投資といえば「株」をイメージしますが、いま、注目を集めているのが「山」です。縁遠いと思うかもしれませんが、元手も少なく、『寝ていても儲かる山』もあるといいます。全国に数百の山を持ち“山王”と呼ばれる男性がいます。その男性を取材しました。

山で稼ぐ投資家…ポイントは『鉄塔と送電線』

投資家の永野彰一さん(31)。
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永野さんが出版した本「一生お金に困らない“山”投資の始め方」は次のようなフレーズで始まります。

(『一生お金に困らない“山”投資の始め方』より)
「永野彰一。全国に数百もの山を所有し、億単位の資産を持つ彼を人はこう呼ぶ…『山王』!」
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果たして永野さんとはどんな人物なのでしょうか。一見、億単位の資産を持っているようには見えませんが、自宅の机の上にはダイヤがあしらわれた腕時計が置かれていました。

(永野彰一さん)
「ブランドはシャネル。わりとレアだと思います。(Qちなみにいくらですか?)定価だと1300万円くらい。家は建ちますね」

永野さんはプロの雀士でもあり、勝負勘は折り紙付きです。
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どうやって山で稼いでいるのか、現場を見せてもらいました。永野さんが向かったのは福島県猪苗代町。保有する山の中でも抜群の収益力がある場所だといいます。
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山の全貌は針葉樹の山林でどこにでもある何の変哲もない場所に見えますが、永野さんはこの山について次のように話します。

(永野彰一さん)
「“寝ていてもお金を生む山”なのかなと思います。送電線が通っていますので、送電線の下が『線下補償』という形で、それぞれの借地料や線下補償料が支払われています」
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ポイントは鉄塔と送電線でした。所有地に送電用の鉄塔があり、数百mにわたり電線が通っています。このため電力会社から一定額が支払われていました。

(永野彰一さん)
「年間で10万円になります。本当に大きいですね」
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一方、この山の購入額は…

(永野彰一さん)
「4万4000円になります」

つまり、4万4000円で買った土地が、毎年10万円ほどの収益を生み出しているのです。鉄塔や電線の周囲で木々の枝が伸びても、電力会社が伐採してくれて保守する必要はありません。さらに、電力会社側から伐採のたびに数千円が支払われます。
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(永野彰一さん)
「基本的に送電線を撤去しない限り、例えば原発が止まったり、火力発電所が止まったりして、電力を供給する先が止まったとしても、この敷地料は入り続けるんですよ」

永野さんは全国にこうした『金のなる山』を数多く持っているのです。

1本200円…山の土地にある『電柱』×『本数』がそのまま収入に

別の日、永野さんが「投資物件を調査に行く」と聞いて、取材班は同行することにしました。やってきたのは京都府南丹市。携帯の位置情報を頼りに、山のかなり奥地にある目的地に向かいます。

(永野彰一さん)
「今回買うところは、いま(売値は)1円ですけれども、30年前は280万円で買っているんですね」

土地の所有者は処分することを優先して、タダで譲るわけにはいかないので1円で売り出したといいます。
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永野さんはこれまでも、ほぼお金を払わずにいくつもの山を購入しました。タケノコなど自然の恵を楽しんできたといいますが、今回の目的は別のところにありました。それは電柱です。
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(永野彰一さん)
「電柱ありますね。これはきてますよ。これは期待できますね。この先、家がないと思うんですけど電柱があるんです。ということは、このまま電柱が繋がって、自分が今回買おうとしている土地に電柱が入っていれば、毎年電柱収入が入ってくる」
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所有している土地に電柱が立っていると、1本単位で電力会社から「電柱敷地料」が支払われるのです。その土地が、宅地か山林かなどで料金は違うといいます。

(永野彰一さん)
「家の敷地だと1年間に1500円もらえるんですが、山林だと1年間に200円。1本なら確かに200円なんですが、100本なら年収2万円になりますし、1000本なら年収20万円になりますし。そう考えると、とにかく電柱を探し続ける旅をしているだけで永久に不労所得が増えていく」

たった200円、されど200円です。ちりも積もれば大きな収益になります。この積み重ねの結果、「山王」と呼ばれるようになったのです。
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ちなみに電柱を支えるワイヤーは「支柱」と呼ばれ、これにも電柱と同じ200円が支払われます。

(永野彰一さん)
「ずっと(電柱が)続いていますね。これは期待できますね。あるある!もうちょっとですね、これ勝ったかもしれないな!」
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土地は、「課税標準額」が30万円未満なら固定資産税はかかりません。もし、電柱があれば200円×本数の収入になります。

でも残念ながら今回、電柱は購入を考えていた土地の外側に立っていました。

(永野彰一さん)
「本当に残念ですね。あとちょっとなんですけどね」

「子どものころから食べ物や住む家に困った」永野さんが投資をするワケ

日本の国土は7割が山林です。しかし今、所有者の高齢化が進んでいて、相続や自然災害などによるリスクを回避しようと、山林を手放したい人が増えています。
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永野さんはこうした状況をチャンスと捉えました。全国を巡って永野流の投資に適した物件を探しています。しかし、それはお金を貯めることだけが目的ではありませんでした。

(永野彰一さん)
「子どものころから食べ物にも困ってきて、住む家にも困って。それで自分で稼いだお金で生活しないといけなくなったという、色々な事情があったので」

空き家をリフォーム「賃貸弱者」の人たちに格安で貸し出す取り組みも

山林を巡る傍ら、今、永野さんが力を入れているのは、売買が難しい空き家を格安で購入し、自分でリフォームをするなどして、格安の賃貸物件として貸し出すことです。山と同様に住宅も空き家となり、その扱いに困っている物件が増えています。
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(永野彰一さん)
「自分が若いころに賃貸が借りられなったというのもありますし、家賃保証に関しても、6万円は通らないけど5万円は通るとかあるんですよね。その人の年収で」
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すでに、こうした物件を数百軒持っていて、主にひとり親家庭など、いわゆる「賃貸弱者」と呼ばれる人たちに格安で貸し出しているといいます。

(永野彰一さん)
「(賃貸弱者は)たくさんいますね。最後に自分の所に来れば家が借りられるよという、受け皿になりたいと思っています」      

ユニークな投資哲学で貧困から「山王」と呼ばれるまでに上りつめた永野さん。しかし、「自分が苦しかったからこそ、人とのつながりを大事にしたい」。それが永野さんのこだわりです。