『鴨川デルタ』でのひと夏の出会いと別れ。京都市内を流れる賀茂川と高野川が交わる場所にある鴨川デルタをMBSのカメラマンが1か月間取材しました。写真を撮り続ける人、音楽を楽しむ人…。この夏を鴨川デルタで過ごした人々の物語です。
高校2年生の夏休みの始まり「来年は勉強漬けだから…」
水には人を集める力があります。2つの水の流れが交わり、さらに多くの人を集めます。取材初日に出会ったのは夏休みに入ったばかりの2人の高校生でした。
「オープンキャンパスに行っていてその帰りに」
「暑かったから。みんな入っているから入ろうかと」
「夏祭りもプールも行きたいと話していて。(Q行けそう?)どうだろう…」
「高校2年生やから行けるの最後かなって。(Q最後って?)来年になったら勉強漬けやから…」
「最後の夏休みだねみたいな」
「短い旅みたいなもの」鴨川デルタで写真を撮り続ける人
鴨川デルタにカメラを向けるフォトグラファーの女性がいます。
(フォトグラファー)「できるだけ毎日、時間ちょっと5分とか10分でもあれば、ここのデルタの写真を撮ったりしています」
鴨川デルタ人を訪れた人たちの写真を撮ります。
(フォトグラファー)「おもしろ。(鳥を)一緒に連れてきたんですね」
(横浜から来た人)「連れてきました」
(フォトグラファー)「るりちゃんと一緒にデルタ来たんですね。どちらから来たんですか?」
(横浜から来た人)「横浜からです」
(フォトグラファー)「横浜から?えっ?」
(横浜から来た人)「鳥さんは家に置いていけないので。干からびちゃうからこの季節」
女性が鴨川デルタに来る理由は?
(フォトグラファー)「少し自分の日常から離れられるというのが自分にとって必要な時間なんじゃないかなと思うんです。ちょっと短い旅みたいなものなんですけど」
鴨川デルタを愛して「勢力図」を描いた人も 図に書かれた光景が実際に
他にも鴨川デルタを愛するこんなクリエーターの女性に出会いました。
(クリエーター)「鴨川デルタの『勢力図』です。どこにどんな人がいるのか、分布図みたいな感じで描かせてもらいました」
今年6月、「鴨川デルタ勢力図」という地図がネット上でにわかに注目を集めました。真ん中には“大学生”や“音楽の民”。右側には“水遊びキッズ”など子どもの遊び場があり、左側には“カップル”が並びます。
(クリエーター)「“キッズが作るダム”というのがあるんですけど、今ちょうどめちゃめちゃ作っています。なんでかはわからないんですけどみんなここでダムを作りたがります」
(ダムを作る子ども)
「石、平べったい石持ってきた」
「やばいやばい、水もれ水もれ」
さらに、図に描かれた通り、橋の下にはラクロスの練習に励む光景があります。
(クリエーター)「鴨川デルタの用途はそれぞれ自由ですよね。楽器を練習しにきたりとか、ラクロスを練習しにきたり、ただ寝そべりにきただけの方とか、水遊びしにきた方とか、それぞれ自由な理由でここに来て、それぞれその場所で楽しんでいるのがデルタの良いところなのかなと思います」
鴨川デルタへの愛情は人それぞれの形があります。
(川の水に浸かる人)「So Cooool!超気持ちいい!」
集うのは自由に自分の時間を楽しんでいる人たち。岐阜から来た邦楽部の大学生、SNSで呼びかけたイベントに集まった人、踊る同志社大学よさこいサークル、ポールダンサーの宴…。川はそれぞれの時間を受け止めてくれます。
台風7号が直撃した8月15日。
(川を撮影する男性)「これだけ水が増えている鴨川を見るのは初めてなので驚いています。(取材班:お気をつけください)気をつけて帰ります。ありがとうございます」
「部室はない」鴨川デルタで活動する音楽サークル
ギターを弾いているのは同志社大学で音楽サークルに所属する学生です。
「(Qいつもここで歌っている?)そうですね。基本的にはサークルの活動自体、鴨川でやっているので、ここで。(Q部室ではなく?)部室ではなくて、ここでやっている。ここでやるのがメイン。(Q部室は?)部室はない」
「ないですね、多分。ないです」
小・中・高と一緒だった2人 別れを前に花火
ある夜、花火を楽しむ2人の女子大学生と出会いました。
「小学校が一緒で」
「7歳のときからずっと一緒で」
「そこから中学・高校も一緒で、同じ女子校でね」
「クラスとかもけっこう離れていることが多かったんですけど、なんかずっとつながっているなという感じがあって」
この夏の花火は2人にとって特別なものです。
「これから彼女はアメリカ留学が決まっていて。海外行ってもどこ行っていても本当につながっていると私は思っているから、また会ったときはいつものようにお話できれば良いなと思うし。どこへ行っても自分らしく頑張れると思うから、ずっと応援しています。応援してるよ!」
「ありがとう!頑張ります。なんかうれしい。良い夏です。ありがとうございます」
石を積む人「ちょっと変な奴でも受け入れてくれる」
午前6時、誰にも邪魔されない時間です。デルタの石に魅せられて7年。積まれた石のアートは毎週のように姿を見せます。
(ロックバランシング・アーティスト)「この石って世界に1個しかない石、この石も世界に1個しかない石。もう毎日が新鮮なんですよ。この鴨川デルタが好きという方が集まっているので、職業も年齢も性別も違いますけども、何か1つ共通点があるので、ちょっと変な奴でも受け入れてくれるというか」
大雨が降った8月24日。時に通り雨はデルタの新たな顔を見せてくれます。雨の降り方の違いが一目でわかるのも2本の川が交わるデルタならではの光景です。
結婚式で披露する映像を撮る2人
取材の最終日。夕日をバックに記念撮影でしょうか。何やら慌ただしい動きをする2人がいました。
「結婚式の最初に皆さんを期待させるような、これから始まりますよみたいな映像を、京都ならではの場所で撮った」
2人は10月に控えた結婚式で披露する映像を撮影しにデルタを訪れたそうです。
「(Qなぜ鴨川デルタで?)ここが川の分岐点みたいなところなんで、なんかゴールっぽいかなと思いました」
「(取材班:お幸せに)ありがとうございます」
行く川の流れが出会う場所、鴨川デルタ。移ろいゆく人々の営みを静かに見守ります。