世界に押し寄せる『ウッドショック』。7月1日から様々な食材が値上げされていますが、実は「木材」を使った家具や住宅も値上げせざるを得ない状況になっています。世界的な木材不足が原因ですが、そのきっかけは新型コロナウイルスの感染拡大にありました。

北米産の木材を使用した家具が人気 しかし7月から値上がり

大阪市中央区の家具店「マスターウォール大阪」。こちらではピアノなどにも使われる高級木材である北米産の“ウォールナット”を使用したテーブルやイスが人気です。
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(マスターウォール大阪 谷口綾子店長)
「北米産のウォールナットは天板の木目がきれいなのが特徴です。日本人はきれいなものを好まれるので、弊社では(北米の)五大湖周辺のものを使っております」
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コロナ禍でテレワークが進み、新しい家具を買い求める客が増えているといいます。そんな中、この店では7月1日からほぼ全ての商品が値上げされることになりました。
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(マスターウォール大阪 谷口綾子店長)
「今回心苦しいですが、価格につきましては7月1日から約2割ですね、価格を改定(値上げ)することになっています。(木材の)仕入れ価格は3割上がっています。やはり『ウッドショック』の影響が大きいですね」

現在、木材の価格が急激に高騰する「オイルショック」ならぬ『ウッドショック』の波が世界に押し寄せていて、日本の木材関連の業界も大きな影響を受けているのです。

木造住宅に使われるベイマツの価格が今年に入り高騰

滋賀県草津市で行われている木造住宅の建築工事の現場で、工務店「フィックスホーム」の社長に木材について話を聞きました。

(フィックスホーム 厨子浩二社長)
「だいたいほとんどアメリカのベイマツというアメリカのマツですね。日本のマツよりもアメリカのマツの方が強度が安定していますので。(Q木造住宅だと欧米産が主流?)一番たくさん使われていると思います」
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通常、国内の木造住宅では、強度が安定していて加工しやすいことから北米産のベイマツなどが使われています。

(フィックスホーム 厨子浩二社長)
「(Qベイマツの価格は?)価格は1.5倍から高いものだと2倍近くになっています」
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農林水産省によりますと、北米産ベイマツの製材価格は去年5月には1立方メートルあたり6万4600円でしたが、今年に入ってから急激に高騰し始め、5月時点では8万3100円にまで値上がりしています。
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フィックスホームでも欧米産の木材を多く使用しているため、7月から建物価格を値上げすることにしましたが…。

(フィックスホーム 厨子浩二社長)
「今までの4月~6月までのご契約に関してはいまさら金額を上げるわけにはいきませんので私たち住宅会社が負担するという形。(Q負担は大きい?)1軒あたり100万円以上、200万円近くの負担になっています」
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国内の住宅業界にも大きな影響を与えるウッドショック。きっかけは新型コロナウイルスの感染拡大にありました。アメリカでは、新型コロナウイルスの感染拡大でテレワークが普及した上、巨額の経済対策と低い住宅ローン金利を追い風に一戸建てなど住宅の需要が急拡大し、木材価格の高騰につながったのです。
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フィックスホームでは、世界的な需要の増加で必要な木材を手に入れるのに時間がかかり、新たな工事については着工が3か月ほど遅れてしまう可能性が出てきたといいます。客との契約の際にも事前に合意書を交わします。

(住宅を注文した客)
「延び延びにはなっていくんやろうなと思っています。さらに延びる可能性も出てくるんじゃないかなと。1日でも早く新しい家に住んでみたいなという思いがないことはないですから。そのへんはもう祈るしかない」

「国産材」の需要高まるもすぐに増産は困難 ショックはいつまで?

ウッドショックはいつまで続くのか。大阪市港区にある西日本最大級の木材市場「大阪木材相互市場」を訪ねました。
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(大阪木材相互市場 伊藤正雄社長)
「木材があふれるぐらいにあったわけですよ。今は4分の1しかない。もう“すきすき”」

欧米産の木材不足に伴って、これまで主流ではなかった国産材の需要も高まっていますが、日本の林業は深刻な人手不足ですぐに増産することは難しいといいます。

(大阪木材相互市場 伊藤正雄社長)
「ウッドショックが来たからといって、地方の製材所・山の関係・組合関係が伐採量を増やすとか製造ラインを増やすとかそういうことはまだそんな動きはないわけです。急に増産できるわけがないわけです」
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そして伊藤社長は「ウッドショックは少なくとも今年いっぱいは続く」と予想します。

(大阪木材相互市場 伊藤正雄社長)
「木材の年末までの値段をもういま決めているわけです。その値段が高い値段で決まっているということは、今年いっぱいは値崩れはしない。(Q供給量も変わらず?)いままで通りに戻るにはまだまだ時間はかかるかなと思っています」

コロナ禍で起きたウッドショック。波紋は広がり続けています。