叡山電車には約280本のもみじの木に囲まれた「もみじのトンネル」といわれる紅葉の名所があります。この電車でもみじのトンネルを目指す人を定点観測しました。

夫は分単位の計画表を作成 妻「しんどくなるのは私じゃなくて…」

 叡山電車の玄関口である出町柳駅、午前9時、ホームに展望列車「きらら」が入ってきました。景色がよく見える大きな窓ガラスと窓側に向いたシートが特徴です。
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 窓側の良い席に座った夫婦。

 (妻)「いろんな季節に京都に来ています」
 (夫)「桜のときとか祇園祭のときとか」

 遅いといわれる今年の見ごろ、色づき具合がどうしても気になります。

 (夫)「赤くないと思うわ」
 (妻)「だってだってほら、全然ね」
 (夫)「いつももっと赤い、山が」
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 電車はトンネルの手前の市原駅を出発。いよいよもみじのトンネルに入ります。

 (妻)「あっ、ここきれい」

 約280本のもみじに囲まれたトンネル。市原駅とその次の二ノ瀬駅、ひと駅の間、250mの絶景です。見ごろの時期には徐行運転でゆっくりと楽しむことができます。
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 あわただしく席を立つ夫婦。トンネルを過ぎた次の駅で電車を降ります。反対のホームに行き、来た電車に乗って、すぐに折り返します。こんなに急いでいたのにはワケがありました。
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 旦那さんが作成したスケジュール表には、この日一日の予定が分単位で書かれています。

 (妻)「(Q毎回、旦那さんが予定を立てる?)はい。私はついていきながら、途中で軌道修正したり。しんどくなるのは私じゃなくてこっち(夫)だからね笑」
 (夫)「足腰が…」

 最後まで計画通りにいくと良いですね。

「電車にとりあえず乗ろうと思って」沿線にある大学の学生

 午前10時40分。個性的な服を着た男性を見つけたので、声をかけてみました。
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 「(Q撮ってもいいですか?)ばっちし撮ってください。かっちょいい靴。ここ(ヒール部分)が鉄というか、メタルブーツというやつです」
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 沿線にある大学に通う1年生。もみじのトンネルには行ったことがないようで…。

 「(Qこの電車は特別なものだが?)そうなんですか、全然知らなかったです。電車にとりあえず乗ろうと思って乗ったんですよ。こんなに人が見に来るなら気になりますね」

受験祈願で東京から関西に 電車好きの小学6年生

 午後2時30分。車掌の案内を一生懸命聞く、小学6年生の男の子がいました。

 (小学6年生)「(Qどこから来た?)きのう東京から来て。受験の祈願に北野天満宮に来た」

 無事に祈願を終えて東京に帰ろうとしていましたが…。

 (小学6年生)「もみじのトンネルをお母さんが見つけたから、そこを通ろうという話になって」
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 (母親)「電車がすごく好きだから、電車で行けるところを私が探したんですけど、元々は本人が電車が好きだから来たんです」
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 中学受験が始まる1月の頭まであと少し。京都での鉄道旅行は良い気晴らしになったでしょうか。

 (小学6年生)「ちょっと紅葉してる…」

ニューヨークから来た人「日本の電車は車窓がすばらしい」関西弁も勉強中!

 午後3時30分。車窓から見える空には大きな虹がかかっていました。
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 ニューヨークから来たというマイケルさんとラミさんが日本語で話しかけてくれました。

 (マイケルさん)「ちょっと日本語話せます。ちょっと」

 日本に来るのは3回目、東京・京都で2週間過ごします。

 (マイケルさん)「(Qきららを知っていた?)インスタグラムで見て知っていた。日本の電車はどれも車窓がすばらしい。新幹線では富士山を、きららではもみじを楽しみたい」
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 マイケルさんはホテル関連の仕事をしているため、旅先で様々なことを吸収して、それを仕事にも生かしているそうで、関西弁も勉強中です。

 (マイケルさん)「関西弁、すばらしいですね。めっちゃ、めちゃめちゃ、おおきに。関西弁はとてもフレンドリーな感じ。『おもてなし』の精神を感じます」

カメラ初心者の2人 おニューのカメラで撮った紅葉は?

 午後4時40分、いよいよライトアップの時間です。光に照らされたもみじが昼とは違った表情を見せます。
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 午後4時55分。ライトアップをカメラで捉えようと準備する2人に出会いました。

 「おニューなんで素人なんです。買いました。大学の同級生です」
 「同じ部屋、同じ研究室で」
 「18歳から知っているということです」

 新しいカメラで初めて撮る夜の風景。緊張の瞬間です。

 (車掌のアナウンス)「まもなくもみじのトンネルを通過いたします。それでは車内灯を消灯いたします。車窓からの景色をご覧ください」
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 【トンネル通過中の2人の会話】
 「きたきたきた」
 「さぁどうかなー」
 「わー、これは速いなー」
 「めっちゃ速いんじゃない?」

 (車掌のアナウンス)「それでは車内灯を点灯いたします」

 「もう終わった?」
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 初めてのライトアップ、うまく撮影できましたか?
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 「まだまだ練習が必要ですね」
 「ここ何回も乗らないといけない。100回くらい乗ったら笑」
 「いや、それは…笑」

第3子が生まれる前に紅葉を…「いい誕生日になりました」

 午後7時55分。

 (子ども)「こんばんは」
 (母親)「(Qどちらから?)京都です。きょう誕生日で見に来ました。(Qどなたの?)私です。はははは」

 5歳と3歳の兄弟は2人とも乗り物が大好き。この電車に乗るのを楽しみにしていたそうです。

 (母親)「第3子を妊娠中で。つわりでなかなかお出かけができなかったので、生まれる前に紅葉を、何か見に行きたいと思って。想像以上でした。きれいでした。いい誕生日になりました」

「おばあちゃんへのサプライズ」で一緒に列車へ

 午後8時40分。取材最後に出会ったのは孫とおばあちゃんの2人組。

 (孫)「学校が京都なんですけど、SNSでこの電車を見かけて、一緒に来たいなと思って」
 (祖母)「誘われてんな」
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 2人だけでよく旅行に行くほどの仲だといいます。この時期だけの特別な景色を2人一緒に楽しみます。

 (孫)「お、きた」
 (祖母)「うわ、近い」
 (孫)「すごいな。上も見えるのがいい」

 実はこの日、おばあちゃんを驚かせたくて、紅葉を見に行くことは内緒にして会う約束をしていたんだそうです。

 (祖母)「楽しかった」
 (孫)「(Qサプライズは?)成功です」
 (祖母)「最後まで言わなかったもんね」

 人それぞれの思いも乗せて走る展望列車。紅葉のライトアップは11月26日(日)まで楽しめます。