JR西日本の新しい観光列車『はなあかり』。上品で重厚感のある黒っぽいボディに、金の花模様が映えます。3両編成の車両はすべてグリーン車以上で、内装も華やかな仕上がりです。この列車を待ち望んでいるのは、乗客だけではありません。期待が膨らむ沿線地域の盛り上がりも取材しました。

車内には沿線地域の工芸品も展示

 9月28日に福井県の敦賀駅でお披露目されたのは、JR西日本の新しい観光列車『はなあかり』。「檳榔子染(びんろうじぞめ)」色という紋付染の中で最高級とされる色に、金の花模様が映えます。3両編成の車両はすべてグリーン車以上。最もグレードの高い1号車は、「籠」をイメージした個室のような空間が広がります。

 (記者リポート)「飾り棚にはアートが展示されていています。これは沿線・京丹後の『丹後ちりめん』などを使った作品だということです」

 「地域の華」つまり“とっておき”を集めて乗客と地域の縁を結ぶ列車というコンセプトを体現した車内が乗客を出迎えます。一角には誰でも利用できるフリースペースも設けられていて、特産品の販売などが行われる予定です。

 『はなあかり』は敦賀駅と城崎温泉駅の間の約180kmを走ります(※今年10月~12月の運転区間)。12ある停車駅では最長で27分間停車。列車から降りて買い物をしたり地域の人と交流したりするためで、片道約5時間のゆったりとした旅です。

『Yes We Can!』で盛り上がった福井県「小浜」市も期待

 『はなあかり』が停車する地域は、運行開始を心待ちにしています。そのひとつが、福井県の小浜(おばま)駅です。

 (小浜市民)「そりゃ楽しみにしています。乗りたいけどな、見るだけでも楽しみやわ」
 (小浜市民)「知ってほしいですよね、(小浜市が)これだけ良いところだということは。広まってくれることはありがたいと思います」

 小浜と言えば…16年前のアメリカ・オバマ大統領の就任時には「オバマ」に「小浜」をかけて大盛り上がり。その名は一躍、有名になり、大勢の観光客が訪れました。

 (小浜市民※2008年)「身内が選挙に立候補したみたいな感じ。もう本当に、新聞見るのが楽しみですわ」

 しかし、それもいまや昔。地元の人たちは『はなあかり』が再び小浜が活気づく起爆剤になればと期待を寄せます。

 (和菓子店「井上耕養庵」 井上久恵さん)「あの時はすごい盛り上がりで、多くの方に来ていただいた。今は静かであまり観光の方も流行っていなくて。これからなんとか盛り上がってもらえるように期待しています」

 小浜駅のホームには市民が花と緑のプランターを設置。着々と歓迎の準備を進めます。

 (小浜駅花いっぱい推進グループ 東野峰子代表)「花を見て、安心してもらうというか、安堵する、安らいでもらいたいなと思っています」

 小浜には、今後新大阪まで延伸する北陸新幹線が停車する予定ですが、工事の遅れなどで、いまだ着工していません。そんななかで始まる観光列車の運行。市長も地域活性化の追い風にと意気込みます。

 (小浜市 杉本和範市長)「全国的に小浜という名前を知っていただける大きなチャンスかなと思っております。この機会を逃さずに、しっかりと、この機を大きく熟したいなと思っております」

「穴場な感じです」知る人ぞ知る観光地として注目『夕日ヶ浦』

 いまかいまかと『はなあかり』の運行を待ちわびる地域はほかにも。京都府京丹後市の夕日ヶ浦木津温泉駅。駅構内には足湯があり、旅の疲れを癒すにはうってつけ。ノスタルジックな雰囲気が漂います。

 名前の通り、温泉街ですが、同じ北近畿で有名な城崎温泉と比べると知名度はいまひとつ。それでも最近は、“映えスポット”を整備するなどし、知る人ぞ知る観光地として注目されつつあります。

 (観光客)「すごく良さげやなと思っています。穴場な感じです」
 (サーフィンに来た人)「(波が)めっちゃ良かったです。ここはチェックしに来ますね、絶対」

 もちろん海の幸も豊富。のどぐろやアオリイカは絶品です。

 (大阪から来た人)「わざわざここに魚買いに来るんです。鮮度が全然違うし。カワハギも良いですよ」

伝統工芸「丹後ちりめん」のオブジェ作る職人

 丹後地方は織物の産地としても有名です。中でも「丹後ちりめん」は独特のシボと呼ばれる凹凸が生地の表面にあるのが特徴で、『はなあかり』ではアート作品が車内で展示されています。

 作品を手掛けたのが、臼井勇人さん。伝統を身近に感じてもらおうと丹後ちりめんを使った取り組みを進めるなかで声がかかりました。

 (臼井織物 臼井勇人さん)「はなあかりの車内に飾るオブジェを作らせていただきました。(10個の作品は)それぞれ表情が違っていて、それを見ていろんな織物があることを知ってもらいたい」

夕日ヶ浦のとっておきは…『夕日』 「日本の夕陽百選」に選ばれたことも

 運行を機に、城崎温泉に追いつけ追い越せで魅力を発信したい夕日ヶ浦。地元の“とっておき”を旅館の人に聞きました。

 (一望館 奥弥生支配人)「ぜひですね、この夕日ヶ浦の『夕日』をごらんいただきたい」

 そう、「日本の夕陽百選」に選ばれたこともある夕日です。この旅館では、地元の魚介類を中心に京丹後の名物を一度に楽しめるメニューを用意。『はなあかり』でやってくるお客さんが舌鼓を打ってくれる日を心待ちにしています。

 (一望館 奥弥生支配人)「はなあかりが敦賀から城崎まで。しかもこの夕日ヶ浦木津温泉駅にも停車するということで、より多くのお客様が来ていただける道ができたのかなと思います。(Qはなあかりに乗りたい?)乗ってみたいです!いろんなところに行ってみたいなと思いますし。私たちも新たな発見があるんじゃないかなと思っているので、すごく楽しみにしております」

 沿線の人たちの期待ものせて、観光列車「はなあかり」は10月5日土曜日、運行開始です。