさん)
「彼と母は仕事が業種的に止まらなかったので、彼と母は社会に出ていて社会性を保っているのに、私だけは保てていない。社会から離れてしまって孤立してしまって、ものすごく孤独感を感じました。それがステイホームだったり自粛を呼び掛けられたりすることで、どんどんどんどん孤独感は増していったんじゃないかなとは思います」

自殺を図った直後に病院に駆け付けて娘と対面した母親は…。

(母親・友紀子さん)
「その時に『ママごめんね』という感じがあるかと思っていたんですよ。そしたらつんけんしていて、うっとうしそうに、しゃべりたくなかったんでしょうね。その姿を見せたくなったのか。その時は注意深く見ていなかったし、そういうふうな目では見ていなかったし。部屋に引きこもっていたので正直様子がわからなかった」

(橋本なずなさん)
「今は本当に助かって良かったなって。助けてくれて本当に感謝していますし。長い年月を育ててもらったのに、いろんな母の努力で成り立ってきたこの命を自ら捨てようとしたのは、本当にすごく失礼なことだったな」

なずなさんは自身の経験から、悩みを抱えた人が1人で苦しまないために、悩みを抱えた人と心理カウンセラーなどとのマッチングサービスを今年から運営している。

「休業要請」や「非正規雇用の解雇」などで社会との接点が途絶えた人たちをどう支援していくのか。今、大きな課題となっている。
(6月30日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『特命取材班スクープ』より)


【悩みがある方・困っている方へ】
もしもあなたが悩みや不安を抱えて困っているときには、気軽に相談できる場所があります。

▼こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556
全国どこからでも共通の電話番号に電話すれば、電話をかけた所在地の公的な相談機関に接続されます。相談に対応する曜日・時間は都道府県・政令指定都市によって異なります。

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▼チャイルドライン:0120-99-7777(毎日ごご4時~ごご9時)
チャイルドラインは18歳までの子どもがかけるでんわです。

▼厚生労働省の自殺対策ホームページ:https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/
上記以外にも、厚生労働省が様々な相談方法や窓口を紹介しています。SNSを通じた相談窓口もあります。