52万5490組。これは厚生労働省の人口動態統計による2020年の婚姻数ですが、戦後最も少なかったということです。2019年の「令和婚」の反動とコロナ禍による減少とみられています。一方で人と交流する機会が減り、逆に結婚に対する気持ちが強くなったというデータもあります。コロナ禍の婚活事情を取材しました。

「マスクは挨拶のときだけ外す」コロナ禍ならでは『対面』の婚活パーティー

新型コロナウイルスの感染拡大から早くも2年目に入りました。コロナ禍で、出会いの機会があるのか街の人に聞いてみました。

(専門学生)
「今の時期はそんなん…ないですね」
(浪人生)
「あんまりないですね。塾に女子がいるっていうぐらいで」
(浪人生)
「コロナ禍やし、なんかやめとこかなみたいな」
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そんな中でも「結婚したい」と切に願う人は少なくありません。11月7日、大阪市内のホテルで開かれた婚活パーティー。コロナ禍においても参加人数を調整しながら対面で行われてきました。
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(司会)
「このような情勢でございますので、本日はマスクをつけたままお話いただくようにお願いいたします」

婚活パーティーは男女が集う真剣勝負の場。ですが、マスクで顔の半分が見えない残念な事態に。そこで…。

(司会)
「マスクを少しお外しいただいてご挨拶。そのあとマスクを着用してお話をスタートしてください」
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挨拶のときに、マスクを外して顔を披露。つまり、ありのままの顔を見られる貴重なチャンスタイムです。自分のマスクを外して相手の顔も伺います。この日は、20代~40代の男女26人が4分毎に入れ替わり会話する形式で行われました。そのたびにマスクを外すわずかなチャンスタイムがあるのです。
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この婚活パーティーに参加していた30代の男性は今年の春、婚活をスタート。コロナ禍で出会いが減ったことも参加するきっかけの1つだったといいます。

(参加した男性 30代)
「やっぱり以前よりは出会いの場が少なくなっているなというのは感じるので、さみしいですね。正直なんとなく人肌恋しいなとかも思うときもあります」
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同じく婚活パーティーに参加していた、3年ほど婚活を続けているという女性はこう話します。

(参加女性 30代)
「そろそろもう30代後半なので、結婚とあと出産を考えると、そろそろ(婚活を)始める時期かなと思って」

久々の対面でのパーティーに少し緊張するといいますが…。

(参加女性 30代)
「(オンラインの)画面越しだけじゃわからない雰囲気ってあるじゃないですか。ありがたいですよね、直接お会いできるというのは全然違うので」

限られた4分間の会話を阻む「透明な壁」

参加者は、限られた「4分間」で互いのことを知ろうと努めます。

(女性)「お酒よりコーヒー派ですか?」
(男性)「お酒僕全然飲めないんですよ」
(女性)「そうなんですね」
(男性)「弱すぎるので」
(女性)「じゃあこれも?(男性のそばに置いてある飲み物を指し示す)」
(男性)「ジンジャーエールです」
(女性)「なるほど」

しかし、そのやりとりを阻むものが…。
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(女性)
「ん?…ごめんなさい、ちょっと聞こえない。どうしよう」

アクリル板です。見慣れた感染防止対策ではありますが、婚活においては貴重な会話を妨げる憎き「透明な壁」となっていました。

(参加女性 30代)
「パーティションに耳をあてて『え、なんて?』みたいな感じで(アクリル板の)間からじゃないと聞こえなかったりする」

シニア対象の婚活パーティーでも…会話を阻む壁

シニアを対象とした婚活パーティーでは、「透明な壁」はさらに憎さを増します。
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(女性)「投資っていうのは何なさっているんですか?」
(男性)「はい?」
(女性)「投資って書かれてますけど何なさってるんですか?」
(男性)「株とか投資信託…」
(女性)「え?」
(男性)「株とか投資信託ですね」
(女性)「ああ、投資信託ね」
(男性)「株主優待とか」
(女性)「ん?」
(男性)「株主優待…」
(女性)「ああ~なるほどなるほど」
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貴重な4分間なのに、なかなか会話が進みません。シニア対象の婚活パーティーに参加した60代の女性はこう話します。

