京都大学「吉田寮」の明け渡しを求めて、大学が学生たちを訴えた裁判。京都地裁は2月16日、京大側の主張を一部退けました。

 16日午後3時すぎ、吉田寮をめぐって京都地裁が言い渡した判決は「寮生側の一部勝訴」。寮に住む一部の学生について、住み続けることを認めました。

 (寮生側)「私たちとしては、この判決をもとに大学に改めて話し合いを求めていく方針でございます」

学生による運営が受け継がれてきた“自治寮”

 1913年に建築された京都大学の吉田寮。日本最古の学生寮とされ、ここに住む学生たち自身の話し合いで運営されてきた“自治寮”です。築111年の「現棟」と、9年前に建てられた「新棟」からなり、定員は計約240人。寮費は光熱費込みでひと月約2500円です。

 吉田寮は大学が提供する福利厚生施設であるだけでなく、食堂などでの学生同士の交流を重んじる共同体の拠り所でもあります。

 (吉田寮に住む学生)「吉田寮は『敬語非推奨』みたいな話がありまして。18歳で入りたての子と、院生で30歳を超えた人とかが、タメ口で議論したりするのはいいことかなと思います」

 寮の運営方針をめぐっては創設当初から自治会と大学の間で話し合いが行われてきましたが、大学側は2017年、建物の一部が老朽化し耐震性に問題が生じているとして、全ての寮生の退去と新規入寮募集の停止を要求。代わりの宿舎を提供するとしたものの、一部の寮生は「代わりの宿舎では真に代替的とは言えない」として退去を拒み、話し合いの再開を求めました。ところが、大学側が「要求に応じなかった学生たちが寮を不法占拠している」などとして退去を求め、現棟に住む学生たちを訴えたのです。

 (京都大学 川添信介副学長 2019年当時)「安全性の確保のために、この手段が望ましいと判断したということになります」

 これまでの裁判で寮生側は「受け継がれてきた寮自治という『営み』そのものを守るべきだ」と主張。一方、大学側は「代わりの宿舎を提供するため、大学周辺への居住は可能」として退去を求めていました。

「寮生らは自治会による自主運営に大きな意味を見いだして入寮」

 そして迎えた2月16日。判決を見届けようと、傍聴券を求めて200人以上が集まりました。注目が集まる中、京都地裁が言い渡した判決は、“一部学生を除き立ち退きを求めない”というものでした。

 判決文によりますと、「寮生らは自治会による自主運営に大きな意味を見いだして入寮しており、代わりの宿舎を提供するからといって、目的が達成されたとは言えない」などとして、2017年12月までに入寮している学生については立ち退きを求めないとする判決を言い渡しました。

 判決を受け、被告となった寮生は次のようにコメントしました。

 (被告となった寮生)「大事なのは『勝つ負ける』ということより、安心してお金のない学生が楽しく住める場所があると良いなと思うので、それに向けて大学とこれからしっかりやり取りができればと」

 寮生らは、主張が認められなかった一部学生がいることから、控訴を検討するとしています。