143日間に及ぶ裁判でした。36人が死亡した京都アニメーション放火殺人事件から4年半。1月25日、京都地裁は青葉真司被告(45)に死刑判決を言い渡しました。

 厳重な警備体制が敷かれ物々しい空気が漂った1月25日朝の京都地裁。雪が降る中、約400人が傍聴券を求めて列を作りました(※抽選席数は23席)。

 予定から30分ずれこみ、午前11時からの判決言い渡しは「主文」が後回しにされて始まりました。この日を迎えるまで、約4年半の月日が流れていました。

 2019年7月18日。京都市伏見区の京都アニメーション第一スタジオが放火され、社員36人が死亡、32人が重軽傷を負いました。消防によりますと、出火の60秒後には300℃までに達するガスが充満したといいます。

 自身も全身の9割以上にやけどを負った青葉被告。度重なる手術により、一命を取り留めました。

 【2019年8月に撮影された動画より】
 (主治医)「5回手術している。あと少なくとも4回は手術をします。わかった?頑張れる?」

 そして去年9月5日、143日間に及ぶ裁判が始まりました。裁判で争われたのは、青葉被告が抱いた「妄想」が犯行にどう影響したのか。つまり刑事責任能力の有無や程度でした。

 責任能力の有無について、精神鑑定をした医師の意見が分かれます。その中で裁判では検察側が、青葉被告が犯行直前にスタジオの前で13分間座り込み逡巡していたと当時の状況を明らかにしました。その理由について青葉被告はこのように述べました。

 (青葉被告 去年9月14日)「ためらった。自分みたいな悪党でも良心がないわけではないというか、良心の呵責を抱えたままいくと、そういう部分はある」

 また別の日には後悔の言葉も。

 (青葉被告 去年11月27日)「恨みがあったとはいえ、ガソリンをまいて火をつけたことはあまりにも浅はかだった。ほかに方法はなかったのかと、後悔が残った」

 そして、去年12月6日の被告人質問では、初めて謝罪の言葉を口にしました。

 (検察)「法廷で『家族全員の心が死んだ』など、言葉を絞り出した方々への感情は?」
 (青葉被告)「それはやはり、申し訳ありませんでしたという形にしかなりえない」

 検察側は「妄想の影響は限定的で完全責任能力があった」として死刑を求刑。一方、弁護側は「犯行当時、善悪を判断して行動を制御する能力が失われた心神喪失の状態だった」として無罪、または心神耗弱で刑の減軽を求めました。

 そして迎えた判決の日。遺族の一人が、裁判所に向かいます。

 (寺脇(池田)晶子さんの夫 1月25日午前)「本当にこれで晶子は満足なのかなって思うようになった」

 寺脇(池田)晶子さん(当時44)。「響け!ユーフォニアム」でキャラクターデザインを担当するなど有名作品を数多く手がけていましたが、突然、未来を奪われました。

 (寺脇(池田)晶子さんの夫)「晶子にとって一番やっぱり心配なのは子どものことだろうし、判決というのはひとつの中間報告でしかないのかなって」

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 裁判所はどんな判断を示すのか。判決で京都地裁は「犯行当時、被告人は心神喪失でも心神耗弱の状態でもなかった」として、被告の責任能力を認めました。そして「36人もの尊い命が奪われたことは、あまりにも重大で悲惨だ。一瞬にして地獄と化した京アニの第1スタジオで非業の死を遂げた被害者らの恐怖や苦痛は計り知れず、筆舌に尽くしがたい」などと述べ、青葉被告に対して死刑を言い渡しました。