近年、盛り上がりを見せる『文具ブーム』!いま日本の文具は海外からの注目がうなぎのぼりで、世界に“売れる”ヒット商品に。大阪で約4万人が訪れた大人気イベント『文具女子博』に見る、今のトレンドとは?山中真アナウンサーが取材しました。
“文具ブームのけん引役”『文具女子博』 来場者は約3.8万人!
3月8日、大阪南港ATCホールで開催された『文具女子博』(3月6日~9日開催)。入場料は平日950円、土日1050円(どちらも税込み)の有料イベントですが、会場には大勢の人が詰めかけていました。
2017年から始まった『文具女子博』は各文具メーカー自慢の商品に直接触れ、その場で購入できる“文具ブームのけん引役”ともいえるイベントです。
(文具女子博・担当者 大山真央さん)「お客さまも毎年増えているので、結構文具熱が高まっているなっていうのは感じますね」
コロナ禍後、大阪開催では毎年、入場者数を更新。今年は4日間で約3万8000人が訪れました。入場料だけで3800万円超え(1000円で計算)!来場者の購買意欲もすさまじく…
(来場者)「予算は1万円~2万円。このために頑張ってためて…みたいな感じですね」
(来場者)「一応3万円下ろしてきていて、足らんかったらクレカ払いとかでいけるかなって」
皆さん、爆買い状態。メーカーのこだわりが詰まった文具は、その数、5万点以上にのぼります。どんな商品が並んでいるのでしょうか?
山中アナが見つけたのは、画面クリーナーとして使える“黒板ふき”のキーホルダー『なつかしの黒板ふき 画面クリーナーSS』(税込み550円)。
ほかにも、見た目が可愛いラベルライター『ダイモ キューティコン ピンク』(テープセット(先行発売):税込み4818円 単品:税込み3608円)は…
(担当者)「これはテープに刻印できる商品なんです。電池も電気もいりませんので、手軽に使えます。油や水に強いので、(キッチンなど)かなりいろんな場所で使える」
どうやら最近の文具には、機能性はもちろん、可愛いデザインも重要なようです。
老舗印刷会社が開発した“みかんの皮をむく”メッセージカード!?
今回、初出店の企業の文具も。『フルーツメッセージ みかん』(税込み350円)を紹介してくれました。
(大阪シーリング印刷 森山勝さん)「メッセージカードなんですけど、ここにメッセージを書いていただいて」
カードをペタンと閉じると…
(森山勝さん)「へたがありますので、みかんをむくようにすれば、メッセージが見られます」
(山中アナ)「むいた感じもみかんですね」
(森山勝さん)「“おもしろかわいい”みたいなところですよね」
実はこの企業、食品のラベルシールなどの製造で国内シェアNo.1という老舗印刷会社『大阪シーリング印刷』。誰もが目にしたことのあるおにぎりやサラダなどのシールを作っているんです。
そんな企業がなぜ、文具市場へ進出したのか。作業着姿に変身した森山さんに伺うと…
(森山勝さん)「ふだんメインで作っている仕事に関しては、私たちの名前は一切出なくて。(文具を通じて)『大阪シーリング印刷』という名前と技術を、ちょっとでも皆さんに知ってもらえればいいかなと思っています」
文具市場への参入は創業98年の技術とノウハウを存分に活かすことができ、新たな顧客獲得にもつながると考えています。
デジタル化はアナログな文房具に「むしろ追い風」?
細かいところにもこだわる日本企業の仕事は、文具業界に適しているといいます。
(文具ソムリエール 菅未里さん)「世界的に見ても、日本の文房具はすごく種類が多いですし、とても細かく優秀なものがものすごく多いです。(海外へ向けた)クールジャパンと呼ばれるものの一つには十分になり得る可能性を持っています」
しかし、デジタル化が進む現代でアナログな文具自体需要が減っていくのでは?…と思いきや、そんな状況を「むしろ追い風」と言い切る老舗の文具メーカーも。『サンスター文具』を訪ねました。
ずらりと並べられた歴代の商品の中には懐かしいものも!例えば、1986年に発売された『アクション7』(当時約2000円 ※現在は製造中止)。
(山中アナ)「これ懐かしいですよ!筆箱ですよね。ボタンを押すと、鉛筆削りが出てきたり…レンズは虫眼鏡ですよね。これだけの動きにどれだけ感激したか!」
1965年発売の『アーム筆入』(税込み880円)は、「象がのっても壊れない」というCMで大ブームに!今年で60周年というロングセラー文具です。
他にも多くのヒット作を生み出してきたサンスター文具。「デジタル化が追い風に」とはどういうことなのでしょうか?
(サンスター文具 小須田はるかさん)「(文具は)単価が安い商品が多いので、宣伝や広告を出しにくいものなんですけど、SNSの活用で口コミでいろいろ広がって、ヒット商品につながったものもたくさんある」
例えば、本の見たいページを開いたまま跡をつけずにキープできる『ウカンムリクリップ』(税込み660円)。SNSの『X』でバズったことから、発売から2年で累計出荷数120万個を超える大ヒット商品に!
(小須田はるかさん)「(文具市場は)可能性はまだまだあります。海外の方からは非常に人気のある商品なので、海外輸出もそうですし、インバウンド向けの商品もたくさんこれから展開していこうと思っています」
“もったいない”から生まれたアイデア商品 海外にも販路を拡大中
デジタル化が進むいま、文具業界に新規参入した企業はほかにも。
(研恒社 神崎太一郎社長)「こちらを横にスライドすると、中の用紙が取れる状態になるので、穴を開けずにどんな紙でも入れて、ノートやファイルとして使うという商品」
『スライドノート』(A4サイズ:税込み2222円 A5サイズ:税込み1760円)
このスライドノートに一目ぼれした山中アナが『研恒社』を訪れました。
スーツ姿で印象がガラッと変わった神崎さん。印刷業を営みながら文具を作っている社長さんでした。スライドノート開発のきっかけは…?
(神崎太一郎社長)「子どもたちが学校のノートを全部使い切ってきれいに終わるってことはなかなかないんですね。もったいないので、妻と2人でカッターで切って、クリップで留めたり、メモ帳に使ったりしていたんです。気軽にその紙をもう一度ノートにすることができたら、手間が楽だねっていうのが開発のきっかけです」
ノートの紙が余ることは、印刷業を営む神崎さんにとって見過ごせなかったそうで、都内5社で協力して理想のノートを作り上げ、特許を取得。今やアメリカや中国など海外にも販路を拡大中!
(神崎太一郎社長)「ポイントはどんな紙でも、自分のノートにできるというところ。あとは大きさにかかわらず、セットすることができるところ。順番を変えたり、いらないページは外にして、もう一度“自分なりのノート”を作れるっていうのは、私は非常に便利だと思って使っています」
世界にも広がるこのノート。実は実家の一室で神崎さん夫婦、そして友人の手作業で組み立てているそうです。
(神崎太一郎社長)「さすがに私の母親も『いい加減出ていきなさい』って話になってきたので、夏ぐらいを目指して、ちゃんとした組み立て場所を借りて進めようと思っています」
「各メーカーが時代に合わせた文具を作ってる」
神崎さんは「例えデジタル化が進んでも文具ブームは終わらないだろう」と考えています。
(神崎太一郎社長)「各メーカーが時代に合わせた文具を作ってると思ってるんですね。なので、より商品が魅力的に変わっていって、(ユーザーも文具を)より愛しやすくなったり、使いやすくなってきたりっていうことはあるんじゃないですかね」
機能性と見た目にとことんこだわる日本の文具が、世界で“稼げる商品”になる未来は遠くないかもしれません。