今年は本当に桜の開花・満開が早く、記録的なスピードになっています。そんな中、大阪の春の風物詩「造幣局 桜の通り抜け」が4月7日から開催されます。その桜の通り抜けで「なぜ開催時期が毎年異なるのか?」「新たに見られる桜はどのようにして決めているのか」などの疑問について、気象予報士の前田智宏さんが解説します。

(気象予報士の前田智宏さん)
「開催時期が毎年違うようですが、なぜなんですか?)桜の通り抜けで公開される桜の数は140品種、339本だということです。この通り抜けで一番多く公開されている品種が八重桜の『関山(かんざん)』という品種です。この木が構内に最多の60本あるということで、この『関山』の花が咲く時期と、毎年定められている『今年の花』の見頃に合わせる形で予想を行い、事前に開催時期を決定するということです」

「今年の花」は来場者で人気投票する新スタイル

(気象予報士の前田智宏さん)
「『今年の花』というのが毎年設定されるわけですね?)そうなんです。造幣局の桜に親しんでもらおうということで、毎年、『今年の花』が決められているんですが、これまでは造幣局側が決めていたんですね。今年は新たな取り組みとして前の年の人気投票で『今年の花』を決めようということで、2022年に久しぶりに、コロナ禍で一時中止されていた造幣局の桜の通り抜けが行われ、来場者による人気投票を行い、その結果一番に決まったものを『今年の花』としているんです。今年の花は『松月』という品種です。もともと東京の荒川の堤に咲いていた八重桜ということなんですが、桜の名所と言われている京都の平野神社に咲いている桜『平野撫子』に似ているとも言われています。初めは淡い紅色なんですが、段々と白色に変わっていくということで、色の変化も楽しめるということです。花びら約25枚で一つの花となっているということです」

今年は「伊予熊谷」と「舞姫」を新たに公開

(気象予報士の前田智宏さん)
「それに加えて2023年は新たに公開される品種が二つあります。一つ目は『伊予熊谷』という品種です。これも八重桜で『伊予』という名前がついているとおり、愛媛県の四国中央市で栽培されている八重桜です。匂い桜ということで香りも楽しめるということです。『熊谷』というのは、香りが川の流れに乗って約4km下流の熊谷橋というところまで届くということから、『伊予熊谷』という名前が付けられたということです。そしてもう一つの品種が『舞姫』。こちらの品種は、つぼみの時は濃い紅色なんですが、花は淡い紅色で、花びらが15枚の八重桜ということです。ソメイヨシノなどと同じく、花が全部咲き終わった後に葉が出てくる品種なので、木全体が桜の花で覆われます。鑑賞性が高い品種と言われています。造幣局では新しい品種も楽しんでもらおうということで、構内の養成地で複数品種を栽培していて、いい状態になれば順次、一般公開していくということです」

桜にまつわる天気の言葉も盛りだくさん「花冷え」「花曇り」「桜雲」「桜霞」「桜流し」

(気象予報士の前田智宏さん)
「また、桜にまつわる天気の言葉も合わせて楽しんでいきたいなというふうに思うんですが、とても風情のある言葉がいろいろあるんです。桜にまつわる天気の言葉、結構たくさんあります。まず『催花雨(さいかう)』、これは文字通り、花を催す雨、桜が咲く頃の雨で、開花を促すような雨を催花雨と言います。あと『花冷え』、『花曇り』は聞きなじみがあると思うんですが、花冷えは咲く頃にちょっと冷えるのを、花冷えと言います。『花曇り』は桜の咲く時期の曇りの天気ということです。次に『桜雲(おううん)』『桜霞』、実はこれ、雲や霞のことではなくて、桜が咲いている様子を表している言葉なんですね。桜が群れ咲いていると白い感じが、遠くから見ると雲がかかっているように見えるのが、これが『桜雲』という言葉です。吉野山はシロヤマザクラの名所なんですが、遠目に見るとなんとなく雲っぽく見えますね。花霞も同じように群がって咲く満開の桜が遠目には霞がかかったように白く見えるということです。桜の散り時にも美しい言葉があります。『桜流し』という言葉ですが、雨で桜の花が散ってしまい、水で流れていくような雨のことを言います」