気象庁などよりますと、12日から14日にかけて西日本から北日本の広い範囲に黄砂が飛来し、12日午前に、九州や中国地方で黄砂が観測されたということです。近畿地方は12日午後から13日にかけて、飛来する見通しです。黄砂がなぜ春にやってくるのか?黄砂の人体への影響は?気象予報士の広瀬駿さんに解説してもらいました。
黄砂は北米やグリーンランドまで到達したことも
(春になると『黄砂』の話題をよく聞くような気がしますが、そもそも黄砂はどこでできるものなのでしょうか?)
広瀬駿気象予報士
「生まれ故郷は中国大陸の砂漠地帯です。黄砂はその大陸の方から飛んできます。東アジアの砂漠地帯(ゴビ砂漠・タクラマカン砂漠など)から強風により吹き上げられた大量の砂塵が、上空の偏西風に運ばれ、拡散・降下しながら日本の方向へ飛来します。小さな砂粒は遠くまで運ばれて、北米やグリーンランドまで到達したことも報告されています」
なぜ春に黄砂がやって来るの?「冬将軍の力が尽きるから」
(どうして春になると、黄砂が多く飛んでくるのでしょうか?)
「それは、ズバリ『冬将軍の力が尽きるからです』。シベリア大陸方面から冷たい空気がまとまりとなって南に押し寄せてきます。西高東低の気圧配置になると、風が北から吹くので天気が荒れます。黄砂の生まれ故郷である砂漠地帯は、高気圧に覆われると天気が晴れます。
だから、砂が巻き上げられないんです。生まれ故郷は落ち着いているのですが、冬将軍が居座ってるから、穏やかというわけですね。春になって気温が上がると冬将軍が力尽きて、高気圧がいなくなります。なので春は低気圧、高気圧が次々通過していくんですけど、生まれ故郷である砂漠地帯では激しい砂嵐が起きていたんですね。その砂嵐で巻き上げられた砂が上空の強い偏西風にのって低気圧を追いかけるようにして日本の方向に飛んできたというもので、それが黄砂といわれています。低気圧を追いかけて黄砂がやってくるとういうものです」
黄砂の影響は?岩石成分(SiO2)がアレルギー症状を悪化させる作用
黄砂が飛来したことどのような影響がありますか?)
「日本に来るまでに黄砂の濃度は低下するため、自動車や洗濯物の汚れには注意が必要で、やはり健康面への影響にも注意が必要となります。黄砂の岩石成分(SiO2)は、アレルギー症状を悪化させる作用があり、目のかゆみ、結膜炎、鼻水やくしゃみなどを引き起こすことがあることが報告されていて、花粉症の症状が悪化することもあるということです。黄砂の飛来と気管支喘息や気管支炎、肺炎などの呼吸器に関する症状の悪化との関連もあるといわれています。特に児童では、黄砂が飛来した後に、気管支喘息の救急受診や入院が増えることとの関連も報告されているということです。黄砂がどう作用しているか解明はされていませんが、黄砂の飛来と心筋梗塞による入院や発症増加との関連や、脳梗塞との関連なども報告されています」
対策は?マスクなどをして『吸入量を減らす』
(どのような対策が必要でしょうか?)
「まず、外出の機会を減らすということです。黄砂が大規模に来ているときは、不要不急の外出を控えて『吸入量を減らすこと』が大事です。マラソンのような長時間の激しい運動を避けて、健康への影響を減らし、特に呼吸器や循環器に疾患がある方や、子供・高齢者などは、より慎重に行動をしてください。さらにマスク着用を徹底することも必要です。一般用マスクを着用することで、ある程度の吸入予防効果が期待されています。医療用・産業用マスクだと、黄砂やPM2.5などの微粒子の吸入を大幅に減らすともいわれています。また、
窓の開閉や換気は必要最小限にして、空気清浄機を使用することも黄砂の対策となります」
今年は例年より黄砂が飛びやすいかも
今年の2月や3月は全国的に記録的な暖かさでしたが、黄砂の生まれ故郷の中国内陸部・モンゴルでも気温がかなり高く、より乾燥しやすい状態になっています。今年は例年よりも黄砂が飛びやすいかもしれません。