南海電鉄が今年5月、あるイベントを初めて開催しました。それは、南海の「めでたいでんしゃ」と、いま人気の「キャンプ」をかけあわせた、その名も『車庫キャンプ』です。その全貌や狙いはいかに?

「電車×キャンプ」南海電鉄が初の挑戦!

 5月23日、何やら重そうな荷物を乗せてカートを運ぶ人の姿がありました。南海電鉄・鉄道事業本部の佐々木亮さん(45)です。向かった先は、和歌山市駅構内にある鉄道車庫。何をしに来たのかというと…。
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 (南海電鉄・鉄道事業本部 佐々木亮さん)
 「まさにこの場でお客様にキャンプをしてもらうという準備をしに来たところです。目の前に電車の見える場所で」

 名付けて「キャンプin和歌山市車庫」。普段は関係者しか入れない車両基地でキャンプができるという鉄道ファンにはたまらないイベントで、本番を前に準備に来ていました。車庫には雑草や石がごろごろ。これではテントが張れないと、ひとつずつ丁寧に取り除いていきます。

 (南海電鉄・鉄道事業本部 佐々木亮さん)
 「思っていたより重労働で…。なかなかでも、まだめちゃめちゃありますよねこれ」
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 テントを張ってロケーションもしっかり確認。初のイベントなだけに準備は入念に行います。

 (南海電鉄・鉄道事業本部 佐々木亮さん)
 「ホンマに不安でしかない。解散のタイミングで無事でけがもなく終われば、それが一番次につながるかなと思うんで。そのうえでちょっとでも心に残るものになれば」

寝所はもちろん電車内…寝心地は『めちゃめちゃ落ち着く』

 5月27日、迎えたイベント当日。朝、車庫では最終作業に追われる佐々木さんらの姿がありました。主役でもある「めでたいでんしゃ」の「かしら」に向かいます。
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 車内で、2両分の床をひたすら雑巾がけ。というのも、外にもテントは張れますが、寝袋で車中泊できることもイベントの売りだからです。実際に寝心地も確かめます。

 (南海電鉄・鉄道事業本部 佐々木亮さん)
 「そんなに圧迫感は感じない。もっと椅子とか邪魔するんかなと思ったんですけど、そうでもない」
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 せっかくなので記者も“車内での寝袋”を体験。

 (記者リポート)
 「おぉ、電車の天井ってこうなっていたんだってなりますね。めちゃめちゃ落ち着く」

 (南海電鉄・鉄道事業本部 佐々木亮さん)
 「子どもにとってはすごく冒険船みたいになっていて、お宝とかも散りばめられていて、電車の中で遊べる電車。いろいろ探りながらやっていきたいなと思っているところです」

「電車好き」も「キャンプ好き」も楽しめるイベントが盛りだくさん!

 午前10時半、開場と同時にさっそくお客さんが到着しました。初回ということで、参加者は2家族限定です。神戸からやってきた4人家族の長男・垣内景琥くん(7)は大の電車好きだそう。
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 (景琥くん)「サザンプレミアムや!南海なんば行きか?南海なんば行きだ」

 目の前の電車にくぎ付け。表情から興奮が伝わってきます。

 (景琥くん)「13時14分発がこのどっちかやと思う。(Q詳しいね?)マップで全部調べてきた、来る前に」
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 もう一家族は奈良から。電車好きということでもなく、異空間でのキャンプに惹かれたそうです。

 (奈良からの参加者)
 「車庫でキャンプができるなんて。しかも電車でも寝られるって聞いてテンション上がっちゃって。めでたいでんしゃの『かしら』っていうのを見たことなくて、乗ったこともないんですけど、その前に“寝ちゃう”っていう飛び越えた感じがおもしろい」
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 車内でのイベントも盛りだくさん。扉ではなく特別に運転席から車内へ。初めて乗るめでたいでんしゃに子どもたちのテンションも上がりっぱなしです。
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 さらに、制服を着せてもらい車内アナウンスに挑戦。すっかり気分は運転士さんです。
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 さらにさらに、めでたいでんしゃや路線にまつわるゲームも実施。みんなの楽しそうな様子に佐々木さんも一安心です。

 (南海電鉄・鉄道事業本部 佐々木亮さん)
 「みんなと一緒に一体になって楽しむっていう。それがやっぱり南海電鉄のブランドになるというか。『スタッフさんがあんなことやってくれたなぁ』とか、そういうのが今後につながっていく。ファンを作るために大事かなと思って」

夜の醍醐味は「電車を眺めながら食べるキャンプ飯」

 午後7時、すっかり日も暮れ、夜ごはんの時間。おいしそうな香りが立ち込めます。そこへ…。

 (景琥くん)「あ、見て!めでたいでんしゃ!」
 (お母さん)「めっちゃ近い、めっちゃ近い!」

 電車が車庫に入っていきます。これぞ車庫の醍醐味。自然の中のキャンプとは一味違った体験です。
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 一方、ランタンの明かりに包まれながら優雅に食事をする奈良からのご家族。ゆったりとした時間を過ごします。
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 お腹いっぱい、そろそろ就寝の時間です。寝る場所はやっぱり電車の中。贅沢に一車両貸し切りです。さっそく布団をひろげますが、子どもたちは車内を走り回ってやりたい放題。みんなまだまだ遊び足りないようです。そして、午後10時。車内に響いていた発電機の音が小さくなってきました。消灯の合図です。真っ暗になった車内、1日目終了です。
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 そのころ、佐々木さんらはというと…。

 (南海電鉄・鉄道事業本部 佐々木亮さん)
 「トイレ行きたい方もいると思うんで、その対応で起きときます」

 誘導係もかねて徹夜で過ごします。

試行錯誤の車庫キャンプ…佐々木さん『少しでもファンになってくれたら』

 午前5時、一番に目覚めたのは電車が大好きな景琥くん。家族はまだ寝ています。お目当ては、やはり電車。始発を見逃すまいと、朝の5時半からスタンバイです。

 みんな、続々と電車から降りてきました。

 (景琥くんのお母さん)
 「(Qよく寝れましたか?)寝れました。意外にいけました、心地よかったです」
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 日常通りに動き出す駅を横目に朝食。こんな景色が見られるのもあと少しですが、皆さん、満足してくれたのでしょうか。

 (景琥くんのお父さん)
 「子どもはめっちゃ喜んでいましたね。(Qお父さんは?)僕も楽しかったですよ。キャンプ好きでも電車好きでもどっちでも楽しいから」
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 (垣内景琥くん)
 「楽しかった。(Q帰るのはさみしい?)さみしい。(Qまた来たい?)うん、来たい」
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 (奈良からの参加者)
 「電車の中で寝たり、人生でできるかできないかの体験をさせてもらった。鉄道ファンではないですが、これで南海に興味を持ったかなって思います」
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 試行錯誤の中で開催された前代未聞の鉄道キャンプ。忘れられない思い出が次なる利用につながればと期待をよせます。

 (南海電鉄・鉄道事業本部 佐々木亮さん)
 「南海にあんまりゆかりのない人たちですけれども、ちょっとでもファンになってくれたらうれしいなという思いで。反省会でもしながら次につなげていきたいなと思います」