新型コロナウイルスはコウモリが発生源(自然宿主)と言われていて、別の動物が媒介役(中間宿主)となってヒトに感染したと言われている。動物由来の感染症は実はこれまで他にも頻繁に発生している。こうしたウイルスの前になすすべがあるのか、取材した。

新型コロナ感染ルートは「コウモリ→動物→人」か

“チャイナウイルス”とも揶揄された新型コロナウイルス。その発生源は何なのか?いまだに判然としない。5月26日、アメリカのバイデン大統領は発生源について新たな情報を得たとして情報当局に追加調査を指示、これに対して中国側は…。

(中国外務省 趙立堅報道官 5月27日)
「アメリカは事実や真相を全く気にせず、厳粛で科学的な起源解明に興味もなく、新型コロナウイルスを利用して汚名を着せたいだけだ」

2021年1月、WHO(世界保健機関)は2019年12月にクラスターが発生した中国・武漢の海鮮市場を調査。市場ではヤマアラシやアナグマなど多くの野生動物が売られていた。

2021年3月に公表されたWHOの調査報告書では、この市場から感染が始まったかどうかは明らかにされていないが『ウイルスを保有する動物から、中間宿主(媒介役)となる動物を経由して、ヒトへと広がった可能性が高い』と記されていた。

WHOはウイルスの発生源(自然宿主)の候補として新型コロナウイルスに似たウイルスが検出された「コウモリ」をあげている。この時、ウイルスはいわば眠った存在。その後「コウモリ」のふん尿や体液などから媒介役(中間宿主)とされる別の動物を経由し、最終的にヒトへ感染が広がった可能性が高いと考えられている。

これまでもチンパンジーやコウモリが感染ルートとされる『エボラ出血熱』や、ハクビシンやタヌキからの感染が疑われている『SARS』など感染爆発が起きている。

動物輸入卸会社の“水際対策”とは

動物由来の感染症、その水際対策とは。大阪府寝屋川市の動物輸入卸会社「ペットサン」。ペットとして人気が高いモモンガ、ゴールデンハムスター、ヒョウモントカゲモドキ、ミーアキャットやチンチラなど、幅広い種類の動物を取り扱っている。

(ペットサン 尾原愛梨獣医師)
「ミーアキャットはタイから来た子たちになりますね。だいたい6~7週齢ぐらいの、まだ小さい子たちになります。チンチラはアンデス山脈の標高5000mほどの寒い所が原産で、他の小動物と同じ部屋だと少し暑すぎるので涼しい部屋にいれています」
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入荷した動物たちは寄生虫を駆除する薬が与えられるなどして管理されている。

(ペットサン 尾原愛梨獣医師)
「だいたい抗生剤や駆虫薬。本人たちは元気で下痢などの症状がなくても、海外からの輸送のストレスですとか、食事が変わることのストレスで免疫が下がって急に寄生虫が増える事がある」

さらにインコなどの鳥はふんを採取し、「オウム病クラミジア」と呼ばれる細菌が含まれていないかPCR検査を実施している。オウム病にヒトが感染すると、深刻な場合、インフルエンザのような症状に陥ることもあるという。

(ペットサン 尾原愛梨獣医師)
「だいたいは『不顕性感染』と言って、オウム病クラミジアを持っているけれども、あまり症状がなく普通に暮らしている。たまにオウム病クラミジアがふんに入っている。そのふんを触った飼い主などがかかることがある」

世界では新型コロナウイルスの感染は一部の動物にも広がっている。オランダなどで毛皮用の家畜『ミンク』からヒトへの感染が確認され、こちらの会社では同じイタチ科のフェレットの輸入を自粛している。

蚊が媒介する「ウエストナイルウイルス」に警戒

野生動物とウイルス。新型コロナウイルスのパンデミックの陰で警戒が強まっているウイルスが存在するという。取材班は研究施設がある北海道へと飛んだ。酪農学園大学・人獣共通感染症学ユニットの内田玲麻講師(博士)。虫により媒介されるウイルスの研究などを行っている。

(酪農学園大学 内田玲麻講師)
「日本に存在しない感染症が入ってくる、それを未然に検知する、この数年でも今まで報告されていなかった感染症がかなり見つかっています」

いま、研究室では蚊が媒介する、あるウイルスについて調査を続けている。

(酪農学園大学 内田玲麻講師)
「ウエストナイルウイルスに関しては研究者間で非常に関心が高い。症状としては脳炎のウイルスで、重篤度が高い病気になります」

『ウエストナイルウイルス』とは、鳥が自然宿主とされるウイルスで、鳥の血を吸った蚊が媒介役となってヒトにも感染するとされている。重症化した場合に発疹やけいれんなどが起きて、死に至る場合もあるが、有効な薬やワクチンはいまも開発されていない。アメリカでは1999年に初めて感染が確認されてから数年で全米に拡大、渡り鳥が感染源になる可能性があり、日本にウイルスが侵入しても不思議ではないという。

(酪農学園大学 内田玲麻講師)
「人流や物流であれば、ある程度水際対策でストップすることができるかもしれないですが、渡り鳥の移動を阻止することはできませんので。(日米は)気候も似ていますし、北半球で広がった事例があるわけなので、日本でも環境的にはそのような事(感染拡大)が起きてもおかしくはない」

実験室では、鳥の死骸などをサンプルとしてウイルスに感染していないかを調べている。

(酪農学園大学 内田玲麻講師)
「脳を取っています。脳から乳剤というものを作って、そこからRNAを抽出してウイルスの検索を行っていくというような流れです」

脳をすりつぶした液体『乳剤』からウイルスを検出するために必要なRNAを抽出。その後、PCR検査にかけ電気泳動と呼ばれる方法で解析している。ウエストナイルウイルスはまだ日本での感染報告はないが、内田講師はこう話す。

(酪農学園大学 内田玲麻講師)
「『絶対入ってこない』とは思わない方がいいとは思います。どのような動物がどのようなウイルスを持っているかを病原性・非病原性にかかわらず広く知っておくと。常に向き合っていかなければならない問題だと思います」

ワクチンの普及で終息への光が見え始めた新型コロナウイルスだが、次なる感染症の脅威はすぐそこにあるのかもしれない。

(6月2日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『特命取材班スクープ』より)