お客さんの8割は小学生!地元の子どもたちに愛されるたこやき店。そこにはなんと「チケットを使えば小学生~高校生はたこやき無料」という制度があります。なぜこのお店をオープンしたのか?高校教師をしながらお店を営んでいる店主の思いに迫りました。
連日多くの人でにぎわう大阪府高槻市のたこやき店。
(子ども)「みんな、たこやき焼けたって~」
(店主)「ソースもマヨも全部かけてよかったよな?」
(子ども)「うん」
「うまっ!」
「めっちゃおいしい」
「(Qみんなよく来るの?)ほぼ毎日来る」
実はこのお店にやって来る約8割が小学生。一体なぜ、子どもたちに大人気なのか。そこには驚くべき理由がありました。
子どもたちの下校時間に合わせてオープン 営業時間は3時間
オープン準備は少し遅めの午後3時から。たこやき店を営む川人佑太さん(36)は、お店に到着すると早速、仕込み作業を行います。お店をオープンしたのは2年半前。年々なくなりつつある“子どもたちが集まれる場所”を作ってあげたいという思いがきっかけでした。
(川人佑太さん)「(Qオープンは何時から?)午後3時半からですね。午後6時半ぐらいまでですかね」
営業時間はたったの3時間。子どもの下校時間に合わせています。具はたこと天かすのシンプルスタイル。お店のオープン時間に合わせて焼き上げます。
「たこやき」も「たこせん」も100円!
午後3時半、営業スタート。早速、お店に子どもたちがやってきました。
「こんにちは~。カメラマン?」
「誰?テレビ?テレビ?」
(川人さん)「何食べるの?」
(子ども)「たこスープ」
(子ども)「たこせん」
ソース・塩・しょうゆなど味の選べる「たこやき」や人気の「たこせん」に加え、出汁にたこやきを入れた「たこスープ」など値段は全て税込み100円。「100円たこやき」として地元に愛されているお店です。
お店の2階はフリースペースとなっていて店内で食べることもできます。
「学校帰って遊んでよくここで集合している」
「うん、そうそうそう」
中には、学校の宿題をしにやってくる子も。
「算数と国語」
「とんでもないミス」
「とんでもないミスですね。何で19になったの?」
わからない問題はみんなで協力。
「たこやき冷めちゃうで」
「チケット」を使えば小学生~高校生はたこやき無料!?
常に子どもたちでにぎわう店内。実は、ほかにはない驚きのサービスがあります。
(子ども)「5人分とっておくな」
(川人さん)「はいはい」
やってきた子は、店に置いてある何やらチケットのようなものをとりはじめました。
(川人佑太さん)「たこやきチケットというのがあって、これを使ったら小学生から高校生までの子が無料でたこやきが食べられるという制度です」
店内に置かれたチケットを使うと、なんと高校生まではたこやき(4個)が無料!
(川人佑太さん)「私がボランティアでやってるというわけではなくて、大人の方がこのチケットを買ってくれて、それを子どもたちが使って食べているので、僕が身銭を切ってやっているわけではないです」
その仕組みはというと…「note」というWEBサイトでお店のサポーターを募集。月額100円から誰でも参加することができ、その売り上げがたこやきチケットに。そのチケットを使い子どもたちは無料で食べることができるんです。
(川人佑太さん)「かつて子どもたちが集まるような場所、人が集まるような場所ってあったと思うんですね。でもそれって平成の30年間で消えたような感じがするんです。人間関係が地域にほしいと思ったらそれを生み出すしかないじゃないですか」
こうした思いに賛同したサポーターは現在、約270人集まりました。
(たこせんを食べる子ども)「めっちゃ熱い!」
「安い、おいしい」大人にも好評
午後4時40分。
(川人さん)「こんにちは」
(客)「8個。200円やな」
(川人さん)「味付けどうしましょう?」
(客)「全部つけて」
そもそもたこやきは4つで100円。その安さから地元の大人たちにも好評です。
(客)「安い、おいしい。それだけの理由。…毎日放送、ヒマやな!」
店主のもう1つの顔は「通信制高校の教師」
毎日約200個のたこやきを焼き上げる川人さんには、実はもう1つの顔があります。お店のオープン前は学校の教壇に立ち数学を教えています。通信制の高校で働く教師でもあるんです。
(授業する川人さん)「1・3・9・27。これはどういうつながりがある?」
生徒からはこんな声も。
(生徒)「数学自体は好きってわけでもないんですけど、先生の数学がおもしろい」
(川人さん)「これ何?英検?」
(生徒)「英検。準一級やって。答えどっち?」
(川人さん)「4、4、4!これ絶対4!」
(生徒)「4や!ハハハハ」
教師として働き始めて10年。その気さくな人柄で多くの生徒から親しまれているようです。
(川人佑太さん)「たこやき店では生活を十分にできるお金はまだ足りていないですが、もちろん伸びしろはあります。不安というよりは、学校の先生をやっている収入がありますので、それが生活の最低限のところを保障してくれている」
午後5時半、お店には先生でもある川人さんに相談にやってくる子がいました。
「客でずっと来ていて、だんだん相談相手みたいに。何を相談してもアンサーがくるから、なんでなんやろうなって最初は思っていた。よく来るというか、第二の家みたいな感じです。たこやき食べに来るとかじゃなくて、普通に先生に話に来る」
「心地よい形は作れている」子どもの声があふれるお店に
「地域の子どもたちの居場所を作ってあげたい」。そんな思いで始めたお店が、今では多くの子どもたちが集まる場所となっています。
「おいし~ビタミンC~」
(ホワイトボードに)『むりょうで、うま!』
「食リポ、食リポ」
「だしのうま味がしっかりと引き立っていて、青のりも引き立っていてとってもおいしいと思います」
「私たこが苦手なんですけど、たこがめちゃくちゃ小さいから食べやすいというのがあります」
「その理由知ってる」
「理由は高いから!」
「たこが高いから、その方がお得なの!」
(川人佑太さん)「アニメとかマンガとかでよく見るじゃないですか、子どもらが集まってやっているようなこぢんまりしたお店って。いまの状態ってすごくそれに近いというか、わりと心地よい形は作れている。みなさんのおかげで子どもたちにたこやきを無料で提供できていますね」
午後6時50分、この日の営業が終了しました。