大阪・関西万博がついに開幕しました。期間中、海外からは約350万人が来場すると想定されています。万博開催に伴い入国者の増加が予想されるのが関西空港。密輸を防ぐために目を光らせている税関職員に密着しました。

1日8万人以上が利用する関西空港 密輸を食い止める税関職員

 4月10日の関西空港。外国人旅行者が続々とやってきます。

 (アメリカから)「しまなみ海道をサイクリングする予定です。万博にも行きたいですね」
 (オーストラリアから)「万博に行くんじゃないかな。新発見や新しい技術などに触れてインスピレーションを受けられたらなと」

 1日8万人以上が利用し、万博でさらなる増加が予想されるなか、目を光らせる人たちがいます。偽ブランド品や不正薬物などの密輸を食い止める大阪税関の職員です。世界的なイベント、万博の開催のため、テロ行為などにつながる危険物の持ち込みにも一層、警戒が必要です。

「コピー商品ないって言ったよね?本物?偽物?」

 今年1月、税関職員が話を聞いていたのは、1人で大量の荷物を持ち込んだベトナム人の男性。

 (職員)「これちょっと開けさせてもらいますね」

 中から出てきたのは、人気キャラクターがプリントされた服です。

 (職員)「これ自分で買ったやつ?」

 さらに、箱にアメリカの人気メーカーのロゴが付いたイヤホンも。

 (職員)「これ本物?」
 (男性)「…」
 (職員)「コピー商品ないって言ったよね?本物?偽物?」

 税関はメーカー側から本物を見分けるポイントを提供してもらっています。鑑定した結果、すべて『偽物』と判明。廃棄されることになります。
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 全国の税関で差し止められる偽ブランド品などのうち、約3割が関空を含む大阪税関で摘発されているといいます。

 今年3月、中国から来たという男性が、職員からカバンを開けるよう促されていました。中身は食品のようです。動物検疫のカウンターで持ち込めるものかどうか確認します。その結果、男性が持っていたのは、加工された鶏肉やソーセージなどの肉製品でした。日本への持ち込みは禁止されています。
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 (検疫職員)「こちら(鶏製品)が鳥インフルエンザ、こちら(ソーセージ)はアフリカ豚熱、これらを家畜が食べるとかかるおそれがあるので、お客さまは残念ですが持ち込めない」

 病気のまん延を防ぐため、すべて焼却処分されます。

去年、大阪税関での不正薬物の摘発件数はこの5年で最多

 去年1年間、全国の税関で差し止められた金・不正薬物・偽ブランド品などの摘発件数は、約3万5000件にのぼります。過去には金をカツラに加工し、頭にかぶって持ち込もうとした事例もありました。

 なかでも増加傾向にあるのが不正薬物です。去年の大阪税関での摘発件数は194件(前年の約2倍)で、この5年で最も多くなりました。
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 (関西空港税関支署 石川陽一支署長)「リュックサックの背あて部分に不正薬物が隠匿されていた」

 また、掛け時計に末端価格6億9000万円相当の覚醒剤が隠されていたケースも。流入は必ず阻止しなければいけません。

 そのために欠かせないのが、荷物の薬物検査です。不正薬物を隠し持っていれば所持品に付着していることが多いわずかな成分を、布でふき取って分析します。これで不正薬物や爆発物が含まれているかどうかがわかるといいます。

 ある荷物を検査すると、麻薬として規制されている「コデイン」の反応が出ました。風邪薬などにもわずかに含まれる成分で、詳しい検査で問題なしと判断されました。

ベトナムからの「たばこの密輸」が増加

 しかし、警戒が必要なのは違法な薬物だけではありません。大量の荷物を持ち、ベトナムから来た男性。税関職員が荷物を確認します。職員の手には黄色い箱が。

 (職員)「書かないとだめですよ。税金かかりますよ」

 これはベトナムのたばこ。たばこは日本への入国時に申告が必要となっていて、200本を超えると税金がかかります。

 (職員)「もうないですよね?」
 (職員)「これなんで細かいの?あとは?」
 (男性)「吸います」
 (職員)「あとほかは?あとで見つかったら大変ですよ。先に出してくださいよ」
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 すると、男性はポケットからたばこを出しました。

 (職員)「なんでポケットにあるの?本当にあと2だけ?」
 (男性)「2だけです」
 (職員)「たばこはどこにもないですか?…なんで下に入れているの?なんで隠してるの?」
 (男性)「わからない」
 (職員)「わからないじゃない」

 結局、かばんの底などに計50箱(1000本)のたばこを隠し持っていました。

 そして、ベトナム人女性のスーツケースにも、見覚えのある黄色い箱が…。かなりの量が確認されたため別室で調べます。
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 (職員)「誰が入れたんですか?」
 (通訳)「知らない人が入れた」
 (職員)「じゃあ、あなたは知らない人が入れたのを持ってきたのですか?」
 (通訳)「お金もらった。知らない人から入れてもらった」
 (職員)「中身はたばことわかっていたの?」
 (通訳)「中身はたばこと思っていなかった」

 友人に渡すためだったというたばこは850箱、1万7000本。女性は約25万円の税金を払えないということで、放棄することになりました。

 ここ数年、ベトナムからのたばこの密輸が増えているということで、SNSなどで販売するために持ち込むケースも多いとみられています。

 (関西空港税関支署 石川陽一署長)「密輸リスクが高まることが懸念されていますので、税関としては引き続き厳格な取締まりを行いたいと考えています」

 万博でやってくる人たちに安全・安心な日本を満喫してもらうためにも、税関の役割は重大です。
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