4月は、新たな生活を新たな気持ちで迎えるために、身の回りのモノを“整理”したいという人が増えるようです。1年で最も忙しい時期を迎えている買い取り専門店を取材しました。
使用した化粧品…値段はつく?
兵庫県芦屋市の「買取専門店 エコリング ラポルテ芦屋店」。今年4月2日、開店時刻の午前11時、店の外にはすでに、モノを整理したい人が待っていました。岡本貴也店長(30)が対応します。
(岡本店長)「こんにちは」
(客の女性)「きょうね、口紅3本だけだから、予約しないで来ちゃったんだけど」
(岡本店長)「全然いいですよ」
開店と同時に、1人の女性がさっそく店内へ。今回整理したいものは、シャネルの口紅。ただ、新品ではないようで、かなり使い込んだ気配。果たして、値段はつくのでしょうか。
(岡本店長)「こちら、たぶん使用はされていると思うんですけど」
(女性)「だいぶ(使用)してます」
(岡本店長)「使っているものでも、買い取りは可能なので。・・・お待たせいたしました。3点で1000円のお買い取りとなっております」
(記者)「いかがでしたか?」
(女性)「うれしかったです」
ほっとした様子。使ったことのある口紅でも、持ってきてみるものです。気になるのは、口紅の行く末。岡本店長に聞きました。
(岡本貴也店長)「これ(口紅)を何点か1つにまとめて、塊にして業者に販売します。(その後、業者が)美容学校に練習用として寄付することもあります」
金のネックレスの“売り時”を迷う芦屋のマダム
続いて、整理するために店にやってきたのは“芦屋のマダム”です。
(女性)「きょう持ってきてないんだけど、前見せたダイヤの蝶々が3つついたもの、あれおいくら?」
(岡本店長)「あれは…」
以前に何度か買い取りの相談に来ているようです。女性が持っているのは金のネックレス。世界情勢の不安定などの理由で、ここ10年で金の買い取り価格は上昇。女性は“売り時”を迷っているようです。
(岡本店長)「また金が上がったんです。最初(去年10月の買い取り価格)が45万円だったんですよ」
(女性)「安かったですね」
(岡本店長)「以前(今年2月)に再度見積もりをして(買い取り価格が)55万円」
(女性)「ああ、その程度…」
納得のいく値段で整理できるのでしょうか。
(岡本店長)「きょうもし来ていただけるんだったら、特別価格で、ここまでいきます」
(女性)「はい…」
(岡本店長)「ぜひ」
(女性)「(きょう)来るかどうかは、ごめんなさい…だけどなるべく来ます」
整理するか、もう少し迷うようです。
引っ越しシーズンは「出張買取」も大忙し
エコリングでは、出張買取もしています。引っ越しシーズンを迎え、忙しさもピークに。鑑定士の渋田啓介さん(27)の買い取りに密着させてもらいました。
(鑑定士 渋田啓介さん)「3月と4月は出張買取が一番多い時期と言われていまして、いつも1日4、5件、多い日は6件行きます」
渋田さんが訪れたのは、暖かくなってきた季節がモノを整理したくなったきっかけだという女性の家。モノが廊下にあふれていました。整理したい気持ちもあふれます。
(依頼した女性)「洋服の好みが変わってしまって、靴もヒールがあるものはあまり履かなくなって、捨てちゃうのがもったいないので、少しでもお値段がつくのならと思って(依頼した)」
さっそく査定に取り掛かります。
(渋田さん)「買い取りになると、こちらが5万5000円」
(女性)「びっくりしました」
驚きが顔にあふれます。いきなり高値がついたのは、旅先のイタリアで購入したGUCCIのバッグ。
(記者)「思い出の品ですか?」
(女性)「そうですね。その割にはあまり使わなかったので」
学生時代にブランドに興味を持ち、頑張ってお金を貯めて買ったという品々。人気の靴や時計が続々と出てきます。さらに…
(渋田さん)「これ指輪ですか?おー、プラチナ…?」
(女性)「(プラチナ)と思います」
母から譲り受けたという指輪。大切なものではありますが…
