西宮北口駅周辺での客引きが問題になっています。このエリアは元々は閑静な住宅街で、学習塾の数が100を超え塾銀座と呼ばれる文教エリアでもあります。一方、ここ数年で増えているのがガールズバーなどの飲食店。「にしきた」はこの先、今のまま住宅街として街づくりをしていくのか、繁華街として発展していくのか、大きな分岐点に立たされています。

約10年前から客引きが横行 コロナ禍真っ最中も止まらず

 兵庫県西宮市の阪急・西宮北口駅周辺。「にしきた」の愛称で知られ、関西屈指の文教地区としても人気が高い街です。街の人からはこんな声が。

 「(Qどんな街ですか?)便利な街ですね、すごく。阪急西宮ガーデンズもあるでしょ」
 「街の雰囲気は穏やかな方が多いかなと。教育にも力は入れていると思います」

 ただ、近くの商店街では、夜な夜な行われる“客引き”が周辺の人たちの頭を悩ませています。

 (記者リポート)「道の両脇に女性の客引きが増えてきました。歩いている人にチラシを渡そうとしています」

 このエリアでは10年ほど前から、夜になるとガールズバーなど飲食店の客引きが横行しているといいます。

 コロナ禍真っ最中の2021年、記者が商店街を歩くと、1人の女性が声をかけてきました。

 (客引きする人 2021年)「1500円なんですけど他は3000円なんで…。(Q何時までやっている?)朝の5時です。」

 そうしているうちに辺りには何人もの女性が集まっていました。

 こうした客引き行為に対して、商店街ではのぼりを立てるなどして注意喚起を実施してきました。

市民からは「あまりうれしくない」の声 客引きを避けて別の道を通る親子も

 あれから3年。コロナは5類に移行しています。3月29日に取材班が様子を見に行くと、路上には多くの客引きがいました。

 (記者リポート)「客引きの男性が2人の男性を連れて小道に入っていきました」

 夜には授業を終えた子どもたちが客引きの多い商店街を通って家に帰っていくのだといいます。相変わらずの光景に市民はどう思っているのでしょうか。

 (西宮市民)「あまりうれしくないですね。ずっと塾が多いイメージがあったので、急に飲み屋が増えて」

 近くの塾に子どもを通わせる保護者も…。

 (保護者)「できれば客引きを避けて通りたいということで、きょうもわざわざこっちから帰る。(Q条例で制限できるならしてほしい?)そうですね」
 (子ども)「(Q客引きに気付いていた?)はい。飲み屋さんに客を入れたくて…」

 一方で、こんな意見も聞かれました。

 (西宮市民)「『塾銀座』と言われていて、帰りは塾帰りのお子さんでにぎわう。(Q戸惑っている親御さんもいるがどう思う?)こういう世界もあるんやなと小さいときから見ている方がいいかなと。大人ってこういう仕事をしているんだなと、子どものときに知っている方がいいかなと思います」

 さまざまな意見がある客引き行為。兵庫県は2015年に客引き防止に関する条例を設けていますが、罰則がある「禁止地区」になっているのは神戸・三宮の一部エリアのみです。そのため商店街の会長も対応に頭を悩ませてきました。

 (にしきた商店街 矢田貝充彦会長)「この街をすごくいい感じにやってきて、にしきたでも一番住みやすい街ということでやってきて。今は風紀がやはりふさわしくないというか」

 去年のハロウィーンにはこんな客引きもいたといいます。

 (にしきた商店街 矢田貝充彦会長)「ほとんど裸みたいな格好で、客引き3人くらいがワイワイ騒いでいました。外で客引きだけはしないでと。SNSで勝手に探してもらうとか、そういう商売の仕方に変えていただければ何の苦労もない」

「客引き行為禁止地区に指定ほしい」市長が知事に要望

 そうした中、4月2日、状況を打開しようと西宮市の石井登志郎市長が行動に出ました。にしきた商店街の周辺と、JR甲子園口の南側地域の市内2つのエリアについて、住宅地が近く小学生が歩く場所でもあることから、客引きは風紀を乱しているなどとして、罰則が伴う客引き行為禁止地区に指定するよう県に要望しました。

 これに、斎藤元彦知事は…。

 (兵庫県 斎藤元彦知事)「県と市でいろんな調整とか状況は聞いていましたので、基本的には(禁止地区に)指定をさせていただく方向かなと。ゴールデンウィークも多くの人出がある時期ですから、そこに向けて最終的な調整をしていきたいと思っています」

 西宮北口駅周辺に静かな夜は訪れるのでしょうか。