去年、大阪府には約1464万人の外国人観光客が訪れ(※大阪観光局より)、過去最多を記録。今年はさらに伸びる勢いです。日中のミナミは大いに賑わう一方、課題となっているのが「夜間の消費」の伸び悩み。大阪観光局の調査では、午後10時以降(午後10時~午前0時)に街で飲食などをする外国人観光客は日本人より大幅に少なく、「ことばの壁」などが要因とみられています。

 そんななか始まったのが、外国人観光客に向けたサービス「Osaka JOINER」。一体、どんなサービスなのでしょうか?

「辛口と甘口、どっちが好み?」ガイドが間に入ってお酒を注文

 ミナミの喧噪から少し離れた場所にある立ち飲み店「桝田商店」。アメリカからやってきた60代の夫婦が常連客に交じり日本酒を楽しんでいます。

 (ガイド)「辛口と甘口、どっちが好みですか?」
 (夫)「最初は甘口で、その次は辛口で」
 
 通訳を介して好みの味をマスターに伝え、おすすめの酒を選んでもらいます。

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 (ガイド)「これはどこの県(のお酒)ですか?」
 (マスター)「宮城県です」
 (ガイド)「宮城県を知ってますか?これは宮城県のお酒です」
 (夫)「とてもおいしいです」

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 (桝田商店 桝田愼一マスター)「(通訳がいると)やっぱり助かります。個人で来られたら、話が伝えたいことが伝わらないんです。『大吟醸を』とか『純米吟醸を』みたいな注文の仕方を外国人でもしはるんです。でもそれじゃ、お酒残しはるんで、(ガイドを介して)『甘口が好きか、辛口が好きか』とか『酸っぱさはどうか』とか聞いていったら残さなくなりました」

 夫婦が利用しているのは、地元の人しか知らない店などに通訳付きで案内するツアーサービス「Osaka Joiner」。1人から、当日でも予約でき、食べ歩きから土産物探しまで、アレンジは自在です。ツアーのモットーは、ローカルエクスペリエンス=「生活没入体験」。地元の人と交流し、“普通の大阪”を味わえるのが醍醐味です。

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 (夫)「想像以上でした」
 (妻)「(サービスを頼まなかったら)きっと、ただ歩き回るだけでした」
 (夫)「さまよっていたかも」
 (妻)「こんないい店には、めぐりあえませんでした」

「欧米の方は割と突発的なニーズが多い」

 サービスを手がけるのは、大阪メトロのグループ会社。沿線の活性化につなげたいと、去年3月に開始しました。利用者のほとんどが欧米やオーストラリアからの観光客で、これまで1500人以上を案内してきました。

 【ガイドと観光客が話す様子】
 (ガイド)「いろんな食べ物がありますが…」
 (観光客)「ラーメンはもう食べました。うどんはまだです」

 料金は、はしご酒ツアーの場合、2時間で1人6000円(※店での飲食費は別途必要)。ガイドは、英語が堪能な学生や日本に住む外国人などが務めます。

 (大阪メトロ アドエラ 事業創造本部長 吉田瑛仁さん)「欧米の方って『今からやりたい』とか『きょう何かやりたい』とか、割と突発的なニーズが多いと思っていて。欧米の方が『こういうのが楽しみだったんだよね』というものを、しっかり大阪の街で届けていく」

「昔ながらの大阪」を求めて京橋で“はしご酒”

 この日は、アメリカ・ロサンゼルスから来た女性2人組の観光客を、京橋で「はしご酒」に案内します。2人は帰国前の余った時間を使って、“昔ながらの大阪”の雰囲気を感じたかったのだといいます。

 (観光客)「飛行機に乗る前に、どうしても大阪に来てみたかったんです。ここは(なんばより)“大阪らしい”ところなんでしょう?」

 最初は、地元で人気の居酒屋さんに来ました。

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 (ガイド)「サイコロで偶数が出たら半額。奇数が出たらメガサイズを注文する必要があります」

 サイコロの目でドリンクのサイズや値段が変わるゲームに挑戦します。結果は…

 (ガイド)「偶数なので半額です」

 偶数が出たのでドリンク代が半額に。初めてだという梅酒を選びます。

 (観光客)「例えようのない味ですね」

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 ガイドによって「ことばの壁」を取り払えれば、これまでインバウンドの恩恵が少なかったエリアにも外国人観光客を呼び込むチャンスになります。

 (スタンドBゆきちゃん 神野幸広さん)「京橋は外国人が少ないので、大阪城とか近いから、そこから流れてきてくれたら。おいおい京橋にも(外国人に)もっと来てほしいなって」

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 ツアーは2時間。ほどほどで切り上げて2軒目に向かいます。ほろ酔いでたどり着いた2軒目は、野球ファンの店主が営む立ち飲み店です。

 (立ち呑み居酒屋 たく家 店主・西浦拓也さん)「飲み物は何にしますか?」
 (ガイド)「彼女のリクエストは『サプライズ・ミー(驚かせて)』」

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 出てきたのは…

 (西浦拓也さん)「大阪名物、ガリ酎ハイ!」

 寿司の付け合わせ「ガリ」が入ったチューハイです。

 (観光客)「おいしい」

 店主の西浦さんとも交流します。

 (店主)「どこから来たのですか?」
 (観光客)「L.A. カルフォルニア」
 (観光客)「レイカーズ、ドジャース…」
 (店主)「オオタニ」

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 野球トークでさぞかし盛り上がるかと思いきや…

 (店主)「イチローを知っていますか?スズキ・イチロー」
 (観光客)「スズキ?」
 (店主)「262安打、ワンシーズン」
 (ガイド)「記録を打ち立てた…」
 (観光客)「好きなのはイケメンなんです。スポーツじゃない」
 (ガイド)「彼女はスポーツより男が好きだと」

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 そろそろ時間です。

 (観光客)「とても楽しかったです。ここの地元の人たちと話せた」
 (観光客)「交流をして、おしゃべりして、友だちもできて、素晴らしいです」

 運営会社は今後、サービスエリアを拡大する予定で、観光客を分散させながら大阪全域を活性化させたいとしています。