首都圏などから続々と大手スーパーが関西エリアに進出しています。一方で、関西のローカルスーパーも負けていません。「独自の強みを生かした安さ」や「また行きたくなる魅力」で奮闘している、3つのローカルスーパーを取材しました。
大手スーパーには負けない!赤字覚悟で売り上げUP 『八百鮮』
去年秋、関東のスーパー「オーケー」が大阪に初進出。ほかの大手スーパーも続々と資本力を武器に関西に上陸しています。一方、地域密着型のスーパーは窮地に立たされていると思いきや彼らにしかできない秘策で戦っているんです。
まずは、大阪・福島区の商店街にあるスーパー「八百鮮 野田本店」。山積みにされたキャベツは1玉299円。ブロッコリーは1本199円、いちごは1パック399円と生鮮品がとにかく安いんです(※値段は取材時のもの・税抜き)。
(客)「イチゴ安かったですね。けっこう高い(ほかの店は)600円くらいするので」
開店直後から大混雑!多い日は2000人の客が訪れ売り上げは600万円。八百鮮は大阪・兵庫などに10店舗を展開。チラシを作らず広告費を減らしていて、その分商品の値段を下げることができるんです。さらに赤字覚悟の値付けも。
(八百鮮野田本店・行基拓也店長)「きょうもブロッコリーは赤字で売っています。(いつもは)299円で売るんですけど199円で。来たら何かがあるなと思わせるのが大事やと思うんで、目玉商品を自分たちで作っていく」
八百鮮の場合、商品の値段を店舗ごとに自由に決めることができ、例えばブリッコリーは赤字でも野菜売り場全体でみると利益が出るようにしているそうです。並べる商品や値付けが自由な分、売れる工夫をすることが腕の見せ所です。
一方、大手ではこのような戦略は難しいと専門家は話します。
(食品問題評論家・垣田達哉さん)「地元のスーパーの方が小回りがききますし、大手の場合には利益を何%とらなくてはいけないとか、それぞれの方針に基づいてある程度決まっているから、それを守らざるを得ない」
SNSでもバズる 買った食材を何でも調理『goody 中津店』
続いては、大阪・北区の住宅街にある個人経営のスーパー「goody 中津店」。選んだ食材をレジに持っていくと、会計をする前に店員が店の奥に持っていきました。
しばらく待つと…出てきたのはアツアツの麻婆豆腐です。なんと客の希望に応じて買った食材を何でも調理してくれるサービス。購入費の1.5倍~2倍で料理を提供してもらえるんです。
(客)「こんな感覚ないじゃないですか。店の一角で鍋をつつく、しかも店にあるもので。驚きですよ」
常連客もいて、買い物をしたあと自分で作るのが面倒な人や外食メニューにない料理も作ってくれると好評。お酒も買ってスーパーで飲み会ができるんです。
(goody中津店・八尾良介店長)「若い客さまがSNSを通じて来店することがとても増えました」
ローカルスーパーならではの試み。リピーターも増えているそうです。
値段を柔軟に変えてフードロスなし!仕入れ力も魅力の『越前屋』
3つ目のローカルスーパーは、午前8時半にオープンする大阪・西成区のスーパー「越前屋」。食パンが1斤138円(税抜き)に、98円(税抜き)の菓子パンも。
多い日には3000個の菓子パンを仕入れます。ただ、売り切るために1日に何度も値段を変えるそうです。
(越前屋・香川寛史専務)「今98円(税抜き)で売っているんですけど、ちょっと(売れ行きが)鈍いなと思ったら、昼くらいから値段を下げる。ひとつ10円でもいいからお金に換えろというのが創業者の教え。だからフードロス一切ないんです」
越前屋はジャンルごとに担当者がいて、仕入れの量や予算などすべてを任かせているんです。そんな越前屋が最も得意とするのは「鮮魚」。大手では仕入れの予算に上限があることが多いのですが…
(香川寛史専務)「越前屋は予算に(上限が)ないんですよ。鮮魚でだいたい月4000万円くらい(仕入れに)使う」
鮮魚を仕入れるのは稲岡総司さん。30年以上毎朝、卸売市場に通うベテランです。午前3時半、仕入れの現場に同行させてもらいました。
(越前屋鮮魚担当・稲岡総司さん)「マナガツオどない?」
鋭い目で魚を見定める稲岡さん。大手スーパーは売り場の担当者が直接、買い付けをしないケースもあるということですが、稲岡さんは必ず分の目で見て仕入れます。
(稲岡総司さん)「細かい目利きが必要なんで品物を一瞬一瞬で見定めていって、店頭に並べて売れるか売れないかの判断を即座にしないといけない。なかなか量販店ではできないと思います」
稲岡さんはその場で売り場の陳列方法や価格設定、それに特売品を決めていきます。この日はトラック2台分、魚介類を仕入れました。店に帰ると早速、売り場に並べます。
(稲岡総司さん)「(Qどんな人が買っていく?)商売人、飲食の人が多いんで」
長年、培った仲買人との関係が大手にはない「仕入れの力」につながっているといいます。
(稲岡総司さん)「「業者さんが困ったもの、(売れ)残ったもの全部買っていく。困ったところをしっかり助けていく。そういう信頼関係で、安く売れる魔法が使えるようになった。魔法ですよこんなもん」
ただ、こうしたスペシャリストは一朝一夕には育成できません。そこであえて西成の一店舗に経営を集中することが、大手に負けない戦略だといいます。
(香川寛史専務)「(Q店は増やさない?)お客様のほうからよっていただけるスーパーを目指しているんで、USJもそこしかないからみんな行くじゃないですか。僕ら恐れ多くもUSJと同じやと思っているので」
大胆で自由な商売で大手スーパーにも負けないローカルスーパー。わざわざ足を運ぶ価値があるかもしれません。