ロシアで開かれた『愛国集会』。20万人が参加したとされ、有名歌手らが登場して盛り上がる中で、プーチン大統領が演説しました。またプーチン大統領は中国の外交トップである王毅共産党政治局員と会談しましたが、国のトップと外交トップという『アンバランスな会談』となりました。大和大学の佐々木正明教授は、この会談の狙いについて、注目すべきポイントは『同席者』だと解説します。
(2023年2月23日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

◎佐々木正明氏(大和大学教授):元産経新聞モスクワ支局長 当時ロシアによるクリミア併合を現地取材

―――ロシアで20万人規模の「愛国集会」が開かれました。著名歌手が登場して「歌があって、兵士のインタビューがあって、歌」というパッケージが何度も繰り返され、十分に会場が温まったところでプーチン大統領が出て演説をしました。佐々木教授、「盛り上げ役には報酬」という話もありましたが、ある程度、動員がかけられたというところでしょうか。

佐々木正明 大和大学教授: 事実はちょっとわかりませんけども、ロシア人に聞きますと、やはり動員がかかったんではないかと。エキストラには500ルーブル(=900円)が支払われたという報道もあります。ただ当日はマイナス15度だったんです、その中で1時間半繰り広げられたイベントで、どちらかというと兵士が主役といったような感じもいたしました。負傷兵が出てきて、部隊に配属されている兵士が「我々は勝つ」とか「ウクライナ人は民間人を殺している」とか、そういったような発言も舞台上から発せられておりました。

―――複数のアーティストがパフォーマンスするシーンもありましたが。

 国民的歌手、ポップスからアカペラ歌手まで出たんですけども、ロシアの芸能界では既にプーチンにつくか、そうではないか、っていうのははっきりしてるんです。ですからここに出たのはプーチン政権を支持するアーティストが出たということだと思います。途中、少年少女合唱団が出たんですけども、そこでも兵士の帰還をとても喜ぶとか、そういった歌声もありましたし、ウクライナ南部マリウポリで救出された少女が出てきて「ロシア人に感謝します」というような演出もありました。

―――実は去年3月18日にはクリミア半島併合8周年イベントと題して、同じようなイベントが行われているんですね。このときは、「プーチン大統領が着ているダウンジャケットが160万円のものじゃないか、あれだけ西側諸国を批判してイタリア製のダウンを着るのか。」みたいな報じられ方をしていました。同じ会場、同じ規模で行われた二つのイベントに変化はあったのでしょうか。

中国の外交トップ・王毅氏とプーチン大統領の『アンバランス会談』

佐々木正明 大和大学教授: はい。3月18日のイベントは2014年から行われているイベントで祝祭色が強く、昨年もその域を出なかったんですが、今回の2月22日のイベントは治安部隊とか兵士に感謝する、そのための集会だったんです。プーチン大統領自身も「兵士は勇敢に戦っている」という文言をちりばめたりとか、「勝利は私達のために」みたいな発言もふんだんに盛り込まれておりましたので、ウクライナ侵攻で戦っている兵士を称えるイベント。

 前日の年次教書演説は国家のエリートのために向けられたイベントですけども、このイベントは全国中継されまして、一般人にもウクライナ侵攻を正当化するというようなイベントだったのではないかなと思います。

―――プーチン大統領は中国の外交トップ、王毅共産党政治局員と会談をしました。プーチンさんは国のトップ、王毅さんは外交トップですから、アンバランスな会談にも見えるんですけれども。

 はい。王毅さんは国家主席ではないですよね。ただ習近平氏の名代としてロシアを訪問している。おそらく重要な説明があったんではないか。ということでプーチン氏が会った。その前にラブロフ外相、パトロシェフ安全保障会議書記にも会っていますので、最後にプーチン大統領と会ったという演出が取られてるんですね。で写真を見ますと、パトロシェフ氏とラブロフ氏が一緒にいるというのがポイントなんですね。

 これはもうロシアで報じられているんですけども、この春、習近平氏がモスクワ訪問するというふうに報道されています。そして24日に、習近平氏が和平案の提案を北京からするというふうに言われており、おそらく王毅氏は、習近平氏の和平案の内容についてプーチン氏に語り、外交面、安全保障面のアドバイスをラブロフ氏とパトロシェフ氏から助言をいただくためにそばに置いたんではないか、そして一緒に聞くことによって今後対応をとりやすいということで、2人を呼んだんではないかなというふうに私は感じています。

―――和平案をプーチン大統領が受け入れる可能性があるんですか。

佐々木正明 大和大学教授: これは、ウクライナとロシア双方が受け入れ可能な案でないと、実現性はないですよね。中国ですから、案がロシア寄りであればウクライナは受け入れられない。ただ注目すべきは、王毅氏は、モスクワの前にミュンヘンに立ち寄って、ウクライナのクレバ外相とも話し合っております。おそらく内容についても話し合ってるんではないか。調整するために王毅氏が欧州を歴訪したんではないかというふうに感じております。

トップがウクライナ未訪問はG7で日本のみ 今後は…

―――そして、トップ会談といえばバイデン大統領がウクライナを電撃訪問しました。結果、トップがウクライナ訪問をしていないG7唯一の国が日本なんです。そんな中でサミットの議長国は、事前に各国へ訪問して挨拶をするんですけれども、ドイツにはまだ行っていないんです。ここがウクライナ訪問に繋がるのかどうなのかというところは。

 はい、これを考える材料というのを提示したいなと思います。バイデン大統領は、アメリカ軍がポーランドまで警護をして、極秘にキーウに入りましたよね。いっぽう翌日(21日)にイタリアのメローニ首相が入ってる。その2日前の19日には、イタリア国内で「メローニさんは、キーウに入ります。」と報道されているんです。メローニさんはバイデンさんとちょっと違って、鉄道でポーランドから入るんですけども、駅で歓迎を受けてるんです。

 では日本はどうなるか。私は、この5月までの段階、そして国会の審議の状況によって、おそらく岸田さんは訪欧するんだと思います。そのときにサプライズでいくのか、はたまた日本でそういう報道がされていくのか、はちょっと見えないですけども、ウクライナ側は日本の首相が来るようにということを要請していますので、おそらく私は行くんではないかなというふうに感じています。