新型コロナウイルスの影響で会社や店を解雇されるなどして収入が減り、“家賃”が支払えなくなる人たちが今急増しています。こうした人たちに国と地方自治体が家賃を支援する制度が『住居確保給付金』です。支給上限額は各自治体により異なり、大阪市の場合は単身世帯で最大4万円の給付を受けられます。コロナ禍で雇用情勢が悪化する中、この給付金に頼らざるを得ない人たちの実情を取材しました。

『住居確保給付金』の相談相次ぐ

大阪府豊中市のくらし支援課。5月31日に取材をすると、午前9時の受付開始とともに電話対応に追われていました。そのほとんどが『住居確保給付金』の相談です。これは失業した人や収入が減った人に、国と自治体が原則3か月間の家賃を補助することで、自立のための就職活動を支援する制度です。

(豊中市くらし支援課 相談員)
「今月の家賃が支払えない。あるいは、今月は何とか支払ったけれどもこの先の見込みがない、とおっしゃる方が電話をかけてこられますね。電話の声も、不安でどうしたらいいかわからない、という声が多いですね」

新型コロナウイルスの影響により親子で仕事を失う

この日も新型コロナウイルスによって大幅に収入が減ったという48歳の女性が相談にやってきました。派遣社員として働いてきましたが、新型コロナウイルスの影響で会社の業績が悪化。一方的に今年3月末での契約終了を言い渡されました。

 (女性)「私は離職で…3月末で契約終了になりました」
(相談員)「経済的に困窮して、家賃払うのがしんどいということですよね」
 (女性)「息子もコロナの影響で(仕事を)辞めざるを得なくなっちゃって、しばらく家で求職活動をしていて」

女性は現在、23歳の息子と2人暮らし。息子は飲食店でアルバイトをしていましたが、売り上げ低迷による人員削減によって辞めさせられました。2人で仕事を探しながら、月6万円の家賃を払っていかなければなりません。
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(女性)「会社自体が業務の縮小で、社長も『コロナの影響で業績悪化ですみません』と言っていたので、そろそろやばいかなと思っていたら、(会社から)『今年3月末で終わってもらえますか』と言われて、契約終了になりました。大変ですよね。次の仕事見つけなきゃというところですね」

女性は必要な書類を用意して後日申請することになりました。

大阪では『住居確保給付金』の受給件数が約57倍に

“収入が減って家賃が支払えない”、こうした相談はこの1年で急増しました。『住居確保給付金』は、これまでは離職した人が対象でしたが、2020年4月から要件が緩和され、コロナなどによって収入が減少した人も対象となりました。

MBSが大阪府の各自治体などに取材した結果、2020年4月~2021年3月までの大阪府内の新規受給件数は1万2641件となっていて、コロナ前と比べて約57倍に上っていたことが新たに判明しました。
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(豊中市くらし支援課 濱政宏司課長)
「緊急事態宣言の休業要請で仕事が止まってしまって給料がない。貯蓄がないので給料が止まって家賃が払えない。今年も緊急事態宣言が出ていますし、延長されていますので、(申請者が)増えるんじゃないかなと思っています」

持ち家の人は“対象外”

休業要請の影響を受けていても、“給付金の対象外”になる人もいます。重利猛さん(51)、兵庫県宝塚市内で大手居酒屋チェーンの店長として働いていますが、緊急事態宣言によって店は休業を余儀なくされました。重利さんは住宅ローンを毎月10万円返済する必要がありますが、持ち家の人は対象外になるため、せっかく相談に来たにもかかわらず、給付を受けることはできませんでした。

(重利猛さん)
「休業になっているので、休業補償が出ているんですけれども、どうしても収入が半分近くになってまして。もう生活費が厳しいような形になっています。毎月必ず支払わないといけないお金が発生してくるので」

重利さんは飲食店を続けながら副業を視野に入れることにしました。

「すごく助かりました」給付金のおかげで安定した生活に

一方、給付金を受けながら仕事を見つけ、安定した生活を取り戻した人もいます。東城春美さん(56)。現在、知的障がいや精神障がいのある利用者が暮らすグループホームで働いています。
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東城さんは、利用者の食事の準備や掃除、入浴介助などの介護補助の仕事をしています。

(東城春美さん)
「あの頃って本当に先が見えない不安が。仕事が見つかるのかどうかもわからないですし、そんな不安の中で過ごしていたので、何をしていても集中できないというか、家に居てても」

これまで飲食関係の職を転々としてきた東城さん。2020年3月まではスーパーで正社員として働いていましたが、給料は低く、老後の安定のため転職を決意。2020年4月、大阪市内にあるホテルで調理補助として働くことが決まりました。しかし採用の延期を告げられたのです。

(東城春美さん)
「(ホテルで働くことが)決まってたんですけれども、コロナの影響で保留という感じになってしまいまして。もう“どうしよう”しかなかったですよね」

そこで、東城さんは『住居確保給付金』を申請。2020年5月から3か月間、月に4万2000円の給付金を受け取りました。その間に豊中市の就労支援を受けて現在の仕事に決まりました。

(東城春美さん)
「すごく助かりました。(住居確保給付金が)なければ厳しかったですよね。知らなくて路上生活送られてる方なんかもいらっしゃるじゃないですか。そこまではなってなかったかも知れないですけれども、本当に助けていただきました」

安定した生活に戻ることができた東城さん。利用者の生活を支える今の仕事にやりがいを感じています。

(6月1日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『コダワリ』より)