日本で初めての団地にある酒蔵。地域の住民と共に造った初めての「団地クラフト」を販売です。

日本初!団地にある酒蔵で造られたお酒

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 フルーティーな香りにすっきりとした味わい。日本初の団地にある酒蔵で造られたお酒、その名も「団地クラフト」です。

 酒蔵があるのは大阪府高槻市の富田(とんだ)団地。総戸数2600戸を超える大規模団地の一角、わずか8坪の空間から「団地クラフト」は誕生しました。

 3月9日、初めて「団地クラフト」が販売されるのにあわせて記念のイベントが開かれ、多くの人が集まりました。

 酒造りをするのは「足立農醸」の代表・足立洋二さん(34)です。

 アメリカに留学していたとき、アルバイト先の和食レストランで日本酒を楽しむ客の姿を見て、その可能性を感じたと言います。
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 兵庫県などの酒蔵で6年間修行を積み、去年3月に富田団地で酒造りを始めました。1か月の家賃8万7000円という安さに加えて「団地」だということが決め手だったそうです。

 (足立農醸 足立洋二さん)「生まれも育ちも大阪・福島区の団地なんで、本当に実家みたいな、安心感っていうか」

果実やスパイスを使い“壁”を克服

 しかし、酒造りを始めるには“ある問題”がありました。実は日本酒製造への新規参入は原則、認められていないのです。

 そこで足立さんは日本酒を造る過程で果物やハーブなどの副原料を加えると、日本酒ではなく「その他の醸造酒」に分類されることに目をつけて新たな醸造免許を取得しました。

 (足立農醸 足立洋二さん)「日本酒より、枠組みが外れてより可能性が広がったというのは感じています。自由に酒造りができている」
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 パイナップルやマンゴーなどのを使った「団地 de マリブ」(500ml 税込み2310円)や、10種類以上のスパイスと日本酒を一緒に発酵させた、コーラ風味のスパークリングサケ、その名も「団地のコーラでしゅ(酒)。」(330ml 税込み990円)など、この1年で18種類のお酒を造りました。

小学校の廃校跡で採れたみかん・文旦をお酒に…

 今回新たに販売される「団地クラフト」、その特徴は地域の住民が大切に育てている果物で初めてお酒を造ったことです。その果実というのが「みかん」と「文旦」です。

 (富田団地自治会 澁谷哲男会長)「これ、この前採ったみかん、ここから採りました。小さいけど、ようけ実がなるんです」

 育てられているのは小学校の廃校跡。地域の住民も地元の果物を使った酒造りに協力してきました。

 (富田団地自治会 澁谷哲男会長)「地元で作った果汁が入っていることで味がまた違うと思いますよ、絶対に」

「飲めないのに2杯目」「フルーティーでおいしい」

 足立さんは時には団地の住民に手伝ってもらいながら丁寧にお酒を造ります。そして完成したのが、初めて地元で収穫されたみかんと文旦で造った「団地クラフト」です。飲みやすいように通常15%以上のアルコール度数を8%におさえました。

 (足立農醸 足立洋二さん)「8%で、この味でどういう反応なんやろうみたいな。初めての試みなので。いろいろチャレンジできる機会をもらって新しいことにチャレンジできているんで、ありがたいです」
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 地元住民も協力して造った初めての「団地クラフト」。そのお味は…?

 「飲みすぎちゃうね。私飲めないのに飲んでいるもん」
 「2杯目やで、飲めないのに」
 「たまには酔っ払ったらいいんですよ」

 「おいしかったね。血行が良くなってね、なんか元気が出ました」

 「とてもフルーティーでおいしかったです。1本買っちゃいました」
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 搾り方を変えて2つの味を楽しむことができる「団地クラフト」(1-1うすにごり 1-2にごり どちらも500ml税込み2750円)。酒蔵の前には買い求める長蛇の列ができていました。
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 足立農醸の足立洋二さんは、「熱量が伝われば。いろんな人を巻き込んでやっていく事業にしたいと思っていたので、それが形になりつつある感じです。」と、これからも地元に根ざした酒造りをしたいと意気込みました。