困窮家庭の子どもを支援している認定NPO法人「キッズドア」が26日会見を行い、この夏の食糧支援に向けたアンケート調査の結果を発表しました。そこには、止まらない物価高に追い詰められる、困窮家庭の悲鳴のような声が溢れていました。
アンケート調査は、キッズドアの食糧支援「ファミリーサポート」に登録している世帯を対象に行われました(2024年5月27日~6月3日、回答数1821件)。回答者のうち母子世帯が90%でした。
2024年に予想される世帯所得は「100~200万円」が最も多く38%。「300万円未満」が8割近くを占めました。「貯金がない」が38%、「借入金がある」が44%と、これ以上の負担増に耐える余裕が全くないにも関わらず、去年の同じ時期と比べて「とても厳しくなった」が約8割、「やや厳しくなった」も合わせると98%が物価高騰にあえぐ現状が伺えます。
物価高騰に追い詰められる声
こうした経済事情の中、物価が上がり続けている現実は、日々の食事にも大きく影響しています。調査では3~4割の家庭で、一人当たり1か月の食費が「1万円未満」で、約6割の家庭で肉や魚、野菜、保護者の食事量を減らしているといいます。
「食材が欲しい時に欲しい量を買えず、お米とおかず一品の日が続く頻度が増えてしまい、子供が常にお腹を空かせている。コロナが落ち着いてきたら食料支援も減ってしまった」
「毎月値上がりする食品が出てくるし、光熱費も高くなる一方で大変。子供の成長の妨げにならないよう、安い食品を選びながら料理しているが、限界もあり苦労している」
子どもの成長や健康にも影響
極限を超えた切りつめは、子どもたちの健康や成長を脅かしています。
「食べ盛りの子供が3人いますが、一番下の小学生は学校内の内科検診で、体重の減少でひっかかりました。満足な量を食べさせてあげられていないので申し訳ないと思っています」
「物価高でお米や野菜まで高くて、おかずの量は完全に少なくなりました。長男が急激に体重が落ち、貧血も酷くなってしまいました。お米など、食糧支援が欲しいです」
「子どものオムツ、ミルクも中々買ってあげられないのでミルクは薄め、オムツはなるべくそのままにして 変える頻度を少なくしている。が、衛生面も良くなく、肌荒れしてしまいます」
「小学3年生の長男も、熱があっても身体がきつくても我慢して隠すようになってしまった。私が仕事を休む事になると給与が減る、生活が大変になると遠慮して言えないと言われてしまい、辛い」
これ以上削れるものがない
困窮家庭では、もともと厳しい生活を送っていたところに急激な物価高に見舞われ、これまでも保護者の食事を減らしたり、真冬や真夏でもエアコンの使用を控えたりなどして出費を抑えてきています。しかしながらそれでも足りない家庭もあると言います。
「6月から電気代の補助がなくなるというので、どれだけ値上がりするか恐ろしい。テレビも風呂もガスもない生活をしているが、これ以上電気代があがると厳しいので、冷蔵庫を手放そうか検討している」
「トイレの使用回数を減らすべく、みんなで使ったあと一括で流す事を徹底したり、食事も満足のいく内容や量では無いです。人が使わないところを頂いたり、2度 3度と収穫できる物は捨てずに食し、家庭菜園を実施したり友人宅から頂いたり」
「車が必要な田舎であるが、手放さなくてはいけないほど苦しい状況。最近はなんのために生きているかわからない。なぜ子供を育てているかわからない」
政府は「物価高に対応できる賃上げ」を標榜していますが、実質賃金は25か月連続で下落しています。特にひとり親家庭の場合は収入を増やすことは容易ではありません。
今回のアンケート調査の回答者のうち「パート、アルバイト」は42%で最も多く、契約社員、派遣社員を合わせた非正規雇用者は55%を占め、勤め先も「就業者数100名未満」が全体の6割で、賃上げ効果を得にくい現状です。実際に2023年の1年間に「賃金上昇しなかった」は82%でした。
雇用の厳しい現実
特にひとり親家庭の場合に、収入が安定した正規雇用や、賃上げが実施される大手企業で職を得ることはとても難しい現状があります。
「正社員の仕事を探しているがなかなか決まらない。子供に障害があるので思うように働けない」
「派遣切りに合いまもなく無職になります。正規雇用で働きたいけど年齢的になかなか見つからず困っている」
「物価が上がっているのに、給与が変わらず困っています。ひとり親で、頼れる親戚も居ないので、子供達の学校行事や体調不良で仕事を休む時、有給では足りません」
「がん治療後の後遺症で働けない。在宅で子どもを養えるほどの収入がある仕事が必要」
働く意欲があっても職を得られなかったり、ひとりで子育てすることの負担の大きさなど、支援が必要にもかかわらずそれを得られない親の厳しさは増す一方です。
夏休みになれば、給食がない、暑さが厳しくなるなどでますます困窮します。今回の調査では、初めて夏休み関する質問を設定しましたが、「なくてよい」が13%、「今よりも短いほうがよい」が47%と6割に達し、本来ならば子どもにとっては待ち遠しいはずでも、生活がより厳しくなり、友達が経験している旅行やレジャーもあきらめなければならないことは子どもの心に大きな陰を落とします。
キッズドアの渡辺由美子理事長は、「アンケートの記述で、何人ものお母さんが死にたいと書いている」という現状を訴え、このあと「夏休みを迎える困窮子育て家庭に現金給付」「困窮子育て家庭の体験格差を埋める支援」「年収 300 万円未満の困窮子育て家庭へ緊急の支援」「困窮子育て家庭にも賃上げ」を提言として、こども家庭庁と厚生労働省、文部科学省に提出するということです。