WBC決勝戦で日本がアメリカを3―2で下し、3大会ぶりに世界一を手に入れました。試合が行われたアメリカ・フロリダの「ローンデポ・パーク」で決勝戦を観戦したMBS大吉洋平アナウンサーが試合中や世界一になった瞬間の様子などを語りました。

「USA」コールにかき消される日本の応援…そんな中勝ち抜いた「侍ジャパン」

Q)世界一になった瞬間スタジアムの中はどのような雰囲気でしたか?
「世界一になった瞬間はスタジアムの中はもちろん日本のファンたちの歓声も響き渡っていましたが、一方で必死に応援してきたアメリカ人ファンたちのため息や落胆の声が聞かれました。色々な立場の色々な思いがスタジアムでワーッと広がっている独特な雰囲気がありました」

Q)日本人ファンはスタジアムにどれぐらいいたのでしょうか?
「肌感覚としてスタジアムの中は7割がアメリカを応援している人たちで、日本のファンは3割いるかいないかという割合です。日本のファンは声を振り絞っていました。どうしても『USA』というアメリカファンたちの声にかき消されてしまうんですね。USAコールはすさまじいものがあります。例えば日本が2ストライクのカウントだと、ローンデポ・パーク全体がUSAコールに包まれます。そして指笛が鳴り雄たけびが聞こえてくる。どアウェイトとは言いませんが、かなりアウェイな状況の中で威嚇ともとれる声援が日本人選手に飛んでくるんですね。あの中でバットを握るのはどんな精神状態かと。それをもはね飛ばすぐらい自分のやるべきことに集中しているのだとしたら、侍ジャパンは超人の集まりなんだなと目の前で感じました」

Q)試合はどのタイミングで1番盛り上がったんでしょうか?
「本気のアメリカはこんなに怖いんだと、スタジアムにいて感じました。色々な展開が起きたのは後半だと思います。ダルビッシュ選手が出てきた時にアメリカ人ファンたちに緊張が走ったように見受けられました。メジャーリーグで活躍している選手ですから。ただ、そのあとアメリカがホームランを打ちました、その時にその日1番といっていいぐらいの盛り上がりでした。アメリカは先制点を取りましたが、追加点がずっと取れていませんでした。ライトスタンドに居ましたが、200人ぐらいのブロックで日本人は5-6人でした。アメリカ人ファンのイライラが伝わってきました。始めは声がそろっているんだけどもだんだん声がそろわなくなる。そこで出たホームラン、全員が立ち上がって飛び跳ねて、大丈夫かと思うぐらいスタジアム全体が揺れました。怖くなるくらいの盛り上がりで、あのホームランはスタジアムの空気を全て変えました。スタジアムの蓋が開くんじゃないかというぐらい日本人ファンが圧倒されました」

大谷選手とトラウト選手との対決…まるで「ハリウッド映画」

Q)大谷選手が登場した時はどんな様子でしたでしょうか?
「大谷選手は一メジャーリーガーを超えて大スターだと肌で感じました。大谷翔平という名前がアナウンスされた時はアメリカのファンたちもなぜか拍手であたたかく迎えるんですね、日本のファンのように、他の選手では起きないんですね。拍手をしたり甲高い声で迎え入れる空気があって、この人はアメリカで色々な枠を超えて大スター、この人だけがローンデポ・パークの中を一つにできる選手だというのを感じました。最後の最後、大谷選手が出てくるとなった時は日本人ファンももちろんですが、アメリカ人側もここで大谷かという空気が漂っていました」

Q)大谷選手とチームが同じマイク・トラウト選手が打席に立った時はどんな様子でしたか?
「これはハリウッド映画かと、何だこの展開はと。大谷選手とトラウト選手がそれぞれの国旗を持って出てくる特別な演出がありました。目がウルウルしているファンもいるし、あのシーンを見た時に背筋をぞくぞくするような感覚を味わったんですね。大谷さんとトラウトさん、ハリウッド映画みたいだといいたくなる気持ちがわかりますよね」

Q)最後は空振り三振でしたけど、スタジアムはアメリカのファンにとっては衝撃的な結末という感じだったのでしょうか?
「メキシコ戦の時はメキシコファンたちは最初はがっかりしていましたけど、その後歌って踊ってグッドゲーム、明日頑張れよという空気でした。しかし今日に関してはアメリカ人はもうがっくり、心が折れた。直前までのUSAコールが一瞬にして消えました。私にずっとゲームとかハイタッチをしてくるアメリカ人は1人もいなかったんですが、スタジアムから出てくるまでに相当時間がかかるんですね。その時間の中でみんな心を落ち着けていたのではないでしょうか。スタジアムを完全に出る頃には、日本人ファンとアメリカ人ファンが泣きながらハグしたりハイタッチしたり、日本よくやったよというシーンがいくつもあって、アメリカ人のファンたちもぐっとこらえて、でも素晴らしかったよね、WBCとその思いをみんなで分かち合っているそんな様子でした」