39年前に滋賀県日野町で起きた強盗殺人事件をめぐり、無期懲役で服役中に死亡した男性の遺族らが再審=裁判のやり直しを求めていましたが、2月27日午後に大阪高裁が判断を下しました。

 1984年の年末、滋賀県日野町で酒店の女性が殺害されて金庫が奪われました。事件発生から3年以上経った1988年、警察は強盗殺人の疑いで酒店の常連客だった阪原弘さんを逮捕します。逮捕の決め手となったのは「自白」でしたが、暴言や暴力を伴う過酷なものだったといいます。
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 (阪原弘さんの長男・弘次さん)
 「『娘の嫁ぎ先に行って、家の中ガタガタにしてきたろか』と言われた時には父ちゃんどうにも我慢できんかったんや、と。父ちゃんは何もやってへんさかいに、誰が信用してくれんでもお前らだけは信用してくれ、(父は)そのように言いました」

 阪原さんは自白を強要されたとして無罪を訴えましたが、無期懲役が確定。服役中だった12年前、75歳で病死しました。

 失意の遺族を奮い立たせたのは阪原さんが刑務所で使用し送り返されてきた「日用品」でした。

 (長男・弘次さん)
 「父は、刑務所の中にいるときはおそらく『阪原弘』ではなく『番号』で呼ばれていた。せめて父の無念だけでも晴らしたい。名誉だけでも回復したい」

 2012年、阪原さんの遺族は再審=裁判のやり直しを求めることを決意。2018年、大津地裁は再審の開始を決定しました。しかし、検察側が不服を申し立てたため、舞台は大阪高裁へと移ることになりました。
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 有罪判決を覆す要素の1つとして弁護側が主張しているのは、金庫や死体遺棄現場の「引当捜査」に関する問題点です。有罪判決では、阪原さんが「金庫や女性の死体の遺棄現場を捜査員の誘導なしで案内できた」とされています。しかし、弁護団が新たに証拠開示されたフィルムネガを調べてみますと、調書に添付された写真の順番がおかしいことなどが判明。阪原さん側は「警察が写真を差し替え、誘導なしで案内できたことにする虚偽の証拠を作った」と指摘しています。

 再審は認められるのか。迎えた2月27日。大阪高裁が出した結論は…。

 (記者リポート 大阪高裁前)
 「再審開始、再審開始です。大阪高裁も裁判のやり直しを認めました。大津地裁に続き、大阪高裁も裁判のやり直しを認めました」

 大阪高裁は遺体発見現場の引当捜査の写真に関し、ネガでは再現用の人形を持っている状態と持っていない状態で交互に撮られているのに、捜査書類では人形を持った状態だけを取り上げている点に着目。「立ち会った捜査官による誘導の可能性を含めて、任意に行われたといえるかどうか疑問を差し挟む余地が生じた」と判断し、再審の開始を認めました。

 (長男・弘次さん)
 「改めて本当にうれしいです。皆さんのご支援のおかげで良い決定が得られました」
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 決定が出てすぐに弘次さんが電話で報告したのは、脳梗塞で療養中の母・つや子さんでした。

 (電話で母・つや子さんに報告する長男・弘次さん)
 「(検察の)即時抗告棄却なった。再審、再審が開かれるで。よかったな。ありがとうな」

 (長男・弘次さん)
 「(母は)お前らが頑張ってくれたさかいに良い結果が出たんだと。お前らのおかげだと、ほんまによかったな、と声が詰まっていましたよ。父の雪冤を一番望んでいるのはやはり母だと思います。我々はそのために頑張っているような気がします」

 一方、大阪高検は「主張が認められなかったもので遺憾である」とし、最高裁に特別抗告するかどうか検討します。