道の駅や直売所で売られている「漬物」。地元の農家さんらが手作りしている物も多く、『家庭の味を感じられる』などの理由で人気商品となっています。しかし、この手作りの漬物が法改正で減っていくかもしれません。

 2000年に和歌山県紀の川市にオープンした「JA紀の里ファーマーズマーケットめっけもん広場」。全国でもトップクラスの売り上げを誇る人気の直売所です。
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 なかでも目をひくのが地元の農家さんが作る漬物。たくあん漬けに、この季節ならではの菜の花漬けなど、約15種類の漬物が並びます。

 (購入者)「白菜の漬物、きゅうりのぬか漬けはよく買います」
 (購入者)「なんかやっぱり家庭の味を感じてほっこりする」
 (購入者)「人によって味がちょっとずつ違うんで、ごはんが進みます」

 日本の食卓には欠かせない漬物。しかし近い将来、この漬物を作る人が減ってしまうかもしれないのです。
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 農業を営む田邨良子さん(76)。畑で丹精込めて作った野菜を漬物にして道の駅や直売所で販売しています。販売歴は23年になる大ベテランです。

 (田邨良子さん)「(作っている漬物は)ナス、キュウリ、ダイコン、ハクサイ、ウリ」

 田邨さんが作るおいしい漬物もやはり販売の危機に直面していました。

 (田邨良子さん)「えー大変やなと思ったよ。(でも)食の安全やん、しょっちゅう食の安全よ」
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 2012年8月、北海道札幌市などで発生した腸管出血性大腸菌「O157」による食中毒事件で8人が亡くなりました。原因となったのは白菜の浅漬け。この事件などをきっかけに食品衛生法が改正され、これまで届出制だった漬物の製造販売が、今年6月以降は許可制になったのです。
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 田邨さんは去年12月に製造販売許可を取得しましたが、許可をもらうためには様々な条件があるといいます。

 例えば冷蔵庫に温度表記があること。野菜を洗うシンクと野菜以外を洗うシンクを分けること。そして蛇口は肘でも動かせるレバー式でなくてはならないこと。
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 田邨さんは法改正前からこうした設備を整えていましたが、1か所追加の設備を求められました。それが…

 (田邨良子さん)「トイレに行った後に、一旦トイレから屋外に出て、(屋外に)出たところに洗う場所を作ってほしいと」

 水道の設置代に約15万円。小さな農家にとっては大きな痛手でしたが…
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 (田邨良子さん)「やめないでと言ってくれるお客さんもいてるしね。おいしいって言ってもらうのが一番やっぱりうれしいやんか」
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 一方で、田邨さんの漬物も扱うこの直売所では、約15人の生産者が漬物を販売していますが、半数以上はまだ許可を取得していないといいます。

 (JA紀の里ファーマーズマーケット 山田秀樹店長)「このだれだれさんのこのカブはおいしいとか(ファンが)ついている。それがなくなるのは寂しい。でもやっぱり食の安全を考えると、口にするものですから、きちっとして保健所の許可をとったものしか出せないというのは仕方がない」