和歌山県串本町にある日本初の民間ロケット発射場「スペースポート紀伊」。いよいよ3月9日、ここで全長18mの小型ロケット「カイロス」の打ち上げが行われます。“本州最南端のまち”から宇宙産業による“ロケット最先端のまち”へと大きく動きだす串本町。地元は盛り上がりを見せています。
土産物も特急くろしおも“ロケット”仕様に!期待高まる地元
和歌山県串本町が誘致して実現した日本初の民間ロケット発射場「スペースポート紀伊」。まさにここが打ち上げの場所です。南に遮るものはなく“ロケット発射に適している”と、宇宙関連の新興企業「スペースワン」が開設しました。
今回打ち上げられるのは、全長18mの小型ロケット「カイロス」初号機。政府の小型衛星を載せます。度重なる延期で、実は当初予定から2年遅れでのチャレンジですが、成功すれば、発射場自体が新たな観光資源になる可能性も秘めています。県は観光や発射場運営による経済効果が10年間で670億円にのぼると試算。当然、期待は高まります。
(串本町 田嶋勝正町長)「待ちに待ちました。このロケットは地元の子どもたちに、将来を担う子どもたちに大きな影響を与えるロケットではないかと」
(地元の人)「見ます必ず。家の真ん前で場所が一等地なので、これを逃したらもったいないでしょう」
(地元の人)「こんな田舎でロケットを打ち上げるなんて思いもしなかった。町の活性化になったらいいんじゃないですかね」
町では着々と準備が進められています。道の駅の土産店に入ってすぐの場所には、カイロスが描かれたマグカップにコースター、クッキーにサイダーまで、約20のロケットグッズがずらりと並びます。
さらに、新大阪と和歌山方面を結ぶJR西日本の特急くろしおも「ロケットカイロス号」仕様にラッピングです。
4年かけて開発したロケット饅頭「串本はロケットの町だと知ってほしい」
創業131年の老舗和菓子店「串本儀平」で去年の秋に販売を始めたのは『ロケット饅頭 そらのかけはし』(1個税込み380円)。
(串本儀平 丸山正雄さん)「カイロスが白い機体だったのでホワイトチョコでコーティングしました」
チョコレート味の饅頭を焼いて、カイロスに見立てホワイトチョコレートで覆います。棒を刺して噴射をイメージ。開発に4年もかけた力作です。
パッケージにもひと工夫。ふたを開けると箱が広がり、宇宙が広がるように表現しました。
(串本儀平 丸山正雄さん)「串本町にたくさんのロケットに関係したお土産がありますが、持って帰ってもらって話題にしてもらって、串本は『ロケットの町なんだ』とみんなに知ってほしいと思います」
黒い麺で宇宙を表現!?ロケットにちなんだメニューを考案した高校生たち
地元の生徒たちも盛り上げに一役買っています。町内唯一の高校である串本古座高校ではロケットにちなんだメニューの考案に取り組んできました。打ち上げ当日、イベント会場で出店することになったからです。
【話し合う生徒たち】
「見に来た人が買っていくなら、やっぱり見た目で判断するやん。彩りほしいやん?」
「味もほしい」
食べやすさを重視して、提供するのは汁気のない「カレーまぜそば」に決まりました。麺は和歌山・紀州の備長炭を練り込んだ黒い麺を、あえて選びました。
(生徒)「見た目を考えた時に宇宙っぽく見えるかなというのが1番の理由です」
来場者の目にとまるように、ロケット型のニンジンや高校で育てたサツマイモなど、黒い麺に映える色とりどりの野菜をトッピング。当日は1杯1000円、300食限定で販売の予定です。
(生徒)「すごく彩りもよかったし、結構おいしい」
(生徒)「(延期続きだったので)私が高校生の間には打ち上がらないんじゃないかと若干諦めていた部分はあったのですが、食べてくださる方においしいと言っていただけたらいいなと」
今後はホテル屋上での見学イベントが“集客の目玉”に!?
期待を寄せる声は宿泊施設からも。雄大な太平洋をのぞむ露天風呂が売りの町内のホテル「大江戸温泉物語 南紀串本」。発射場から約12kmという立地もあり、打ち上げの前日は満室だといいます。
宿泊客に喜んでもらおうとこんな企画も。
(藤本裕貴支配人)「当日は希望者に集まっていただいて、みんなで観覧したいと思っています」
周辺に高いビルなどがないため、当日、ホテルの屋上からはロケットが見えるようで、100人限定の見学イベントも行う予定です。今後、打ち上げが継続的に行われれば、ホテル集客の目玉になるかもしれません。
(藤本裕貴支配人)「串本町はなかなか認知されていなかったと思うんですけど、これで全国の方に串本町をわかっていただけたらと思います。観光業にとってイベントはうれしいものですので、今後の発展に期待しています」
知る人ぞ知る“ロケットが見える穴場”とは!?
3月9日は町が設置した2つの会場で見学が可能ですが、前売チケットはわずか2日で完売。それでも見たい人も多いはず、ということで地元の人に知る人ぞ知る穴場を教えてもらいました。やってきたのは大小いくつもの岩がそそり立つ海岸。町のシンボル「橋杭岩」の岩と岩の間からロケットが打ちあがる様子が見えるはずだといいます。
(南紀串本観光協会 宇井晋介事務局長)「いろんな要因があって延びて延びてになっていたのでね、ここにきて打ち上がるのは楽しみですね」
地域活性の起爆剤となるのか。町の期待を乗せてロケット「カイロス」が打ち上げられます。