日本シリーズ59年ぶりの関西ダービーに盛り上がる大阪。第2戦が行われた10月29日、野球好きが集まる「ベースボール居酒屋まこっちゃん」を取材しました。応援しているチームは問わず野球好きなら誰でも歓迎!だということですが、店主は個人的には阪神タイガースファン。店に集まったファンたちが熱狂した一夜を定点観測しました。

大阪・北新地の「野球ファンが集まるお店」

 10月29日(日)午後4時、日曜日の北新地は多くの店が休業日です。
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 しかし、ドアの取っ手がバットというお店「ベースボール居酒屋まこっちゃん」は開店準備の真っただ中でした。
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 店主は飲食業界歴35年という竹田誠さん(60)。

 (電話する竹田さん)「きょう満席なんですよ。はい、申し訳ないです。またお願いいたします」

 (竹田誠さん)「ほぼ満席ですね。ですから申し訳ないですけども、お断りするお客さまが今までなかったくらい多くいらっしゃいますね」
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 店内はまるで野球の博物館のよう。阪神タイガースを中心にサインボールなどファン垂涎のグッズが所狭しと並べられています。

 (竹田誠さん)「やっぱりこういうお店をやっていて、普通の飲食店と違って同じ趣味というか共通の太いものがあるので、すぐ友達同士にお隣さんがなるんですよ。野球ファンが集まる店ならではだと思っています」
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 竹田さんは元々野球が大好きで、13年前に自ら店舗を構える時に、当時まだ少なかった野球ファンが集まるお店を作ろうと選んだ場所が北新地でした。

 (竹田誠さん)「個人的にはあまり飲みに来ないような場所だったんですけれども。(13年間で)本当の常連のお客さまになっていただいた方もたくさんいますから、そういう方に支えられて今があると思っています」

店主は児童養護施設の子どもたちを阪神戦に招待も

 野球ファンならば誰でも大歓迎ですが、竹田さんの好きなチームは阪神タイガース。自分と同じ名前だった阪神1軍打撃コーチの今岡真訪さん(49)の大ファンで、「妻と仲良くなったのも同じ今岡ファンだったから」。阪神タイガースの存在は竹田さんの生き方に大きな影響を与えたといいます。
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 (竹田誠さん)「自分の好きなタイガースを通じてなんか社会貢献したいなとずっと妻と一緒に思っていたんですよ。子どもたちを毎年甲子園に招待するとかもしているんですよ。一緒に応援するっていう」
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 甲子園で試合観戦する楽しさを伝えたいという気持ちで2008年から始めたのが、児童養護施設の子どもたちを阪神戦に招待すること。

 (竹田誠さん)「2008年に最初に招待したときの子どもが、今年の7月ですかね、彼が『就職が決まりました』とここに挨拶しに来て。『いつもいつも本当にうれしかったんです』っていうのを子どもたちの代表みたいな感じで僕に伝えてくれて、その時にめちゃくちゃうれしかったですね。ものだけじゃなくて夢を与えるっていうか、やっぱりプロ野球選手ってすごいなと思いますね」

“タイガースの聖地”への移転決意…北新地の店は閉店へ

 そんな竹田さんが営む「まこっちゃん」ですが、11月5日に一度閉店して、場所を甲子園に移して再スタートすることを今年始めに決めていました。

 (竹田誠さん)「今年還暦にもなりましたし、自分の人生を最後謳歌したいなと思って、タイガースの聖地・甲子園でやろうかなと思って移転の決意に至りました」
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 そんな決意の年に大好きな阪神タイガースが18年ぶりのリーグ優勝。日本シリーズに進出したことについては。

 (竹田誠さん)「この時期にこんなに盛り上がるということは13年間なかったものですから。俺のためにこうなったんか!って言いたいくらいうれしいというか、ビックリしているんですけどね」

この日の客は全員阪神ファン!金本知憲元監督の“そっくりさん”も

 この日の試合開始は午後6時半。ですが午後5時半の開店と同時に、阪神の金本知憲元監督にそっくりな13年来の常連客が来店。

 (スタッフ)「いらっしゃいませ」
 (常連客)「まだ試合始まってないの?」
 (スタッフ)「まだです、まだです笑」
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 それをきっかけに、あっという間に予約のお客さんで満席。この日はお客さん全員が阪神ファン!

 (阪神ファンの夫婦)「阪神ファンになって70年。もう小さい時から」
 (阪神ファンの夫婦)「静かに見るよりはにぎやかな方がいいね」
 (夫婦の娘さん)「(Q親子で楽しめるものがあるのはいい?)そうですね、同じ趣味があるので円満です」

 (13年来の常連客)「盛り上がりが違いますよ、この店は。どっちが勝ってもええかな。オリックスも阪神もどっちも大阪やから。どっち勝ってもええかなって感じですね、ほんまに」

「大丈夫大丈夫!」温かい応援にあふれる店内

 午後6時半、プレーボール。
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 この店では竹田さんの手料理も評判です。この日は飲み放題とセットにした特別メニューを事前に仕込み、自分で試合を見られる時間を作ろうとした竹田さん。しかし試合が進むにつれ、どんどん入る注文に大忙しです。
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 ただ、試合が気になりすぎて…料理よりもテレビにくぎ付けです。

 試合はオリックスが4点を取り阪神には厳しい展開に。

 (客)「大丈夫大丈夫!」
 (客)「逆転するぞ、バモス!」
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 しかし店内のファンは実に前向き。
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 竹田さんはあくまで「みんなで野球を楽しむお店」にしたいと、店内でのヤジを禁止していて、試合経過に関係なく選手への温かいエールが続きます。

「宇田川めっちゃいいんよ!」オリックスのプレーにも盛り上がり

 午後7時半、人影もまばらな日曜の北新地の夜に、毎回恒例という5回終わりの竹田さんの乾杯音頭が響きます。

 (竹田さん)「勝利を願って」
 (全員)「カンパーイ!」

 一息ついた竹田さんもすっかり観戦モードに。しかし…オリックスの追加点にがっくり。
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 ただそこは野球好きの集まる店。オリックスのプレーでも盛り上がります。

 「宇田川めっちゃいいんよ!」
 「阪神来ないかなぁ」
 「宇田川、阪神に欲しいな」
 「阪神来てくれへんかなぁ…すぐ言う!」

「また来たい」「この一体感!」オリックスが快勝でも…客たちは笑顔

 午後9時20分。9回表、阪神最後の攻撃も終えて試合終了。日本シリーズ第2戦は8対0でオリックスの快勝となりました。

 (客たち)「あああ~…」
 (竹田さん)「(がっくりとうなだれる)」

 (来店2回目の客)「第1戦と第2戦と足して割ったらちょうどいいでしょう、きっとね」
 (来店2回目の客)「(Q日本シリーズをまたここで応援したい?)もちろん!もちろんです!予約が取れたら」

 今回が初来店の人たちも。

 「(Q日本シリーズをまたここで応援したい?)めっちゃ来たいね!」
 「絶対来たいです」
 「めちゃくちゃ喜んでるから。来てよかったって言うてますから!」
 「この一体感!」
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 帰って行くお客さんの顔には笑顔。この笑顔が見たくてお店を続けてきたと竹田さんは話します。
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 (竹田誠さん)「勝っても負けても本当に楽しめるというか、やっぱりこの今の時期に野球を見られるっていうのは本当に幸せですから。この店の最後になるので、思いっきり自分も楽しみたいと思っています」

 13年間の最後まで店主もお客さんも野球を楽しみつくす気満々です!