2月27日、宜野座キャンプを打ち上げた阪神タイガース。今年は3年ぶりに観客の制限を設けなかったこともあり、1か月間で約6万人のファンが訪れるなど、コロナ前と同様の賑わいが戻った。

 グラウンドのすぐ側に店を構える軽食店『パーラーぎのざ』。こちらも実に3年ぶりの通常営業となった。今年で創業20年を迎え、阪神ファンから長年愛される店の営業に、ファンや報道陣、そして阪神タイガースのOBらも連日訪れた。店主の新里玲奈さん(44)は、多くの人との再会にこの上ない嬉しさを感じた。「元気だった?」とお土産を持って足を運んできてくれたファンの姿もあったという。中でも以前から交流のあるOB・能見篤史さんとの再会にはかなりテンション上がったとのこと。

『能見のキモチ(濃味の豚キムチ)』を食べる能見篤史さん

 能見さんとの出会いは10年ほど前。元々野球が詳しくなかったという新里さんは、能見さんが選手時代の自主トレ期間中に店を訪れた際に「去年もこのにいにい(お兄ちゃん)は来ていたな」と思い、「今年も阪神を応援しに来たんですか?」と尋ねたところ「僕は選手です。名前は能見篤史と申します」と自己紹介され、帰って調べたところ「本当に選手だったからびっくりした」という。それからはずっと、いつも店のことを気にかけ、常に謙虚な能見さんのことを応援し続けている。能見さんが現役を引退し再会した今年、店をあげて在籍していたオリックスでの優勝を祝福した。

 「パーラーぎのざ」には阪神の選手の名前にあやかったメニューが多く並ぶ。メニュー名は一緒に店を営んでいる宜野座高校野球部出身の弟・新里吉史(31)さんが考えている。ちなみに、吉史さんは中学時代、陸上大会の砲丸投げで西武・山川穂高選手に勝ったことがあるとのこと。

 そんな吉史さんが考えるメニューには沖縄のおやつ『サーターアンダギー』が縁起をかつぐことから、今年先発に転向する岩貞祐太投手の健闘を祈って名付けた『いわさだアンダギー』や球団スローガンにちなんだ日替わりメニューの『本日のアレ』などファンがワクワクするメニューばかり。また、『能見のキモチ(濃味の豚キムチ)』や『鳥谷丼(鶏の照り焼き丼)』など引退した現役選手のメニューも健在。『能見のキモチ』を久しぶりに食べた能見さんは、「最高です!辛みは多く食欲をそそられる。自主トレのときよく食べたな~」と当時を懐かしんだ。

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 2月19日(日)韓国・サムスンとの練習試合では、元阪神の守護神・呉昇桓投手が宜野座に登場。前日にその情報を耳にしたという新里さんは、この日限定で韓国料理・チャプチェ丼を『オースン丼』という名称で発売し、呉昇桓投手を歓迎した。
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 阪神タイガースへの愛が詰まった『パーラーぎのざ』。今キャンプは3年ぶりに通常営業に戻ったが…コロナ前と比べると未だ経営面で苦しい状況は続く。それでも、選手の懸命な姿やファンの喜ぶ姿に新里さんも毎日、元気をもらったと話す。

 「お陰様で色々な方々に支えられ、お客さんにも恵まれた幸せな店です!」

 宜野座の地で1か月間、鍛錬の日々を送ったタイガースは、いよいよ『アレ』へ向けたシーズンが始まる。新里さんはまた来年、たくさんの笑顔に会える日を心待ちにしながら、沖縄の小さな村からエールを送り続ける。

MBSスポーツコンテンツ部 上原桐子