新型コロナウイルスの影響で歓迎会などが自粛される中、新入生の学生同士がSNSに『#春から○○大学』と投稿することでつながりを求めています。しかし、取材をしてみると、この投稿をきっかけに届く“不審なメッセージ”の実態が見えてきました。

入学式で初めて会ったがそれ以前から友達 きっかけはSNS

4月1日、全国各地の大学で入学式が行われ、学生たちが新しいスタートを切りました。去年は入学式が中止となった関西学院大学では、式典を簡略化するなどの感染症対策をした上で入学式が行われました。

(新入生)
「教師になれるよう、楽しみつつも勉強に励んでいきたいと思います」
「すごくうれしい気持ちと不安な気持ちもあります。友達作りも頑張りたいです」
3.jpg
初対面の同級生らを前に緊張する学生がいる一方、4月1日に初めて会ったが入学前から友達だという学生2人に話を聞きました。

【新入生2人組】
「ツイッターのDM(ダイレクトメッセージ)で話しかけて、返事もらって一緒に行こうよと」
―――出身は?
「宮城県です」
「栃木県です」
「『#春から関学』と付けている人が多くて、話しかけてみました」

「#春から関学」のほか、「#春から同志社」「#春から阪大」「#春から近大」など、いまツイッター上には「#春から〇〇大学」とハッシュタグが付いた投稿があふれています。

「#春から関学」でサークルからもメッセージ 一方で“起業家”からもメッセージが…

関西学院大学の新入生・大西滋瑛さん(18)は、入学前に友達を作ろうと今年2月にこんなツイートをしました。

【大西さんのツイート】
「春から関学。友達いないので仲良くしてください!DMお願いします」

そして「#春から関学」をタグ付けして投稿しました。

(関西学院大学 新入生・大西滋瑛さん)
「いいねが30件ぐらい。同じ学科の子が3人ぐらいで、その友達とはインスタグラムを交換した。3個ぐらいのサークルから声がかかった」
10.jpg
大西さんのもとには軽音サークルからダイレクトメッセージが届きました。

【ダイレクトメッセージでのやりとり】
(サークル)「音楽に興味ある!!って感じですか?」
(大西さん)「そうです」
(サークル)「新歓LINEグループあるんですけど入りませんか?」
(大西さん)「お願いします」
11.jpg
サークルからの勧誘や同級生との相互フォローなど、実際に会わなくてもSNS上でつながっていく交友関係。投稿したきっかけは何だったのでしょうか。

(大西滋瑛さん)
「(コロナ以前は)3月の後半ぐらいから体験や新入生歓迎パーティーみたいなものが各サークルで行われていたみたいです。コロナがなかったらあったはずの新歓パーティーが今年は禁止されていて行われていないので、その役割も込みで先につながっていたいというのはあります」

新型コロナウイルスの影響でイベントが中止になったほかオンライン授業も一部では続き、人と会う機会が減る中、SNSでのやりとりが加速しているといいます。
12.jpg
その一方で、大西さんには“不可解なメッセージ”も送られてきたようです。

(大西滋瑛さん)
「起業家の方から。元関学生で起業して、『よろしくお願いします』だけ言われて。僕はブロックしました」

「お金稼ぎたくないですか」怪しいメッセージが立て続けに届いた人も

関西学院大学の新入生・相引良太さん(18)は「#春から関学」とSNSに投稿したところ、1か月でフォロワーが100人も増えました。しかし…。

(関西学院大学 新入生・相引良太さん)
「『大学生になってお金を手に入れられる人間になるにはこういうことをしたらいいですよ』みたいなことが書いてあって、サイトに誘導することが書いてありました」
14.jpg
相引さんには「これから新生活を始められる方を対象に金券配りの企画も検討中」と書かれたアカウントからのメッセージが。「大学生になってお金稼ぎたくないですか」「スマホ1台で稼げる」などと怪しいダイレクトメッセージが立て続けに届いたといいます。
16.jpg
(相引良太さん)
「正直言って、スマホ1台で簡単に稼げるならおいしい話ではあるなと思った反面、詐欺という話が最近話題になっているので、そのことが頭をかすめると怖いなというのはありました」

不審に感じた相引さんもアカウントをブロックしました。

「副業」「パパ活」… 新入生を誘う“甘い言葉”に注意を

取材班は実態を調べるために、「#春から〇〇大学」と投稿していた新入生約550人に、記者だと伝えた上でトラブルなどはなかったか取材を申し込んでみました。すると不審なメッセージについて新入生から次々と返信がありました。

【新入生に届いた不審なメッセージの例】
「副業で安定して月20万円以上稼げると言ったら興味ありませんか?」
「アルバイトしませんか?日給30000円」
d5.jpg
さらに、こんな依頼もありました。

【新入生に届いた不審なメッセージの例】
「パパ活できますか?」
「大阪住みです。サラリーマンですー。ダメですか?お金払います」

こうした事態を受けて対応に乗り出した大学も出てきています。上智大学では勧誘活動や性的な画像が送られる事案が報告されているとして、ホームページ上で学生に注意を呼び掛けています。
d6.jpg
SNSに詳しい専門家は「#春から〇〇大学」と投稿することで詐欺などに狙われやすくなると指摘しています。

(ITジャーナリスト 三上洋さん)
「『#春から〇〇大学』と書いてあることで新入生ということがわかる。新大学生はいままで社会経験がないわけですから、違法なビジネスや『簡単に儲けられますよ』という言葉、もしくはカルト宗教のような甘い言葉にだまされやすいわけです。SNSなどのネット上だけで信じてしまわないようにしましょう。SNSはあくまで友達やサークルを知るきっかけです。現実世界でちゃんと確認してからやっていただきたいと思います」