(女性)「もう自分が使うこともないので。貴金属の値段が上がっているから」
ここで渋田さんは、カバンから何かを取り出します。
(鑑定士 渋田啓介さん)「ダイヤモンドチェッカーです。これを品物に当てるだけで、ダイヤかダイヤじゃないかを判別できるんです。・・・あ、出た。ダイヤですね。ダイヤが出てきました」
思わず渋田さんにも笑みがこぼれるほど、立派なダイヤがついていました。気になる買い取り価格は…
(渋田さん)「ダイヤモンドが7万円のお買い取り金額です」
(女性)「はい」
他にも洋服や雑貨などを合わせて、買い取り合計額は19万4000円となりました。
(女性)「こんな金額になると思わなかったので、本当にうれしいです」
金色の小さな粒と三角の破片 鑑定士が調べてみると…
福岡出身の渋田さんは、転勤で去年1月、関西に来たといいます。
(鑑定士 渋田啓介さん)「(Q関西っぽいなと思ったお客さんは?)やっぱり、アメをくれるおばちゃんとか。買い取り金額をお渡しして、荷物を台車に置いて帰ろうとしたときに、『アメちゃん~』みたいな感じで渡されて」
関西人の温かさにも触れた渋田さんが続いて向かった先は、母と娘と孫の三世代で引っ越してきたばかりだというお宅。実は、引っ越し前にも出張買取を利用しましたが、まだまだモノが出てきたため、再び渋田さんに出張を依頼しました。
(依頼者)「こっちの段ボール箱に入っていたのは娘の分で、こっちのは母。私は引っ越し前にほとんど(買い取ってもらった)」
洋服やテレホンカードなど、整理したいものが山積みです。査定が進む中、お母さんがおもむろに部屋の奥に。持ってきたのは、小さながまぐち。中にはさらに小さな袋が入っていました。
(依頼者)「こんなんが出てきたんやけど、何かわかれへん」
(渋田さん)「ちょっとお調べしてよろしいですか?」
出てきたのは、金色の小さな粒と三角の破片。
(鑑定士 渋田啓介さん)「メッキアクセサリーとかって磁石の反応があって、磁石にくっつくんですよ。金だと磁石の反応がないので、(これは)やっぱり金です」
(鑑定士 渋田啓介さん)「(Qこれは何ですか)“金歯”です」
(依頼者)「(Qお母さんがつけていた金歯?)そうだと思うんです」
お母さんの金歯は、1000円の買値が付きました。一方、三角の破片は、50~60年前にお母さんが歯医者で働いていたころに使っていた金歯の材料かもしれないそうです。
(渋田さん)「これ(三角の破片)は、純金です」
(依頼者)「純金!?」
(渋田さん)「金の純度100%です。これだけで買い取りになると2万円くらいです」
(依頼者)「おお~、2万円(笑)。すごい」
忘れられていた“金”が、“お金”に変わりました。最終的に出た買い取り合計価格は、2万9700円。
(依頼者)「引っ越しってめちゃくちゃお金かかるから、ちょっとでもお金になったほうがいいかな」
踏ん切りがついた?芦屋のマダムが再び来店
再び、芦屋の店舗。岡本店長は、あのマダムのことが気になり、そわそわ…。その時、やってきました。あのマダムです。数時間前、金のネックレスの価格を相談に来ていたマダムが、気持ちを整理して再び店を訪れました。
(岡本店長)「ありがとうございます」
(女性)「正直に来ました」
岡本店長も一安心です。女性が持ってきたのは、高級ジュエリーブランドであるヴァンクリーフの金のネックレス。ポイントに3点ダイヤの蝶々があしらわれています。20年ほど前に200万円以上で夫に買ってもらったものだそうです。
(岡本店長)「こちらのお値段が、66万円です」
(女性)「はい、思い切ります」
(岡本店長)「よろしいですか?ありがとうございます」
踏ん切りがついたようです。
(来店客)「主人が好きだったんですよね。だから買ってくれたんでしょうね。(着けて)行くところ限られてきますでしょう。もったいないし、お金もほしいし」
この日一番の高額商品に、岡本店長も緊張の面持ちです。最後には、女性も満足そうな笑顔に。
使われなくなったモノにも、お客さんにも、新しい春が訪れそうです。