和歌山県の串本町と那智勝浦町を結び、去年9月に工事が完了した「八郎山トンネル」で天井のコンクリートに空洞が存在し、厚さが不足していたなど施工不良が見つかった問題で、専門家による「技術検討委員会」は安全性を確認するため、トンネル内ほぼすべてのコンクリートを取り壊す方針を決めました。

発覚のきっかけは「照明の設置工事で穴をあけたら」

 発覚のきっかけは、トンネル工事の終了後に、行われた照明の設置工事でした。当時作業員が設置をしようと、アンカー用の穴をあけたところ、コンクリートを貫通して内部に空洞があることがわかったということです。

 本来の設計なら、コンクリートの厚さは30センチ必要なのに、最も薄いところで、わずか1/10の「3センチ」しかなかったということです。

県によると「業者は、書類の書き換えを認める」

 和歌山県によりますと、請負業者は完成後、「覆工コンクリートの厚さは設計以上に確保されていた」という内容の書類を提出したということですが、県の聞き取りに対して、「検査で薄いことは把握していた」と回答したといい、書類を設計値以上に書き換えたことを認めたということです。

 県は「業者が適切な対応を怠り、厚さが不足するような粗雑な工事を行った」と指摘し、2業者に対し、6か月の入札参加資格停止の措置をとっていました。

検討委「ほぼすべてのコンクリートはがす必要」と指摘

 県は今回の問題が発覚後、専門家による「技術検討委員会」を設置しました。今年9月から議論が行われていましたが、11月10日に行われた第2回の会議では県の調査で側壁のコンクリート壁の厚さが30センチ以上必要にもかかわらず、6センチしかない部分があったことが確認されたほか、トンネル内で6か所のコンクリートをはがし調べたところ、H型鋼が設計位置からずれていたこともわかったということです。

 コンクリートを上塗りした場合は、法律で定められたトンネル断面の車が通る空間が維持されない可能性があるということです。

 検討委員会では「施工時の測量がずさんで、ミスに気付いているのに修正せず、もとに戻していない」「ほぼすべてのコンクリート壁をはがして、安全性の確認が必要」となどの指摘が上がったということです。

費用は請負業者に負担させる方針

 県は工事を請け負った業者と協議し、費用は負担させる方針としています。

 現場は、串本町と那智勝浦町の町境をつなぐ県道のトンネルで長さ711m。地震などの災害時には、海沿いの国道42号の迂回道路として、重要な意味合いを持つ県道として、整備中で、トンネルは今年12月に供用予定でした。