OECDの調査によると、日本の睡眠時間は7時間42分で、33か国中なんと最下位の33位。さらに、2016年のあるシンクタンクの試算では、日本の睡眠不足による経済損失は約15兆円とも。では、どうすれば「良い睡眠」をとれるのか?睡眠研究の世界的権威に聞きました。

2030年には市場規模2000億円に!?睡眠市場がアツい

 いままで以上に眠るのが気持ちのいい春。ですが、睡眠市場は眠るどころか活気づいているんです。2万人以上のバイヤーが集まる日本最大級の生活用品の展示会では「睡眠グッズゾーン」に人だかりが。中にはすでに大きなマネーを動かす商品も!

 例えば、充電式ホットアイマスク「nerugoo」(税込み4280円)。

 (株式会社ルル 白井裕樹社長)「使い捨てのアイマスクが多いと思うんですけど、何回でも繰り返し使えるのが一番のポイント」

 3年間で、すでに40万個を販売。単純計算でも17億円以上の売り上げです。
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 富士経済のマーケティング調査によると「良い睡眠」需要の高まりで、睡眠サポート関連の市場は拡大傾向にあり、2030年には2000億円規模へと成長することも予測されています。

ニトリには悩みに特化した『約40種のまくら』

 需要の高まりは身近な家具店でも。寝具が人気の「ニトリ」では…

(ニトリ西成店フロアマネジャー・久木元壱成さん)「まくらで約40種類をご用意しています。寝返りが打ちにくい、腰が痛い、肩が凝るとか、お客様のニーズに応えようとしたところでいろいろ(品そろえを)増やしていった」

 いびきが出にくい、横向き寝に適しているなど、お悩み解決のために特化した商品がずらり。

 例えば、大人気の商品「上半身を包み込むまくら」(税込み4290円 ※4月7日までの期間限定価格)。首にかけると上半身を包み込んで、どんな寝姿勢でもフィットし、体の負担軽減につながるそう。

 ここ数年、睡眠グッズの問い合わせは増加しており市場への期待は大きいと言います。

睡眠の権威が説く「睡眠は減点方式。NG行為をつぶしていく」

 そもそも、需要が伸びているという「良い睡眠」とは?睡眠のスペシャリストである筑波大学・柳沢正史教授に、山中真アナウンサーが話を聞きました。柳沢教授はノーベル賞の登竜門と言われる「ブレークスルー賞」をはじめ、数々の国際的な学術賞を受賞。その研究に国が20億円を出すことを決めるほどの睡眠研究のトップランナーです。
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 まずは直球の質問。

 (山中真アナウンサー)「そもそも人間にとって睡眠とはそんなに大事?」
 (筑波大学・柳沢正史教授)「寝不足になると、その日から脳のパフォーマンスが悪くなります。一晩徹夜した脳はある論文によると血中アルコール濃度0.1%程度、完全に酔っ払った状態(と同じ)です。1日6時間の睡眠を約10日間続けると完全に徹夜したのと同じ状態になってしまいます」

 さらに、健康面においても…

 (柳沢教授)「慢性的に(睡眠不足が)続くと、いわゆる成人病と言われる一連の疾患、うつ病に至るメンタル不調、メタボリックシンドローム。認知症やガンのリスクも上がるとされています」
 (山中アナ)「どれくらい寝たほうがいい?」
 (柳沢教授)「年齢によっても変わってきますけど例えば20代なら8時間以上必要。(30代~40代の)働き盛りで6時間だとほとんどの方が足りていない」

 柳沢教授は「量を確保せずして質を論じるのはナンセンス」だといいます。

 (柳沢教授)「日本人は睡眠を(自由に使える)可処分所得だと思ってる。『いろいろやって残りの時間で眠りましょう』。考え方をガラッと変えて、睡眠はお金に例えるなら『住宅ローン』。『毎晩きちんと返さなきゃヤバい』と」
 (山中アナ)「質を上げるためにできることは?」
 (柳沢教授)「基本的に睡眠は減点法。NG行為はいくつかあるので、それをつぶしていく」

 例えば、『寒いときは靴下をはいて寝る』『睡眠時間を1時間半の“倍数”にする』『眠れなくても目を閉じて横になればOK』…これらを睡眠時にやったことがある人は多いと思いますが、柳沢教授によると、質の良い睡眠には全部NG!
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 「寒い時には靴下を…」と思いがちですが、実はNGなんです。

 (柳沢教授)「私たちの手のひらと足の裏は放熱器。眠っている間も無意識に体温調節をしている」

 結果として質の良い睡眠がとれないので、素足のままがベスト!

 睡眠時間は1.5時間の“倍数”がいいというのも言わば「都市伝説」。どれくらい寝たらすっきり起きられるかは、個人差などもありまだわかっていないと言います。

 「目を閉じて横になる」というのも、体の疲れは取れるものの、「脳の睡眠要求は眠らない限り解消されない」ため、睡眠と同じ効果はないそうです。他にもこんなNGが。
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 (柳沢教授)「(大事な)寝室環境は3つ。▽暗い▽静か▽朝まで適温。NG行為の代表は寝室のエアコンをタイマーで切ること。私に言わせれば電気代よりも質の良い睡眠のほうが価値が高い。自分にとって快適な温度を朝まで保つのが大事です」

睡眠の“見える化”を山中アナが体験!

 ただ、こうした点に気を付けたとしても…

 (柳沢教授)「自分で自覚している睡眠の量とか質って全然当てにならない。一度ご自身の睡眠を客観的に(見て)どういう状況か知ることが大事だと思います」

 そこで柳沢教授が開発したのが、睡眠を「見える化」してくれる新ビジネス!シール状のセンサーを自分で頭につけて眠るだけで簡単に脳波を測定でき、寝付くまでの時間や睡眠の深さなどを測ってくれるんです(「脳波で睡眠計測 Web限定体験プラン」税込み1万3000円)。

 山中アナも自宅で計測を体験。果たして結果は…

 (柳沢教授)「40代の終わりと考えると、結論を先に言うと合格点。比較的安定して深睡眠・レム睡眠がとれている。おそらく若いころの朝まで絶対起きない、ぐっすりした睡眠と比べてみると、今はよく眠れないなって思われてるんだと思います」

 今回は「しっかり眠れている」ことがわかり一安心でしたが、睡眠時無呼吸症候群など問題点が見つかることも。中には「眠れていない」とストレスを感じていても、測定してみると実はよく眠れている「睡眠誤認」という症状もあり、この「見える化」によって睡眠の悩みが解消されることも多いそうです。
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 「質の良い眠りは経済に直結する」と言う柳沢教授。

 (柳沢教授)「睡眠という切り口から健康の増進。健やかな睡眠は脳のパフォーマンスのために必須。経済効果は非常に大きい」

 注目の睡眠市場、今後も「寝る経済」は育ちそうです!