ここ10年で移住者が約4倍に増えた福井県。自然豊かで食べ物がおいしいなど「住環境の良さ」が魅力的ですが、子どもの医療費・教育費の無償化など「子育て支援」にも県は力を入れていて、“子育てがしやすい県”として多くの移住者を獲得しているのです。

 関西からも近い福井県。一体どんな魅力があるのでしょうか?移住した人は、どんな生活を送っているのでしょうか?大阪から福井に移住した2組に密着しました。

福井の魅力は?『満員電車、なし』『スーパーがスーパー』

 11月30日、大阪・梅田で「福井県移住・交流フェア」が行われました。福井県下に住む市町の担当者から、直接、福井での生活・環境について聞くことができるイベントです。

 (来場者)「若い人はどこに働きに行く?」
 (担当者)「サービス業だったり旅館業」
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 会場のいたるところに置いてあるポスターには、『満員電車、なし。』『スーパーがスーパー。』など魅力的なキャッチコピーが。マイカー通勤が主流で、カニなどの新鮮な魚介類がスーパーで簡単に手に入る…そんな福井での新生活の夢が膨らみます。

 (大阪在住 20代)「福井への移住を検討しています。田舎の生活がいいなと。食べ物とかもすごくおいしかったですし、寄り添ってくれる人の良さもありがたいなと」
 (大阪在住 30代)「福井に前住んでいて、仕事の都合で大阪に引っ越してきたんですけど、すごく住みやすかったので(移住を考えている)」
 (大阪在住 30代)「子育てしやすかったです。ごちゃごちゃしてない」

「自然が最高すぎて」移住の決め手は“子育てのしやすさ”

 福井市に隣接する、人口約1万8000人の永平寺町は、自然豊かで都心にも近いことから移住者が急増しています。鎌倉時代に開かれた禅の修行道場・永平寺の門前町です。

 この町で酒店を営む勝山詩麻さん(26)は、大阪市西区出身で、2年前、夫婦で大阪から福井に移住してきました。
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 週末は酒店に併設したカフェで、地元でとれた新鮮な野菜や米を使った「薬膳カレー」のランチプレートを提供しています。福井の食材を使った大阪仕込みのスパイスカレーを楽しみに、遠くから来店する客も多いといいます。

 (客)「本格的な味で、あえ物とかも含めて和の味が入ってたりして、それがまた日本人が食べやすい味になっていてすごくおいしいです」
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 もともと大阪の飲食店で働いていた勝山さん。コロナ禍で店が営業できなくなり、移住を考えるようになりました。

 (勝山詩麻さん)「趣味だったり、好きなことを探したいなと思っていて、『そういえば農業したいな』ってふと思って、野菜をちょっと育ててみたところすごくハマってしまった」

 夫の出身地で何度も訪れたことがある福井県で、農業の求人を探し移住。長男の妊娠が分かったタイミングで、夫の実家がある永平寺町に引っ越してきました。

 (勝山詩麻さん)「(両親からは)産むんやったら大阪で産みなさいと言われてたんですけど、福井県の環境とか自然が最高すぎて」
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 福井県で暮らし続ける決め手となったのが「子育てのしやすさ」でした。県は人口減少対策として、子どもの医療費の無償化や、子どもが2人以上いる世帯の高校授業料の無償化など、子育て支援の強化を打ち出しています。

 (福井県・定住交流課 三津谷勇気主任)「福井県は『親超優遇ふく育県』というような形で、非常に子育てがしやすい、経済的にも楽な県であるということで、都市部を中心にPRをさせていただいています。非常に子育てにお金がかからない環境にあると考えています」
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 住環境の良さに加え、こうした県の取り組みが功を奏し、福井県への移住者の数は右肩上がりです。4年連続(2020年度~2023年度)で1000人を超え、この10年(2014年度~2023年度)で4倍になりました。

 さらに今年3月に県内まで延伸し、今後大阪まで伸びる予定の北陸新幹線も、移住者増加の要因の1つとみられています。

 (福井県・定住交流課 三津谷勇気主任)「これから大阪に延伸するにあたり、今、北陸3県が連携して、大阪に『北陸プラス』という情報発信の拠点を設けています。特に関西から、さらに人を呼び込んでいきたいと考えています」

「幸せ。生きてるなって感じ」町の魅力を発信する“地域おこし協力隊”

 山あいにある南越前町に住む、古田崚さん(32)は大阪府箕面市出身で、この町で地域おこし協力隊として働いています。建設業界を辞め、2年前に移住した古田さんは、人口の高齢化が進む南越前町への移住を促す役割を担い、広報誌のほか、県外のイベントなどで町の魅力を発信しています。

 (町役場の同僚)「もともとが関西からの移住者ということで、活発で声も大きくて、すごく話していておもしろいなと思う方です」
 (古田崚さん)「皆さんに面倒見ていただいて、何かわからないことも全然聞けますし、役場の方も、町の方も、いろいろ丁寧に教えてくださる方が多いので、僕としてはすごくやりやすく仕事をさせていただいている感じですね」
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 家賃1万円の1軒家に1人暮らし。突然やってきた古田さんを近所の人は温かく迎え入れてくれたといいます。

 (古田崚さん)「近所に畑をやっている方もたくさんいるので、野菜をいただくこともありますし、都市部に住んでサラリーマンをしていたら絶対関わらない人と友だちになれた」
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 11月下旬、古田さんは近くの山林に向かっていました。今、力を入れているのが、町の主要産業でもある「林業」の活性化です。人手不足が深刻化するなかで、南越前町での林業を移住者の選択肢に入れてもらうにはどうすればいいのか、自ら現場でチェーンソーも扱い、発信の仕方を探ります。

 (南条郡森林組合 川端義治参事)「結構うまくなってきている。雨の時も仕事をしないといけないので本当にきつい。なかなか人が入ってくれない。(古田さんの活動で)輪を広げてほしいです」
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 (古田崚さん)「『古田くんのおかげで人いっぱい来てくれてまわってるわ』と言ってもらえるのが今の目標ですね。外部の目線をしっかり保ちつつ、やっていきたい。(Q移住して幸せですか?)めっちゃ幸せですよ。なんか生きてるなって感じがします」

 コロナ禍を経て仕事や生活への価値観が多様化するなか、魅力ある地域への移住は今後も増えそうです。