11月に漁が解禁された「ズワイガニ」。オスは山陰地方では“松葉ガニ”と呼ばれ、冬の日本海を代表する高級食材です。そんなズワイガニ漁を行う漁業関係者が今、“あるカニ”に頭を悩ましています。

 「ものすごく影響受けてますわ。死活問題になっています」
 「ここまで影響するとは正直思ってなかったですね」

 こう話す兵庫県北部の漁師たち。憤マンの矛先は、「オオズワイガニ」。名前にズワイガニがついていて、見た目もズワイガニそっくりですが、実はまったくの別モノです。
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 (北海道の漁師※去年)「網がやられますね。あいつら口で網切るんで」

 去年、北海道で大量発生し、大きな被害をもたらしたオオズワイガニ。あまりにもとれすぎたため、地元の直売所などで1匹150円で販売したところ、“激安ガニ”として厄介者から人気者に大変身。今年はさらにサイズが大きくなったということで…

 (北海道の漁師)「全然厄介者じゃないです。こういう大きいやつだと、うちらこれで商売してますんで」

ズワイガニの8分の1以下の値段で販売されるオオズワイガニ

 認知度も上がり日本各地で販売されるように。大阪のスーパーマーケット「生鮮スーパーたこ一 緑橋店」へ前田春香アナウンサーが行ってみると…

 (前田アナ)「カニが並んでます。たくさん並んでるのがオオズワイガニですね。こちらの松葉ガニは一匹1万2800円(税抜き)。オオズワイガニは一匹1580円(税抜き)。値段が全然違います」

 同じような大きさで値段はなんと8分の1以下です。

 (前田アナ)「オオズワイガニは売れていますか?」
 (たこ一緑橋店 佐々木健晴さん)「売れてます、めちゃくちゃ売れてます。松葉ガニはいうても1匹2匹ぐらいしか売れないんですけど、オオズワイガニは箱でそのまま持っていったりする人もいる。ありがたい存在ですね」
 (前田アナ)「お客さんから『そんなに安くて大丈夫?』とか聞かれませんか?」
 (佐々木健晴さん)「言われました。『なんでこんな安いん?』って。『いっぱいあるからです』って(答えた)」

“セコガニ”の値段が上がらず漁業関係者の生活に大打撃

 安いカニの登場は消費者にはうれしい反面、このオオズワイガニが出回ることによって、本来のズワイガニの産地では、新たな問題が起きているようです。取材班は、兵庫県新温泉町の鮮魚店を訪れました。

 (山米鮮魚 山本静夫さん)「もう売れちゃって、たくさん残ってないですけど…」

 3匹1000円で売られていたのは、ズワイガニのメス“セコガニ”です。この値段は去年の半分以下だといいます。

 (山本静夫さん)「今年は特に安いです。オオズワイガニが出てから、ズワイガニの子持ちの小さいのは飽和状態になって、値段が上がらない。消費者のみなさんは喜んでいるかもしれないですけど、漁師さんは大変だと思います。カニの味自体が全然違いますしね。(ズワイガニの)価値が出ないというのは、ちょっと残念なことだと思います」

 セコガニの大幅な値崩れは、漁業関係者の生活には大きな打撃だといいます。
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 (漁業関係者)「1年分をここでみなさん稼がないといけないんですけど、単価が安くなるとなかなか生活にも響きますし」
 (漁師)「どうすることもできないので、なんとか松葉ガニを頑張ってとって帰ってくるしかないですよね。相場が上がってきてくれることを期待して頑張るしかないです。

オオズワイガニの特徴は?安さで人気となるが“問題”も…

 改めて、オオズワイガニの特徴を振り返ると、北海道で去年から特に大量発生しているカニで、「松葉ガニ・セコガニ」と呼ばれるズワイガニとは別のカニです。北海道では例年、年間100tぐらいとれていましたが、今年は4月~10月末で930tの水揚げがあります。

 漁の網やカゴを傷つけるため、漁業関係者にとっては悩ましい存在でした。もともと漁の対象ではありませんでしたが、“駆除のため”通年で捕獲し、販売。たくさんとれることから“安いカニ”として全国で流通しています。

 その安さから人気となっていますが、『オオズワイガニをズワイガニと偽って売る』事例があり、これを受けて国は、正しく表記するよう業界団体などへ要請しているということです。

 また、オオズワイガニが多くとれることで、『ズワイガニ(特にセコガニ)の値崩れ』も生じています。セコガニは、去年にくらべて3割~4割ほど安く流通しているということです。セコガニは今年はよくとれているため、そういう状況も相まって、安くなっているということです。

 そして、気になるのは味。人それぞれ感じ方はあるようで、「味が少し水っぽくて劣っている」という意見もあれば、「あんまり変わらない」という意見もあるということです。

オオズワイガニとズワイガニの見分け方は?

 オオズワイガニとズワイガニの違いとしては、オオズワイガニの方が甲羅が大きく、足が太いということです。また、生の状態の色は濃い茶色で、ボイルすると赤色に。ズワイガニの生の状態の色は薄い茶色で、ボイルするとオレンジ色になります。
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 より違いが分かるのが、口の上の部分です。オオズワイガニはオス・メスともに「口がM字」。ズワイガニは「平ら」になっています。こういった違いがあります。
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 ではなぜ、このオオズワイガニが大量発生しているのでしょうか。東海大学海洋学部の山田吉彦教授によりますと、可能性の1つとしては、2021年から海水温が高く雨が降りやすくなったことで海水の塩分濃度が下がり、その結果、カニの天敵・タコが場所を移し、オオズワイガニの大量発生につながったのではないか、ということです。