生まれつき特定の分野で優れた才能を持つ子どもたちがいるのをご存じでしょうか。『ギフテッド』などと呼ばれ、ともすれば“天才”というイ メージを持たれがちですが、中には学校や家庭で様々な困りごとを抱えている子どももいるといいます。子どもたちの才能を伸ばしながらどのように向きあえばいいのか、取材を通して、ひとつの形が見えてきました。

算数やプログラミングが得意で「算数オリンピック」にも出場した小学生

 大阪府豊中市に住む、小学3年生のタクヤ君(9)。休日は、両親と妹の4人で近所の公園で遊ぶのが大好きです。
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 そんなタクヤ君、同じ世代の子どもとは少し違っています。

  (母親)「立方体とか立体を書くの好きやね」
(タクヤ君)「うん」
  (母親)「図形が好きなん?」
(タクヤ君)「うん」

 タクヤ君が得意なのは算数です。
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 去年は世界の子どもたちが競い合う算数オリンピックにも出場しました。

 (タクヤ君)
 「これ、金は取れなかったけど。(Qなんのメダル?)算数オリンピック」
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 (タクヤ君)
 「(Q算数のどんなところが面白い?)問題が楽しいというか、難しい問題を解くのが楽しい。(Q大人になったら何になりたい?)大きくなったらゲームを作る人になりたい」
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 そしてもう1つ得意なのがゲームのプログラミングです。これまでにタクヤ君が作ったりアレンジしたりしたゲームは70以上にのぼります。共有サイトにアップしたところ、半年余りで再生回数が1万3000回を超えたゲームもあります。

専門機関の検査で「ギフテッド」と指摘

 タクヤ君は2歳半ごろ、当時住んでいた上海のインターナショナルスクールの先生から「ギフテッドかもしれない」と言われました。そして小学2年の時、専門機関の検査を受け、「ギフテッド」と指摘されました。

 ギフテッドとは数学や芸術など特定の分野で優れた能力を示す子どものことですが、公式な判定基準はありません。
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 専門機関の検査を受けたのは、学校からのすすめだったといいます。

 (母親)
 「授業中にちゃんと授業を聞かずに立ち歩いてしまったりとか、違うことをしていたり。絵を描いたりとか」
 (父親)
 「(同級生との)衝突というかトラブルがずっと続いていて、先生からも毎日のように学校での問題が伝えられてというのがしばらく続いていた」

 専門家によりますと、能力が高いために、授業が優しすぎて苦痛だったり同級生と話が合わなかったりといった困り事を抱えている子どもは、クラスに1人か2人はいるということです。

漢字などの反復練習が苦手「1問、2問やってはちょっと休憩」

 IQ149のタクヤ君。算数が得意な代わりに漢字などの反復練習が大の苦手です。

 【漢字を反復して書いている様子】
   (父親)「なに今のマルは?どういうこと?」
 (タクヤ君)「いまの飛ばそうとした」
   (父親)「なんで飛ばそうとしたん勝手に」
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 【書き抜き問題に取り組む様子】
   (母親)「書き抜きなさい」
 (タクヤ君)「見えない」
   (母親)「書き抜くのがイヤだそうです」
 (タクヤ君)「イヤじゃなくて、ややこしいだけやって」
   (母親)「ややこしいってどういうこと?」
 (タクヤ君)「だから面倒くさいってこと。書くのがイヤってこと」
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   (母親)「宿題途中。集中力がなかなか続かない。1問、2問やってはちょっと休憩。はい、続きやろうか」
 (タクヤ君)「えー」
   (母親)「書くのが面倒くさいの?」
 (タクヤ君)「もー」

 (母親)「『ハテナ』がいっぱい」
 (父親)「なにこれ?」
 (母親)「漢字のドリル。すごいことになってる」
 (父親)「ぐちゃぐちゃ。できているページもある」
 (母親)「(ページが)くっついている。くっつけたんかな、イヤで。べっとりノリで貼りつけてる」

学校では同級生とのトラブルも…「友達との関わり方」を工夫し改善へ

 注意欠如・多動症、いわゆる「ADHD」も併せ持つタクヤ君は、小学校では支援学級の先生に見守られながらクラスメートと一緒に授業に参加しています。
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 (支援学級の担任)
 「タクヤ君はお勉強がすごくできるお子さんなので、それよりもお友達とのつながり方だったり関わり方だったりでうまくいかないという時があるので、教室の中でどうやってお友達と関わっていくかということを学んでいるという感じです」

 支援学級の先生によりますと、1年前は同級生とのケンカなどトラブルも多かったといいますが、関わり方を工夫すると最近はずいぶん落ち着いてきたといいます。

 (支援学級の担任)
 「要は相談し合ってやる。『ここまではしてほしいと先生は思っているんだけど』と聞いてみたりとか。お互いの了承のもとにするという感じですね。正直、公立の学校でギフテッドの子に対する対応はそこまでできていないのが現状です」
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 【小学校の連絡帳でのやりとり】
 (支援学級の担任)「はじめは自由帳で紙をくるくるまるめて棒づくりをしていました。テストみんなが始めると『さ、そろそ本気出そか』と言って取りかかり、テスト受けました。自分で切りかえてました」
      (母親)「ほめると喜んでいました。ありがとうございます」

母親「どういう風に接するかによって彼は本当に変わる」

 (母親)
 「環境が全てだと思っています。家庭の環境ももちろんそうですし、周りのお友達の環境、学校の環境。接してくださる方がどういう風に接するかによって彼は本当に変わるので。一時期、学校で荒れていた時期があったんですけれども、それはもちろん先生は悪気があったのではなくて、普通のお子さんとして直した方が彼のためにいいからと思ってやってくださっていたことが、結果的には彼にとっては苦しくてマイナスだったということがあったので。先生ももちろん、周りの生徒さんたちにも理解していただいて、ちょっと環境を変えて接してくださると彼は本当にいま落ち着いていまして、穏やかに過ごすことができています」
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 子どもの才能を伸ばしながら直面する困りごとにどう対応するか、現在、国の有識者会議で支援に関する議論が進められています。