400年以上前から続く、湖国三大祭の一つ『長浜曳山まつり』(滋賀県)。「裸参り」や「神輿渡御」などさまざまな行事が催されますが、中でも見どころは「子ども歌舞伎」です。今回披露されたのは、武蔵坊弁慶の悲劇を描いた「弁慶上使の場」。約2か月にわたり歌舞伎に打ち込んだ子どもたちの稽古にも密着しました。

「子ども歌舞伎」に情熱を注いだ小学生たち

 滋賀県で400年以上の歴史を誇る「長浜曳山まつり」。祭り最大の見どころは、曳山の舞台で披露する「子ども歌舞伎」です。

 (子ども歌舞伎を見た人)
 「これだけ演技できるって大したもんや」
 「今年が特に良いように思います」
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 この日に向けて懸命に稽古を重ねてきた子どもたち。千秋楽では感極まり涙する場面も…。4日間行われる長浜曳山まつり。この春、歌舞伎の舞台に情熱を注いだ子どもたちの姿に迫りました。
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 舞台は今年で開町450年の滋賀県長浜市。4月1日、地元の公民館「八幡町会館」にやってきたのは8人の男の子。今年、出番を迎える曳山の1つ「萬歳樓」の子どもたちで、役者として選抜された地元の小学生です。
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 この約2か月前に始まった稽古。春休みに入ってからはほぼ毎日、振付の先生の指導のもと稽古を行っています。

 (振付・岩井紫麻先生)「はい、張るよ!声」
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 今回披露されるのは、源義経の妻を守るためやむをえず娘を犠牲にした武蔵坊弁慶と、娘の母親・おわさの悲劇を描く「弁慶上使の場」。演目時間は40分もあります。
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 この演目は8人の子どもたちによって演じられ、「武蔵坊弁慶」という大役を務めるのが山本歩くん(10)。

 (武蔵坊弁慶役 山本歩くん)
 「小さい頃から曳山が好きで、実際に子ども歌舞伎を見ていたらやりたいなと思って。必ず成功させたい」
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 そして、もう1人の主役「おわさ」という難しい女形を上田新くん(10)が演じます。

 (おわさ役 上田新くん)
 「大事な役目なんで頑張りたいと思います。緊張はしないので、ワクワクします」

1日8時間の稽古…“所作やセリフの言い回し”など叩き込んでいく

 真剣なまなざしで稽古に励む子どもたちですが、いざ休憩時間になると、わんぱくな普通の小学生。みんな同級生ということもあり、とっても仲良しです。

 (おわさ役 上田新くん)
 「いや~楽しい!(Qどういうところが?)みんなと歌舞伎ができるのが楽しい!」
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 休憩中にお昼ご飯のハンバーガーが到着すると、手に取りほおばる子どもたち。朝からの稽古でみんなお腹が空いていたようです。
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 稽古は1日8時間ほど。「若衆」という町内の大人のサポートを受け、お昼ご飯の後も稽古は続きます。

 (若衆)
 「(Q着付けるのも大変ですね?)先生に教わりながらやっています」
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 (岩井先生)「なるべくキレイに見えるように、肩を落とすと色っぽく」

 歌舞伎ならではの所作やセリフの言い回しに苦労する子どもたち。また、お昼ご飯の後ということで眠気が子どもたちを襲う場面も。なかなか上手くいかないことも多く、先生からは…。

 (岩井先生)「マック食べすぎましたって顔をみんなしとったけど。ただ、稽古の時間は全然足りないと思っています。もっともっともっと稽古したい。もっとうまくさせたい。歌舞伎のことだけ考える2か月弱があなたたちの人生にあってもいい。絶対にあってもいい。だから後悔しないような稽古をしたいと思います」

 その後も、朝から夕方まで休みなく稽古に励み、演目をたたき込んでいきます。

祭り当日…大人顔負けの凛々しい姿で舞台の上へ

 そして、迎えた祭り当日の4月14日。早朝から、少し眠そうな子どもたちに化粧が施されていきます。
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 (武蔵坊弁慶役 山本歩くん)
 「(Q化粧したら気持ち変わる?)変わる。きょうは100%出したい」

 (山本くん)「(おわさの化粧をした上田くんを見て)おばさん」
 (上田くん)「失礼やな、おばさんって」
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 華やかな衣装に着替ると、先ほどまでの面影は消えて大人顔負けの凛々しい役者の姿に変身。子どもたちが、曳山の舞台へとあがっていきます。大勢の観客が見守る中、長浜の街を移動。そして、開演。これまで積み重ねてきた稽古の成果を発揮するときです。

 曳山の舞台で子どもたちは熱演。本番でもいつも通り演じることができました。観客からは惜しみない歓声や拍手があがりました。

 (観客)
 「もうめちゃくちゃ上手いね。力の入れ方が違うね」
 「可愛らしいし上手でしたね。声の出し方とか所作とか素敵だなと」

 この日、2回の公演を完璧にやり遂げることができました。

迎えた千秋楽…『みんなとやってきたのが終わってしまうのが悲しい』

 迎えた千秋楽の4月16日。これまで4日間で9回の公演を行ってきた子どもたちにとって、次が最後の舞台です。歌舞伎が始まってもセリフがなかなか出てきません。その様子を見て涙する人の姿も…。
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 (上田新くんの父親)
 「出てきた瞬間から泣いていましたので、その思いをすごく感じて僕もついもらい泣きをしてしまった」
 (上田新くんの母親)
 「男の子ができたらどうしても曳山に上がらせたいという思いがあったので、夢を叶えてくれてありがとうって伝えたい」
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 最後は大きな歓声を受けながら8人の子どもたちによる歌舞伎が幕を閉じました。
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 (おわさ役 上田新くん)
 「みんなとやってきたのが終わってしまうのが悲しいです。みんながいたから楽しくできた祭りだと思います。(Q歌舞伎に点数を付けるとしたら?)もう1万点!」
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 (武蔵坊弁慶役 山本歩くん)
 「終わったって感じです…。楽しかった。(Qもっとみんなと歌舞伎したい?)うん」

 この春、夢中になって取り組んだ「子ども歌舞伎」。この経験は子どもたちにとって一生の宝物となったに違いありません。