(参加女性 60代)
「何を言ってるかわからないんですけど、いちいち聞き返す時間もないのでニコッと笑ってうなずいていたりとか」

60代の女性は、婚活パーティーに参加した動機について次のように話します。

(参加女性 60代)
「息子が結婚してから心境がかわりまして。なんとかロスって言うんですかね、そういうのってね。誰かのために生きていたいなとか、そんなふうに思いました」
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一方、パーティーに参加した60代の男性のきっかけは。

(参加男性 60代)
「お風呂で滑って軽い骨折みたいになり、救急車呼ばなあかんとなったときに1人だったので、もうこれはやっぱり誰かいればって思うようになりましたね」
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コロナ禍でも旺盛だった「婚活欲」。パーティーの主催者によりますと、2019年以降婚活市場はそれほど大きなダメージを受けず、7月~10月の間の入会数は2年連続で増加しているということです。
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日本成婚ネットの晴山楡里グループリーダーは、コロナ禍の婚活についてこう話します。

(日本成婚ネット 晴山楡里グループリーダー)
「婚活って1年1年みなさん年を取っていくじゃないですか。そういうところで待てない、止まれないっていうところはあるかなと、みなさんお感じになっているかなと思います」

「会わすことに意義がある」プロ仲人もアドバイス「オンラインお見合い」

一方、お見合いで数々のカップルを成立に導いてきた「プロ仲人」はコロナ禍でどうなっているのでしょうか?

大阪にある『お見合い塾』の山田由美子塾長。取材した日、向き合っていたのはパソコンです。オンラインでのお見合いを30分後に控えた男性、さいとうさん(仮名)に直前のアドバイスを送っていました。

(お見合い塾 山田由美子塾長)
「自分がしゃべっているときにカメラを見るねんな。そうすると、今うちがあんたの方向いているみたいに見えるやろ?」

オンラインならではの目線のアドバイスまで。好印象をゲットするには、オンラインにおいてもアイコンタクトが重要です。照明なども細かくアドバイスすること15分。いよいよお見合いの時間です。
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(お見合い塾 山田由美子塾長)
「今から40分間お話ししてくださいね」

あとは、お若い2人で…。
(さいとうさん 仮名)「せきねさん、こんにちは」
 (せきねさん 仮名)「こんにちは。はじめまして」
(さいとうさん 仮名)「はじめまして。きょうあの、お天気いいですか?」
 (せきねさん 仮名)「うん、(天気)いいですよ」
(さいとうさん 仮名)「こっちも、宇都宮もぜんぜん、あたたかくて…」

ひっそりと、画面越しに2人のやりとりを見守る山田さん。
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(お見合い塾 山田由美子塾長)
「やっとちょっと笑いが出てきた。そうそうそうそう」

40分の会話が終了した後、山田さんはさいとうさんに感触を確認しました。

     (山田塾長)「楽しかった?」
(さいとうさん 仮名)「楽しかったです」
     (山田塾長)「ほんなら、交際もしむこうがOKやったら交際できる?」
(さいとうさん 仮名)「はい」

好感触です。
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山田さんは、コロナ前にはオンラインお見合いなど想像もつかなかったといいますが、今回の2人はどちらも関東在住。住んでいる地域を問わず、お茶代がかからないなど、相談者側のメリットも多く、導入してよかったと振り返ります。

(お見合い塾 山田由美子塾長)
「仲人からしたら、会わすことに意義があるねん。会っていけば、絶対結婚につながる可能性は出てくる。だからオンラインはできて良かったと思う」

出会いたい、結婚したいと望む人がいる限り、婚活市場は様々な制限にもへこたれず進化を遂げているのです。