近畿大学で4月6日、入学式が行われました。実は、この大学の理事長を務めるのが、世耕弘成氏。先日、裏金問題で自民党から処分された参院議員です。6日の入学式では祝辞を述べていました。少子化の中でもここ数年、躍進を続ける近畿大学ですが、「問題を起こした政治家がトップでいいのか」という声も上がっています。
OBつんく♂氏プロデュースの入学式 登壇した理事長・世耕弘成氏は裏金問題に言及せず
4月6日、盛大に行われた近畿大学の入学式。OBの人気お笑い芸人らもサプライズで登場。OBのつんく♂さんが総合プロデュースを担当し、8840人の新入生にエールを送りました。
(つんく♂さん)「きょう僕が皆さんに伝えたいことはたった一つ、それは『夢はでっかいほどいい!』ということ。ぜひでっかいでっかい夢を抱いて、自分を信じて突き進んでください」
今年の一般入試志願者数は約14万7000人と、11年連続で国内最多となった近畿大学。そんな近畿大学を今揺るがしているのが、理事長を務める世耕弘成前参院幹事長の裏金問題です。
先週、自民党からの離党勧告を受けて離党した世耕氏。そんな世耕氏に対して近畿大学の教職員ら有志が、理事長辞任を求めて署名活動を行っていて、すでに4万筆を超えています。
こうした最中に行われた6日の入学式では理事長として登壇。新入生たちを前に、変化する社会の中での自己成長について述べました。
(近畿大学 世耕弘成理事長)「変化の激しい社会における自分の立ち位置をしっかりと把握してもらって、立派な社会人として4年後、6年後、2年後に近畿大学を巣立っていただきたい」
裏金問題についての言及はありませんでしたが、新入生や保護者たちはどのように受け止めたのでしょうか。
(新入生)「(裏金問題について)中では何もなかったですね。ん?とは思いましたね。リコール要求は正当だと思います」
(新入生)「一度悪いことがあっても(出直して)また改めてやってくれたらと思います」
(保護者)「子どもに賛成です」
理事長辞任を求める署名活動を行う教職員有志の一人は、世耕氏について次のように話します。
(近畿大学・文芸学部 藤巻和宏教授)「大学や附属学校や病院を含む学校法人近畿大学全体のトップですから、ものすごく影響力はあります。ほとんど神様のような、ただの理事長、ただの大学トップというより、もう批判などもってのほか、世耕先生と呼んでください、というような雰囲気はあります」
近畿大学の歴史を振り返ると、世耕家との切っても切れない関係がありました。
世耕氏の祖父が創設した近畿大学 その歩みとは
6日の入学式でつんく♂さんのギター演奏のもと会場一体となって歌われた近畿大学の校歌。この校歌を作詞したのが世耕弘一氏。近畿大学の創設者であり、世耕弘成参院議員の祖父にあたる人物です。
明治26年(1893年)、和歌山県の熊野古道沿いの村に生まれた弘一氏は、貧しさから進学をあきらめ、丁稚(でっち)奉公に出るも、大正7年(1918年)に25歳で日本大学予科に入学。大学卒業後は学問の道へと進みますが、当時は世界恐慌で日本も失業者があふれる深刻な不況。その様子を目の当たりにして「国民を飢えさせてはいけない」と政治家に転身。昭和7年(1932年)、衆議院議員に初当選しました。
その一方で、貧しさで進学の夢を断たれた経験から「学びたい者に学ばせたい」と大学創設にも情熱を傾け、昭和24年(1949年)に近畿大学を創設。初代理事長となります。
2代目理事長には弘一氏の長男で同じく政治家だった世耕政隆氏が就任。その後も現在の弘成理事長まで理事長職はほぼ世耕家の世襲で運営され、初代の理想である“医学部から文学部まで全学部をそろえた”総合大学として発展してきました。
そして2014年、志願者数全国1位を達成。いまやお馴染みのショーアップされた入学式や「近大マグロ」などさまざまなPR戦略を行い、現在の近畿大学のイメージを作り上げた仕掛け人も、世耕家のひとり、弘成理事長の弟である世耕石弘氏です。
(世耕石弘氏 2014年)「18歳人口が加速度的に減少していく中で、つまらんことをやっていてもしかたがないので、1回ご破算にして本当の大学間競争を自由化してもらいたい」
近畿大学を関西が誇る有数の大学に盛り立ててきた世耕家。理事長である弘成氏の大学への影響力は絶大なものがあるといいます。
辞任求める声「学校法人においても『自分は責任ない、現場の責任だ』と言うんじゃないか」
そんな理事長が政治家として起こした裏金問題。弘成氏は政治的責任をとり自民党を離党しましたが、理事長を続投する意向を示しています。
(世耕弘成氏)「(Q大学の理事長職について今後は?)これは政治活動とは関係ありません。私は政治家としての政治責任を今回とらせていただいております」
しかし、一部の教職員からは辞任を求める声もあがっています。
(近畿大学・文芸学部 藤巻和宏教授)「理事長がこういう人物であることは近畿大学に勤める者としては問題であると思っています。政倫審などでも非常に無責任なことを言っていた。そういう発言をする人が、学校法人においてもトップでありながら『自分は責任ありません、現場の責任です』と言うんじゃないかと。片手間でできる仕事じゃないと思うんですよね、大学の理事長は」