京都の商店街で半世紀以上続く鶏肉店。廃業の危機に迫られ、施された「応急措置」が起死回生の策となりました。

 京都・東山区、昔ながらの商店街にある1967年創業の鶏肉専門店「鳥寿」。ここには肉店ならどこにもである“アレ”がありません。

  (記者)「こんにちは!あれ…お母さんこれ、商品ケースにお肉がないんですけど、もう売り切れですか?」
 (従業員)「いや、そんなことないです。このケースに写真が入っている分は何でもあります」

 そう、店の商品ケースに「実物の肉」がないんです。代わりに並んでいるのは値段が書かれた「肉の写真」です。
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 店主は西井正治さん(85)と、明るい人柄で地元の人たちから親しまれる妻の和子さん(83)。
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 厨房にはなぜか和子さんの昔の写真が飾られていました。

 (鳥寿 西井和子さん)
 「(2年前に私が)大腿骨を骨折してな、(コロナで面会ができず)その時に4か月間旦那が私に会えなくなったんや。ほんで旦那が寂しいからこの写真を持ってきて貼ったらしいで笑」
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 商店街きってのおしどり夫婦を去年6月にトラブルが襲います。

 (鳥寿 西井正治さん)
 「1年くらい前に陳列(ケース)は全然冷えないし、壊れてしまったんや」

 約30年間、肉を陳列してきた商品ケースが故障したのです。修理代が約300万円で、後継者もおらず、そのまま店を畳むつもりでした。

 (西井正治さん)
 「頑張ってやってきたんやけどなぁ。この際やめようかなと思っていたら、商店街の事務員さんが『私こんなん作ってあげるわ』って言ってな」
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 同じ商店街の「白川まちづくり会社」の高瀬京子さんがスマートフォンで肉を撮影・編集して店に並べたのです。

 (白川まちづくり会社 高瀬京子さん)
 「絶対、商店街に居てもらわないと困るとみんな思っていると思います。あと鶏肉もめっちゃおいしいんでね」

 すると、注文ごとに切り分けるため廃棄する肉が減り、ケースの電気代が不要となりました。一方、売り上げは故障前と変わらなかったので、逆に利益が上がるなど良いこと尽くしです。お客さんは次のように話します。

 (客)
 「ちょっとびっくりしました。でもいいよね。状態が良いお肉を出してくれるから」
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 西井さん夫婦の今後の目標は?

 (西井正治さん)
 「90歳くらいまでやらしてもらおうかなぁと。故障があってかえって良い方向に向かったなぁ」