「ピル」といえば『避妊薬』という印象を持っている人も多いと思いますが、若い世代を中心に『生理痛を軽減する』など、一般的な『治療薬』として認識されています。彼女たちが偏見なく、ピルについて知識を得ている背景にSNSの存在がありました。変わりつつある「ピル」の今を取材しました。

「ピル」について情報を発信するYouTuber

助産師でYouTuberの大貫詩織さん(29)。チャンネル登録者14万8000人のうち多くが10代20代の女性です。この日は視聴者から質問の多い「ピル」についての動画を撮影しました。

(YouTuber 大貫詩織さん)
「ピルに関しては学校とかで教えもらえない話なので、関心をもっていても、どういうふうに使っていいのか、使うと体にどんな変化があるのか、みなさんわからないと言うので、ピルに関連する動画は何本かあげています」

大貫さんは助産師として性教育に関する執筆を行う傍ら、生理や避妊など踏み込んだ性教育の動画をYouTubeにアップしています。

(YouTuber 大貫詩織さん)
「ヤーズフレックスという、私が飲んでいるピルです。1日1錠、決まった時間に内服するのを毎日。1週間で1列、1か月28日分」

そもそもピルとは医療機関での受診が必要な薬で、女性ホルモンが主な成分です。一般に「避妊薬」という印象が強いピルですが、避妊だけでなく生理痛や生理前のイライラなどを緩和する効果もあるといいます。

(YouTuber 大貫詩織さん)
「(ピルを飲む前は)すごく出血も多かったし、お腹も痛くてふらふらだったけれども、生理ってそういうものだと思っていたんですよね。避妊の目的のためにピルを飲み始めてみたら生理が軽くなって、生理軽い人ってこんな生活だったんだって、その時にすごく驚きました」

「避妊薬」ではなく「治療薬」 若者に広がるピルのイメージ

治療薬としての側面もあるピルですが、「低用量ピル」について大阪の街で聞いてみると…。

(73歳の人)
「避妊薬?ピルを飲んでいると(飲み終えても)妊娠しないとかいううわさも聞いたことがあったので、ちょっとイメージ悪いですね」
(46歳の人)
「体に良くないイメージ。自然の摂理というか、流れを薬で変えてしまうというのが負担になるんじゃないかと」

“体によくない”といったイメージが先行しています。一方で、10代20代の人は…。

(23歳・大学院生)
「生理痛の軽減とかをしてくれるイメージがあります。(服用したこと)あります。自分が飲み始めてからは楽なんで、悪いイメージはなくなりました」
(18歳・大学生)
「生理の周期を整えるために飲んでいるとかは聞いたことがあります。そういう使い方があるんだって驚きもあったけれども、最近はそういうのが普通なのかなって」
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“抵抗もあまりない”ようです。その背景のひとつに…。

(14歳・中学2年生)
「好きなカップルのYouTuberが紹介している」
「(ピルについて)学校の授業では習っていない」

最近、YouTubeなどでピルを飲んでいることを発信する人が増え、若者にとってピルは「避妊薬」ではなく「治療薬」として浸透してきているのです。

ピルのリスクは?

では、ピルにリスクはないのか、産婦人科医に聞きました。

(産婦人科医 柴田綾子さん)
「ピルを飲み始めて1か月2か月くらい、足がむくんだり、吐き気が出たり、胸が張ったりとかがあります。人によっては頭痛が出ることもあります。でも飲み始めの症状って軽くて、身体がピルの成分に慣れてきたら自然におさまることが多いかなと思います」

ただ、こうした知識がないままピルを飲んで後悔したという人もいます。

オリンピックを考えて“副作用を知らず”ピルを服用

2008年の北京オリンピックで競泳選手として出場した伊藤華英さん。開幕の3か月前に生理周期がオリンピックと重なることに気づきました。生理によるイライラなどの症状が競技に影響を与えるため、ピルを飲みはじめたといいますが…。

(元五輪競泳出場選手 伊藤華英さん)
「一番大事なオリンピックで失敗した。副作用が出てきてしまって、重要な3か月間で体重が3kgから5kg太ったりして、ニキビができたりして、むくんでいるような、月経前のお腹が膨らんだ感覚がずっと続いているような状態」

メダルを狙っていましたが結果は、準決勝敗退。伊藤さんは飲みはじめに起こる副作用のことを知りませんでした。

(元五輪競泳出場選手 伊藤華英さん)
「ピルを使うメリットもあれば、デメリットもあることを理解して使ってみる。そのあたりの知識を深めていく必要がある。ネガティブなものでは決してないかなと思います」

「生理や避妊方法」若者が気軽に相談できるクリニック

ピルについて相談できる場は重要です。去年4月、大阪市福島区に開院した「スマルナ医科歯科レディースクリニックOSAKA」。

(助産師 上林比呂己さん)
「こちらはユースクリニックです。ユース層という25歳以下の方にむけての相談をメインとしているクリニックになります」

若者にとってはまだまだハードルが高い婦人科への受診。25歳以下を主なターゲットにすることで、10代でも気軽に相談に来られるようにしています。生理や避妊方法など人には言いにくい性の悩みを助産師らが親身になって聞いてくれます。また、若者が不安を打ち明けやすいように、LINEでも相談を受け付けています。
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(助産師 上林比呂己さん)
「一緒に相談にのって考えようねという場所なので、誰にも相談できないから来てほしい。相談に来るのが当たり前なクリニックになればいいなと思います」

これまで避けられてきた性のハナシ。SNSで声を上げる人が増え、タブーとされた風潮も変わり始めています。

(YouTuber 大貫詩織さん)
「生理って大変で当たり前という価値観もすごく大きいのかもしれないなと思います。生理痛あって当然、貧血っぽくなって当然、そういうのを我慢してみんな過ごしている。安全性の高い治療も増えてきていて、生理を軽くするという治療を受けることが可能になっているので。我慢しすぎる必要はないと伝えていかないといけないなと思います」

(8月31日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『コダワリ』より)