大阪市立中学校の吹奏楽部で、60代の指導員の男性が行っていたという「楽器舐め」や「密着指導」。こうした指導は「不適切」か、それとも「伝統的な指導法」か。去年、情報提供を受けた大阪市教委は、事実関係を調査している。MBSの取材に元吹奏楽部員の女子生徒2人が「指導」の実態を明かした。

元吹奏楽部員Aさん: 「(指導員が)リードを舐めてから『これで吹いてみて』と言われたり、マウスピースを吹くときには唾がつくんですけど、その状態で洗わずに、指で拭かずに返されて、『これで吹いてみて』と言われたり。本当に気持ち悪い状態で、この楽器吹きたくないって思う。私たちの代の吹奏楽部員はほとんどがやられていて、みんなで部活に行きたくないと話していた。」

元吹奏楽部員Bさん: 「気持ち悪い、と思っていたけど、みんなが同じように毎回されていたから当たり前という感じで。同じパート内でそういう話はしたが、上の人に話すことはあまりなかった。入学当初からそうだったから、それが普通なのだと思っていた。」

 当時2人は中学1年生、入部した年の経験です。吹奏楽部で行われていた「指導」について、大阪市教育委員会などによりますと、部活動指導員の60代の男性は2019年、生徒の楽器を自ら吹いて、そのまま洗わずに返却したり、腹部を触ったりする指導を行っていたといい、少なくとも十数人の女子部員らが、同様の行為を受けていたということです。

 身体に触れる「指導」とは・・・。元部員らの話によると、具体的には以下のようなものだといいます。

「二人羽織のような感じ」「バックハグの状態で」

元吹奏楽部員Bさん: 「お腹を触られたりした子もいた。何十人くらいいたかなと思います。私がされたのは、私が息を入れて、先生が楽器を後ろから持って指を動かす、二人羽織みたいな感じで後ろから、それは1回ありました。嫌とは言えなかったので結構きつかったです」

元吹奏楽部員Aさん: 「後ろからバックハグの状態で指使いを教えることも多くあって、本当に指導なのかなと思うことがありました。体を包んで手をかぶせる。その子の手をもって『こう吹くんだよ』と指導することはありました。」

「(――身体が密着するのは、女子も男子も?)いや、それは女子だけだと思います。(――マウスピースは女子も男子も?)はい。おそらく両方が受けていたと思います。」

「教えてもらっている立場なので『やめてください』と言える度胸や勇気がなくて。言ったら怒られるんじゃないかと思って、本当に何もなかったかのように普通に接していました。」

学校は「昔からの伝統的な吹奏楽の指導」と問題視せず

 Aさんらは、顧問の先生に、こうした指導内容を相談していたといいます。大阪市教委によりますと、中学校が把握したのは2020年6月で、校長や教頭が吹奏楽の指導に携わったことのある他校の教員らに一般的な指導法かを確認したところ、「昔からある伝統的な吹奏楽の指導」だとされ、問題視されなかったということです。

 いっぽう市教委には、2022年末に指導の詳しい内容を含めて情報提供があったといい、こうした内容が不適切指導かどうか、聞き取り調査などが進められているということです。当時のことが何年も経って表に出てきたことについて、元部員や親は、このように話しました。

元吹奏楽部員Aさん: 「私たちは現役時代から顧問の先生に言い続けて、顧問の先生も校長先生に相談したりしてくれていたので、今になって報道になるのは、安心はするが、遅いと思います。」

元部員Bさんの母親:「(子どもたちが)顧問の先生に話しに行っていた、というのも、卒業して最近初めて聞いた話だが、相談に行ってるのに何も動きもなく、謝罪というか説明もない。『嫌です』と言った生徒に寄り添ってくれていたらアクションを起こしていたと思うが、これまで一切なかったのは生徒側の気持ちを考えてもらえていなかったのかなと思います」