幻想的な水と光の演出に船に乗る人たちも思わずカメラを構えます。3月20日に始まった「OSAKA リバーファンタジー」。大阪・関西万博の開催に合わせて、水の都・大阪を世界に発信するために企画された開催期間約1年のビッグプロジェクトです。

【ウォーターショー】170本の“噴水ノズル”を1本ずつ調整 国内最大級のショーへ

 会場は3か所。八軒家浜(天満橋駅そば)ではウォーターショー。東横堀川(高麗橋から本町橋)ではプロジェクションマッピング。中之島西側(阿波座駅そば)ではLEDビジョン。陸上からも楽しめますが、観光船に乗れば、これまでに経験のないないアングルから大阪の夜の景色が楽しめます。

 プロジェクトの仕掛け人は、演出や広報などを担当する台野真吾さん(43)。この日は、最も大事な噴水の動きを確認するため、天満橋の八軒家浜にやってきました。河川では国内最大級となるウォーターショーを行う予定です。
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 (台野真吾さん)「(噴水の)スイングと音のズレを感じることは?」
 (担当者)「基本はないですよ。ただ、音の反響で、例えば対岸から聞いていたらハウリングするとかは…」
 (台野真吾さん)「跳ね返るもんね」

 ショーの横幅は100mを超えます。使う噴水ノズルは170本以上。1本ずつプログラムで制御します。どこから見ても違和感がないように調整作業を重ねます。

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 台野さんはこれまで、神戸の「みなとHANABI」や万博記念公園での「万博夜空がアートになる日」など、数多くの演出を手がけてきました。しかし、今回の開催期間は1年近く。これだけ長いプロジェクトは初めてだといいます。

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 (台野真吾さん)「普段はショーの演出とかイベントごとは多くしてるんですけど、こういう河川とか、こういった規模は初めてで、もうドキドキです。天気も怖いですし」

【プロジェクションマッピング】「音が全く聞こえない」本番前に厳しい意見 

 本番まで1か月を切った2月28日。課題点を洗い出すためのテスト運航が行われました。目が肥えた旅行業者や客船を運航する事業者などに見てもらい、率直な意見を聞きます。

 船が出てすぐに見えるのはウォーターショーです。阪神高速の橋脚には、カラフルで幻想的なプロジェクションマッピングが見えています。

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 しかし、乗っている人たちの表情はあまり冴えません。終了後の意見交換では厳しい声が相次ぎます。

 (台野真吾さん)「『売れるな』みたいな感じですか?それとも…」
 (舟運業者)「ちょっと(プロジェクションマッピングの)音は全然聞こえなかったですね」
 (旅行業者)「多分、全く聞こえないくらいのレベルです」
 (台野真吾さん)「全く聞こえない…」

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 一方、ウォーターショーについては…

 (旅行業者)「(噴水の)水量は増えますか?」
 (台野真吾さん)「水量が増えることでいくと、一応音楽に合わせて設計をしているんですけど」
 (旅行業者)「グッと引き付けられるような、やっぱりインパクトのある内容は必要かなと」

 ウォーターショーもプロジェクションマッピングも、音の小ささや光の弱さなど演出の改善を指摘されました。

【仕掛け人の葛藤】都市部のイベントで課される“制限”…守りすぎると満足度減少

 (台野真吾さん)「こういう都心の中でやるっていうところに制限が多すぎて。音も『これくらいにしろ』とか。それを守りすぎると満足度が減る。どうしたらいいんですかね」

 もう時間がありません。なんとか最善の方法をさがします。

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 まずはウォーターショー。見る人を引き付けられるよう、改めて調整。光の当て方を変えたり、水の量を増やしたりすることで、より華やかに仕上げていきます。

 また、「全く聞こえないレベル」とまで言われたプロジェクションマッピングの音楽。元々は陸から流していましたが、近隣のマンションや店への配慮から大きな音は出せませんでした。そこで、船のスピーカーからも音楽を出すようにすると…

 (台野真吾さん)「船にも(スピーカーが)付いていて、これくらいの音が出るって言ってるから、大体の船はいけるやろうな」

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 明るさについても改善しました。プロジェクターをテスト運航から10台以上追加。さらに、本来横向きに置いて使うプロジェクターを縦向きに設置しました。こうすることで、縦に長い橋脚に対し、より強い光を当てられるようになります。光の強さが最大になるよう、1本1本微調整していきます。

 (台野真吾さん)「もうあとは全面に映ったところを見てもらうっていう。僕も見て、色味もはっきりしているなって思うので、楽しみですね」

「動く映画館の中にいるみたい」上々の滑り出しに安堵

 そして3月20日、初日を迎えました。

 (大阪府 吉村洋文知事)「大阪は水都大阪ですから、万博をきっかけに、ますます舟運を活性化させて、大阪を元気にしていきたいと思います」

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 プロジェクトの仕掛け人、台野さんは、関係者を乗せた第1便を見送ります。船はさっそくウォーターショーへ…課題が多かったプロジェクションマッピングは、一体化した映像と音楽が都心の川を不思議な空間に変えます。

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 (お客さん)
 「噴水の光のショーがすごかったです。近くで見られたので。川の中から、ああいう景色が見られるのがすごいなって思って」
 「ウォーターショーがめっちゃきれいで、向こうの建物に(プロジェクションマッピングで)ミャクミャクがたくさんあって、すごいなって思って」
 「動く映画館の中にいるみたいな感じがしました」

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 台野さん、胸をなでおろします。

 (台野真吾さん)「ほっとしたのもありますけど、きょうがスタートなので。きょうからもう明日、明後日と、毎日この1年中見ていただけるので、船にぜひ乗っていただければと思います」

 ショーなどの内容はシーズンごとに変わるということで、来年2月ごろまで大阪の夜が鮮やかに彩られます。