京都三大祭の一つ「葵祭」の行列行事が4年ぶりに行われ、上皇ご夫妻が「路頭の儀」を初めてご覧になりました。今回、葵祭の行列を支える人々「八瀬童子」に密着。『天皇家との深いつながり』『葵祭への思い』を取材しました。

 5月14日、京都に到着された上皇ご夫妻。お二人の京都訪問は約4年ぶりのことで、5月15日は皇室とゆかりの深い「大聖寺」を訪問されました。そして5月16日、ご夫妻の姿は京都御所に。葵祭の行列行事「路頭の儀」をご覧になりました。
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 葵祭のヒロイン「斎王代」が「腰輿(およよ)」と呼ばれる輿に乗ってゆっくりと進みます。その行列を支えるのが、約90人の「八瀬童子」たちです。
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 八瀬童子は、比叡山のふもとの集落・八瀬で暮らす約110世帯の人たちです。歴代天皇の供養のため、八瀬童子の人々は毎月念仏を唱えます。八瀬童子と天皇家のつながりは、700年ほど前、室町時代までさかのぼります。室町時代、都を追われた後醍醐天皇の輿を担いで助けた働きが認められたといわれ、以来、御所で天皇の輿を担ぐなどの仕事を担ってきました。
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 八瀬童子会・会長の玉川勝太郎さん(82)。祖父は大正天皇の棺をかつぎ、自身も昭和天皇の葬儀に参列。葵祭にも60年以上参加してきましたが、今回は初めて上皇ご夫妻が観覧される祭。特別な思いがあります。

 (八瀬童子会 玉川勝太郎会長)
 「せっかくお越しになられるので、八瀬童子というものは今も変わらぬ心で、皇居に対する敬愛の精神を持って、歴史を守っているということをお伝えできれば」
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 祭に参加するのは大人だけではありません。八瀬に住む高学年の児童も参加します。

 (葵祭に参加する八瀬の小学6年生たち)
 「ほかの学校ではあんまり出られへんから、すごく珍しいことだから堂々としっかり歩きたい」
 「八瀬にしか出られないので、八瀬に来て良かったと思いました」
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 5月14日、玉川さんら八瀬童子は京都御所へと向かっていました。

 (八瀬童子会 玉川勝太郎会長)
 「上皇さんをお迎えできたらありがたいなと、うれしいですね」

 皇族方の京都行幸啓の際、八瀬童子は出迎えと見送りを欠かしません。長年続く大切な役目です。

 (八瀬童子会 玉川勝太郎会長)
 「今回は特別ですのでね、上皇さんをお迎えして葵祭ができるので。なんとか最高の天気で」
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 そして、5月16日。青空のもと、進む行列の中に八瀬童子たちの姿が。おもに行列を導く「列方」と呼ばれる役を務めます。列全体の歩く速度や間隔を指揮する重要な役目です。御所を出発した行列は下鴨神社を経て、上賀茂神社へ。八瀬童子は今年も無事、役目を果たしました。

 (八瀬童子)
 「僕も小さい時にこの格好をして歩いているんですけど、『あぁこういう時が来たのかな』という感じでうれしい気持ちです」
 「八瀬童子会でこういう大責を仰せつかったことに非常に感謝しています」
 
 (八瀬童子会会長 玉川勝太郎さん)
 「上皇さんがお見えになられてご観覧いただいたということは非常にうれしい思いですね」

 室町時代から受け継がれる山あいの集落・八瀬と皇室のつながり。葵祭の行列それぞれに京都の歴史がつまっています。