朝ごはんを飲食店で食べることはありますか?外食業ではコロナ禍以降、「朝食」の市場規模が急激に拡大。リモートワークなどで朝の時間に余裕ができたことや、深夜の集客が難しくなり営業時間を前倒しする店が増えたことなどが要因とみられています。朝ならではのお得なメニューが続々登場しているモーニングの今を取材しました。

早さ・安さ・バリエーションの多さが売り!40年前から朝定食を販売「松屋」

 需要が拡大しているモーニング市場。大手牛丼チェーンの松屋は40年前から朝定食を販売していて、その売りは安さとバリエーションの豊富さです。山中真アナウンサーが店を訪れました。

 (山中アナ)「けっこう種類多いですよ。『たまごかけごはん ミニ牛皿』の定食にします。ライスは並盛・大盛・特盛すべて値段一緒、すごい。生卵か半熟卵かも選べます」

 注文したのは牛肉と生卵、味噌汁、大盛のライスで税込み350円のセット。味はもちろん、忙しい朝に早さと安さで人気を集めています。
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 (客)「できたてが食べられるのがいいと思います。値段的にも手軽に通える」
 (客)「ご飯がおかわりできる(※一部店舗限定)。最初特盛で頼んで、おかわりも特盛で。家で作ってもこの値段で同じようなものできないです」

 松屋は朝食メニューをこれまで6種類用意していましたが、今年1月からさらに2種類のメニューを追加。モーニングに本気で力を入れています。

 (松屋 エリアマネージャー・妹尾壮悟さん)「(Q朝食需要は増えている?)増えていますね。(Q朝の客が求めていることは?)一番ははやさだと思いますね。本当にはやい人は5分以内で出ていきます。(出勤前の)少しの時間で朝食をすませたいということだと思います」

ファミリーレストランも朝食メニューを展開

 他にも、ファミリーレストランのココスでは一部店舗で30品以上を揃える朝食バイキング(税込み979円~)を導入したり、ハンバーグレストランのびっくりドンキーではハンバーグソースで食べる卵かけご飯(税込み330円)を販売したりと、各社の強みを生かした朝食メニューを展開。

 専門家によりますと、これまで利益率が低く敬遠されがちだったモーニング市場ですが、コロナ禍以降の利用客増加にともなって、参入する飲食店が増えているといいます。

 (「月刊食堂」 編集長・通山茂之さん)「(Q朝食を外で食べる動きが拡大している?)すごく可能性が出てきたという感じ。朝食市場を取りたいというのは外食企業の”悲願”でした。朝食市場は(今後さらに)大きくなるんじゃないかと思います」

団塊世代や女性たちの“家事代行”の役割も

 では、モーニング市場はなぜ今拡大しているのか。専門家はコロナ禍以外に3つの要因があるといいます。まずは、「高齢化」そして「女性の社会進出」です。

 大阪市東成区の商店街にある喫茶店「cafe&pasta gruppo」には、朝8時の開店から客が次々とやってきます。焼きたてのトーストとゆで卵、サラダ、ヨーグルト、コーヒーまたは紅茶がついたボリュームたっぷりのセットは税込み450円。
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 (客※70代)「高齢だと1人で作るっていうのが大変やし、(食材を)買ったら残るでしょ?ここはけっこう量も多い。食べて帰って」
 (客※50代)「息子がいるんですけど、朝ごはんを用意できないときにここに来て食べて帰る」

 片づけいらずの手軽でお得なモーニングは、団塊世代や忙しい女性たちの家事を代行する役割も果たしていました。

ホテルになくてもOK!喫茶店の朝食がインバウンドに人気

 さらに、モーニング市場を盛り上げるもう1つの立役者が「インバウンド」。大阪・難波にあるホットケーキセットが人気の喫茶店「喫茶 松竹」で、モーニングの時間帯に増えているのが外国人旅行客です。

 (喫茶 松竹 店長・中越龍馬さん)「(Q海外の人が増えているのはいつから?)ここ1~2年くらい。オープン当初と比べて倍以上にはなっています」

 周辺にはホテルが多く、店内には外国人旅行客の姿が。なぜ、ホテルではなく喫茶店のモーニングを選んだのでしょうか?

 (アメリカから)「ホテルでの朝食より地元のいろんなものが食べたくてカフェを選んだの!」

 さらに、韓国から旅行に来た親子は次のように話します。
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 (韓国から)「ホテルに朝食付きプランがなかったです。日本ではこうやって喫茶店のモーニングが豊富なので、ホテルの朝食がなくても大丈夫だと思います」

 さまざまな食事を楽しみたいインバウンド客は、宿泊と食事の場所を分ける「泊食分離」を選ぶ傾向にあり、この喫茶店のモーニングも人気を集めています。一方、モーニングの営業は店側にもメリットがあるようです。
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 (店長・中越龍馬さん)「夜営業のお店と比べれば、競争相手が少ない。(Qライバルは夜に比べて少ない?)そうですね」

100円のセット!?家具販売大手IKEAもモーニング市場に

 ランチやディナーと比べればまだまだ拡大の余地があるモーニング市場。ここに目を付けたのが、意外や意外、家具販売大手のIKEAです。

 店内のレストランには、午前10時のオープン直後から多くの人が。みなさんのお目当ては、モーニングのセット。なんと、シナモンロールとハッシュドポテトのセットが税込み100円で、さらに、無料の会員登録をすれば午前11時までドリンクバーはタダです。また、シナモンロールにゆで卵、サイドメニューをつけたセットも税込み300円とこちらも手頃です(※モーニングの提供日と時間は店舗によって異なります)。

 (客)「すごいですよね、今どきでは考えられない」
 (客)「すごく安くて助かっています」

 しかし、100円という破格の値段。赤字にはならないのでしょうか?
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 (IKEA フードコマーシャルマネジャー・岩垣剛史さん)「朝食でたくさんお越しいただいて、その他のところで小さな雑貨を買っていただいたりとか、売り上げ的には上がっております」

 去年11月に100円の朝食メニューを始めて以降、利用者は約2倍に増加。一見、採算度外視の価格設定に見えて結果的には抜群の宣伝効果を発揮し、モーニングを目的に来た客が家具や雑貨などを購入することで売り上げも伸びているということです。

 幅広い世代に人気を集めるモーニング市場。今後、ますます拡大していくのでしょうか?