きのう発生した台風5号は、早くも3連休中に北日本の太平洋側にかなり接近する見込みです。北海道や東北の太平洋側では“海洋熱波”の影響も加わるぶん大雨となるおそれがあり、土砂災害など厳重な警戒が必要です。お盆期間は北へ向かう交通の乱れにも気を付けてください。(気象予報士・広瀬駿)

 9日午前9時現在、台風5号は日本の東を北へ時速20キロの速さで進んでいます。今後強い勢力に発達しながら北上して、次第に進路を西寄りに変えて、早ければ11日(日)にも東北など北日本の太平洋側にかなり接近して、上陸するおそれもでてきました。予報円が大きく進路予想にブレはあるものの、台風の進路にあたる地域では大荒れ・大しけとなり、大雨となる危険があります。

なぜ“左へお辞儀”するようなコースに?

 主に秋にやってくる台風の多くは、太平洋高気圧の縁を回って西回りで日本列島へ接近するコースです。なぜ今回の5号は、予報円が“左へお辞儀”するような形となって、日本の東海上から北日本へ近づくような珍しいコースが予想されるのでしょうか。それは、日本付近を覆う太平洋高気圧が“夏バテ”したかのように、一時的に弱っていることが関係しています。

 日本の南の海上では現在、真夏の主役である太平洋高気圧にぽっかりと穴が開いた状態となっています。台風の発達を抑制する高気圧の“ふた”がはずれているなかで、台風5号が発生。高気圧を避けるようにして北上するなかで、次第に東の高気圧が強まって、進路を西へ変えていく可能性があります。東北太平洋側に台風が上陸すれば、2021年台風8号以来3年ぶり、台風5号が予報円の東寄りを進んで北海道に上陸すれば、2016年以来のこととなります。

 8年前の2016年は、統計開始以来初めて北海道に3つの台風が上陸しました。また史上初めて東北太平洋側(岩手県)から上陸した台風10号では、東北と北海道で大雨による土砂災害や河川の氾濫が発生しました。経験的に台風の影響を受けることの少ない地域に相次いで台風の襲来したことで、北海道ではじゃがいもの収穫量が大きく減少し、ポテトチップスの製造にも大きな影響が出ました。

“海洋熱波”の影響でさらなる大雨に?

 5月に配信した三重大学大学院・立花教授のインタビュー記事で紹介したように、今後の「異常気象の連鎖」が気になるところです。去年の猛暑や暖冬も加わって、東北や北海道沖の太平洋は海水温が異常に高い状態が続いています。この“海洋熱波”は、陸地の暑さをさらに厳しくさせるほか、台風接近時は雨雲がより発達しやすくなって、大雨がさらに激しくなってしまう危険もあります。

 8月8日時点では、三陸沖の海面水温は27度を超えており、北海道の南の海域では平年より4度以上も高くなっています。連休は台風5号の接近に伴い、普段雨の少ない地域に発達した雨雲がかかって激しい雨が降り、土砂災害や河川氾濫の危険度の高まるおそれがあります。

去年2023年のお盆も台風7号直撃

(画像:2023年台風7号の被害 ※京都府綾部市)

 東北地方中心に北日本の太平洋側では11日(日・祝)から12日(月・振休)ごろにかけて、暴風や高波、大雨に警戒が必要です。関東の沿岸でも高波に十分注意が必要で、海水浴は安全第一で楽しむようにしてください。西日本や東海地方では台風5号による直接の影響はなく、3連休はだいたい晴れて猛烈な暑さが続くでしょう。

 ちょうど1年前のお盆期間にも、日本列島には台風が直撃していました。海水温の高まった日本海で雨雲が発達し、2023年台風7号の影響で鳥取県には大雨特別警報が発表され、近畿地方の日本海側でも大雨となりました。猛暑が日本周辺の海をどんどんと暖めており、本格的な台風シーズンはこれからです。台風5号の影響を受けない地域でも、今後の台風接近に備えて、非常用品や避難場所・経路を確認するようにお願いします。
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