来年3月に福井県の敦賀まで延伸することになった北陸新幹線。これにより、現在は大阪と金沢をつないでいる特急「サンダーバード」が敦賀止まりに。そのため、大阪から金沢へ行くには乗り換えが必要となります。延伸で盛り上がる地域がある一方、複雑な思いを抱える人たちもいるようです。

“悲願”の新幹線開通!延伸を前に試験走行スタート

 金沢から敦賀までの延伸を前に試験走行がスタートした北陸新幹線。10月1日、青にゴールドのラインがまぶしい「W7系」の車両が真新しいホームにやってきました。
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 (福井県 杉本達治知事)「いよいよW7系が福井・敦賀までやってきた。先人の皆さんがこれまで一生懸命培って進めてきていただいたプロジェクトがようやく実を結んできたというところで、私もうれしく思っております」
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 福井県にとっては悲願の新幹線開通。その姿を一目見ようと福井市内のスポットには約500人が集結しました。
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 (子ども)「新幹線があんなに近くで見られるの、すごいよ。すっげえよ。あれすっげえでかかった」

 (90代)「あらあらって言っている間に通り過ぎた」
 (90代)「屋根が見えただけで…」
 (90代)「こんな新幹線なんてねえ、夢の夢やったんですけど、長生きしたおかげでまさか巡り合うとは思いませんでした」

ウリの『恐竜』をアピール!福井のあちこちで開発進む

 福井市内を歩いてみると再開発の真っただ中。まさに“新幹線特需”で商業施設やホテルなどの開発が急ピッチで進んでいます。福井駅では…。
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 (記者リポート)「福井駅の駅前広場には3体の巨大な恐竜たちが元気に動き回っています」

 日本最大の恐竜化石発掘現場を持つ「恐竜王国」をアピールする絶好のチャンス!とばかりに、“巨大な恐竜”たちがお出迎えです。

 “関西の奥座敷”として親しまれている芦原温泉。創業60年の老舗のホテル「グランディア芳泉」は、新幹線の開通を見越して今年の春、大幅にリニューアルしました。
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 (グランディア芳泉 山口高澄常務取締役)「元々、2次会場のホールでした。だだっ広いホールを、グレードを上げるためにちょっと改装させていただきました」

 宴会場は個人が楽しめるレストランに。
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 さらに客室も恐竜ルームをつくり福井らしさを盛り込むなど、関西からだけでなく首都圏からの観光客にも期待を寄せます。

 (グランディア芳泉 山口高澄常務取締役)「(関東の客は)いいものはやっぱり欲しいという方が多い傾向もございますから、単価も上がってくるんですよね。それに応えるべく、お部屋もサービスもお食事どころもすべてをバージョンアップして、お出迎えしたいと思っております」

 新幹線で盛り上がる福井。関西とは特急「サンダーバード」で2時間弱というアクセスの良さもあり、かねてから縁が深いエリアです。しかし、実はこの新幹線の開通でちょっとその状況が変わってしまうかもしれないのです。

『大阪→金沢』が乗り換え必要に…「不便」「残念」の声も

 いま大阪から北陸までは特急1本で行けますが、来年3月からは敦賀まで新幹線が来るため特急は敦賀止まりに。福井に行こうと思えば、敦賀からのわずかな距離をわざわざ新幹線に乗り換えなくてはならない上、料金は1150円高くなる見込み。時間的には、アクセスにもよりますが3分早く着くだけだといいます。今よりも手間もお金も余分にかかってしまう事態に。街の人からはこんな声が聞かれました。

 「ちょっと不便になるかもしれないです」
 「1本で行けなくなるのはとっても不便だなって思います」
 「それはちょっと痛いですね。お金がかかってしまうのは少し残念だと思います」

関西から北陸に来てもらうには?苦心する旅行業界

 こうした交通アクセスの変化を受けて対応を迫られる業界も。旅行業界です。サンダーバードを使ったツアーを10種類ほど展開しているという会社では、新幹線の延伸以降、関西からの旅行客をどう北陸に呼び込むか頭を悩ませています。

 【会議の様子】
 「お客様の動向が非常に変わってくると思います。関西からのお客さまは敦賀で乗り換えもしないといけないですし、しっかり各発地から誘客していただきたい」
 「敦賀は乗り換え駅なので、そのあたりで使えるアイテムとかがあったらいいなと」
 「乗り換えだけする駅になってほしくなくて、やっぱり敦賀で降りて、なんか見られたりとか体験できたりとかしてその先にまた進んでいく、というのも旅の1つの楽しみ方だと思うので」

 敦賀乗り換えが避けられないなら、いっそのことそれをプラスの要素に変えられないかと知恵を絞ります。
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 さらに特急では金沢が終着駅でしたが、新幹線になると少し先の富山まで足をのばすのもさほど負担ではなくなります。

 【会議の様子】
 「敦賀から富山までが今度は直行になるので、最短で行けるというか、今まで時間かかっていたのが少し早く行けるっていうのは関西のお客さんにとってはすごくメリットになると思うので、そういう打ち出し方、富山のエリアをあつくするとか」
 「富山の観光素材、オプション見ていただいたらわかる通りすごく少ないので、ここはちょっと開発しないといけない」

 乗り換え地となる「敦賀市」、関西からあまり注目されてこなかった「富山県」を新たな観光地として売り出し、ピンチをチャンスに!と意気込みます。しかし、まだまだ課題は山積みのようです。

福井県からの入学者が多い京都の大学も懸念

 影響を懸念するのはほかにも。京都の太秦にキャンパスを構える京都先端科学大学。機械電気工学の技術などを学ぼうと、この4年間(2020~2023年)で福井県からも約40人が入学しました。交通アクセスのよさから関西圏の大学にとって福井県は有利なマーケットでしたが、今後は首都圏の大学の存在も意識せざるを得ないといいます。
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 (京都先端科学大学・入学センター 友田宏之部長)「大きな目で見たときには、やはり北陸の学生さんにとって、選択肢が広がるという意味では、いろんなところに行ける可能性が広がると思います。首都圏の大学にとっては大きなチャンスではありますので。京都に住みたい、京都の大学で4年間を過ごしてみたいという思いは、より大きく持っていただかないといけないので我々の努力が必要だと思います。そこをしっかりとした営業活動をやっていくというところでカバーしていきたいと思っています」

JR西日本社長の“関西と北陸”への考えは?

 ゆくゆくは大阪まで延伸する計画の北陸新幹線ですが、それも20年以上先の話。“特急で1本”ではなくなる関西と北陸の距離感をどう埋めるべきか…。JR西日本の長谷川一明社長は9月28日、次のように考えを述べました。

 (JR西日本 長谷川一明社長)「なるべくご負担感のないよう、企画切符だとか様々な割引策、そういったものを講じながら、いろいろと観光プロモーションとか、より関西と北陸の結びつきが強くなるように相互に取り組んでいければというふうに思っております」

 延伸に沸き立つ北陸と懸念を隠せない関西。今後どのように変化していくのか注目です。