人生100年時代。老後をどう生きるかは人それぞれですが、生涯現役として90歳を超えてもなお働き続ける女性を取材しました。

「あまり規則正しい生活はしていないですが…」

今年3月、大阪の豊中市役所には、拍手に迎えられて少し照れながら歩く女性がいました。『世界最高齢の総務部員』としてギネスブックに認定された玉置泰子さん、91歳です。この日、自身が暮らす豊中市から「市民に元気を与えた」などとして表彰されました。
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(玉置泰子さん)
「あまり規則正しい生活はしていないですが、朝5時半に起床したら約30分くらいはヨガのストレッチをしています。精神的には般若心経を唱えるんです。きょう一日、朝目覚めましたことをありがとうございますと」 

専門商社で朝から夕方まで勤務 表計算ソフトの使い方も習得

玉置さんの勤務先は大阪市西区にあるサンコーインダストリーです。従業員数は430人。100万種類以上のネジを取り扱う専門商社です。玉置さんは総務部員の1人として、平日午前9時から午後5時半までフルタイムで勤務しています。
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社内の報告書をまとめたり取引先への手紙を書いたりするのが主な仕事です。キーボードの入力作業は決して速いとは言えませんが、間違えないよう丁寧に1文字1文字打ち込んでいきます。

(玉置泰子さん)
「やっているうちに覚えてきた。わからないことは困ったらエスケープでみなさんに助けてもらって、『助けて』と言ってわからないことは聞いています」
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玉置さんよりもはるかに若い人たちからパソコンの扱い方を教えてもらうなど、努力を積み重ねた結果、今では表計算ソフトも使いこなせるようになりました。

(玉置泰子さん)
「(Q難しくないですか?)エクセル(表計算ソフト)にはいろんな機能がありますでしょ。表作ったり数字をはめ込んだり文字をはめ込んだりする機能がありますから、そんなん使いもってやれば意外と誰でもできる簡単な仕事だと思いますよ」
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いくつになっても柔軟に新しいことにチャレンジし続ける玉置さんの姿について、後輩たちに話を聞きました。

(総務部の同僚)
「そんなに高齢になってもいろんなことに挑戦している姿を見たら、私ももっと頑張らないといけないなと勇気づけられますね。(Q何歳まで働きたいですか?)まだ7年働いて今27歳ですが、90歳まではちょっと無理かなという感じはします」
(総務部の別の同僚)
「『90歳目指します』の方がよかったんじゃない?」
(総務部の同僚)
「90歳目指せるかな。私は20歳から会社に入ったから、90歳まで働こうと思ったら70年。70年ですよ」 
(総務部の別の同僚)
「7年終わったからあと63年やん」

入社65年目 社内からの信頼も厚い“参謀”

15歳で父を亡くして、3人の兄弟を養うために仕事を始めた玉置さん。1955年、25歳の時に知り合いの紹介で今の会社の総務部で働き始めました。それ以来、玉置さんは総務部一筋の会社員人生を歩んできました。55歳でいったん定年を迎えましたが、担当する取引先が多く社内の信頼も厚かったことから、嘱託社員として働き続け、入社から65年目を迎えました。
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(玉置泰子さん)
「会社はパートナーです。会社があるからこそ働ける。一緒に仕事をする人たちがとても素敵ですし、楽しいですし、この人たちといつも一緒にいるのが一番幸せという感じなので」
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玉置さんよりこの会社の歴史を知る人は社内にはいません。79歳の奥山泰弘会長でさえ、12歳も年下です。奥山会長とも50年以上の付き合いになる玉置さん。阿吽の呼吸で次々と仕事を処理していきます。

(奥山泰弘会長)
「右腕というか、参謀という感じかな。私の経営についての考え方も私以上によく知ってるという感じやからな。だからちょっと言うただけでうまく文章を作ってくれる。そういう仕事やから、ほかの人ではちょっとできないんやな」

「必要とされ誰かの役に立てるのが、私が会社に存在している意義」

今年4月、玉置さんは34人の新入社員への研修を担当しました。40年ほど前から研修を担当しているという玉置さんはこの日、総務部を代表して“掃除の心得”について話しました。

(研修で話す玉置泰子さん)
「まず人様に喜んでいただけるお掃除。これを通じて、人づくり、しつけを会社では重んじています。マナーを大切にしてほしい。規則は当然守るべきもの。マナーは自分の心から自己啓発でやるものです」
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会社の、そして人生の大先輩の言葉に、新入社員たちは真剣に耳を傾けます。

(新入社員)
「今まで人生経験とかもされてきたので響きました。自分も掃除をすることがあるんですが、内面からきれいにしていきたいと感じました」
「長く働けるように会社に必要とされるように頑張っていければなと。玉置さんみたいに周りの方々から尊敬されるような人間になりたいなと思っています」
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最後に、玉置さんに『働く意義』について聞くと、簡単なこととばかりにこう答えてくれました。 

(玉置泰子さん)
「仕事というのは基本的には誰かの役に立つことでなければならないのですね。私は長いことやっているうちにそういう境地に到達していますので。私は会社にいるということは、必要とされると共に誰かの役に立てるというのが、私が会社に存在している意義だと思います」