バレンタイン商戦が本格化しています。“食の阪神”で親しまれる阪神梅田本店では、百貨店グランドオープン後初となるバレンタインイベントが2月14日まで行われています。その名も「阪神のいちごとチョコフェス2023」。今回、取材班は大人気のいちごイベントを任された若手社員に密着。3年前に異例の抜てきをされて以来いちごワールドを追求し続けるそのコダワリを取材しました。

「映え」を追求した“チョコ×いちご”のバレンタインイベント

 老舗の紅茶ブランドとコラボしたトリュフチョコに、大人向けのウイスキー入りのチョコレート。2月1日に始まった阪神梅田本店のバレンタインイベントの売り場は連日大盛況!…なのですが、皆さんのお目当てはチョコだけではないんです。
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 (訪れた人)
 「いちご目当てで来ました。いちごが好きなんで」
 「(服も)いちご、(ベルトも)いちごです。こんな感じで、靴も」

 そう、これが阪神のバレンタイン。実は世界のいちごの品種の半分以上が日本のものだと言われるほど日本人は大のいちご好き。そこに目をつけて、いちごとチョコレートをコラボしたバレンタインを売りにしているのです。
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 バレンタインデーまで1か月あまりとなった1月13日。バックヤードの一室ではイベントに向けた会議が行われていました。チームを率いるのは、いちご色のマスクに、いちごのイヤリングをつけた“いちごプロデューサー”の異名を持つ安田みなみさん(34)です。

 (阪神梅田本店 宣伝・広報部 安田みなみさん)
 「すごくプレッシャーなんです。プレッシャーに負けないように頑張ります…」
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 来店客の高齢化が課題となっている百貨店。イベントをきっかけに10~20代の若者のハートを掴みたいと様々な仕掛けを考えます。その1つが、館内に設置するいわゆる「映えスポット」。しかし、試作品を見た安田さんの表情が冴えません。

 (安田みなみさん)
 「いちごスイーツが主人公なので、いちごスイーツが映えるためのグリーンウォールにしたい。いちごの粒をちょっと減らしてもらったほうが背景といちごスイーツが喧嘩しないので…」

 とにかく「映え」を追求する安田さん。もちろん、こだわりは売り場だけではありません。

『おいしいはもちろん、見て楽しいというのも重要な要素』

 安田さんが訪れたのは、レトロな雰囲気が人気の大阪・中崎町にあるカフェ「太陽ノ塔洋菓子店」。バイヤーと一緒に口説き、初めてイベントに参加してもらえることになったお店です。
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 この店に惚れ込んだ理由、それは、見ているだけで楽しい名物の「ソースアート」です。万華鏡を覗いたような世界がお皿を彩ります。

 (安田みなみさん)
 「すごく繊細な作業ですね。上に(ケーキを)置くのがもったいない」

 「これならきっと若者の心をも掴むはず」と、イベント用のデザインを頼んでいたのです。
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 さらにもう一品。赤と白のコントラストが目をひくいちごのパフェ。よく見ると、いちごのヘタの部分に“指輪”が。遊び心が光ります。
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 (安田みなみさん)
 「阪神のいちごバレンタインは『おいしい』はもちろん大前提でほしいんですけど、やっぱり『見て楽しい』っていうのも重要な要素やなと思っているので、すごくありがたいです」
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 (太陽ノ塔 広畑典子代表取締役)
 「(イベントに参加するお店は)『映え』に強いお店さんばかりで正直すごくびびっているという感じなんですけど、そこでちょっとでも結果を出せたら自信になるのかなと」

日本全国のブランドいちごを食べ比べできる「いちご狩り」を企画

 順調に準備が進む一方で、気がかりなことも…。訪れたのは奈良県田原本町にあるいちごの栽培農家「上田農園」。ここで栽培しているのは糖度と酸味のバランスがよく濃厚な味わいが人気の「古都華」です。
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 実は、イベントでは「古都華」や「スカイベリー」など日本全国のブランドいちごを集め、自分で好きないちごを選んで食べ比べできる「いちご狩り」を企画していて、それぞれ1日200粒は必要になるというのです。
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 (安田さん)「数とかって順調に今年採れているんですか?天気が寒いから(生育がよくない)と聞いていたので心配で来たんですけど」
 (上田農園 上田智之さん)「寒波も来ておりますので、なかなか厳しい中なんですけれども、しっかり栽培、手間暇惜しまず栽培しておりますので」

 安田さんの表情に安堵の色が。必要な数も確保できそうです。

イベント前日まで「映え」にこだわる安田さん『適当なことはしたくない』

 1月30日、イベントまであとわずか。閉店後の店内ではあわただしく会場の設営が進んでいました。運ばれてきたのは男性スタッフの身長をもゆうに超える荷物。梱包シートをはがしていくと、現れたのは巨大いちごです。これを一番目立つ場所に…。ゆっくりと慎重に引き上げます。イベントの顔もスタンバイ完了です。
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 一方で安田さんは1月31日、売り場の最終チェックに追われていました。打ち合わせでダメ出ししたあの映えスポットは…。

 (安田みなみさん)
 「これちょっと違う、ちょっとこれじゃないかな。ここを皆さんは壁に使っていちごスイーツを撮られるので、そのときに後ろが透けたりしているとちょっと映えにくいというか」
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 確かにところどころに隙間があるようです。イベント開始は翌日。ギリギリまで映えの追求にこだわって修正を依頼します。

 (安田みなみさん)
 「(グリーンウォールは)写真を撮りやすいとすごく好評なので、せっかくいただいている評判を落としたくないかなと思うので、ちょっと適当なことはしたくないかなって感じです」

迎えたイベント当日…開店前から長蛇の列

 迎えたイベント当日の2月1日、館内を駆け回る安田さんの姿がありました。開店まであと2時間、朝に届いたばかりのいちご狩り用のブランドいちごを陳列していきます。奈良の農家が作った「古都華」も無事納品されました。

 (安田みなみさん)
 「(Q見に行った甲斐がありましたね?)うれしい、すごくきれい」
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 扉の外にはオープン前から長蛇の列ができていました。
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 そして、開店。目指すはバレンタインのイベント会場。思い思いのスイーツを満喫します。

 (訪れた人)
 「チョコは甘ったるくなるけど、いちごは無限に食べられそう」
 「おいしいです」
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 イートインコーナーには初参加となった中崎町のカフェ「太陽ノ塔」も。試行錯誤を重ねて出来上がったパフェやケーキが順調に売れていきます。
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 安田さんが最後までこだわった映えスポットは、狙い通り、撮影する人が絶えません。

 (訪れた人)
 「こういう装飾があったほうがかわいく映るからいいと思います。(テンションが)もう上がりまくりです」
 「映えるように撮っています。見た目も味も大事です」
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 中でも、ひときわ長い列ができた場所がありました。それは、ブランドいちごを食べ比べできる「梅田でいちご狩り」(このイベントは終了しています)。滅多にできないと、初日のチケットはわずか2時間で完売しました。
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 (安田みなみさん)
 「初日は好調な滑り出しでちょっと安心しました。(自分が)関係ない催事だとシンプルにうれしいで済むんですけど、自分が携わっていると安心とか。うれしいよりもほっとする方が大きいですね」

 「食」だけじゃない「映え」の阪神に…。安田さんの挑戦は続きます。