2月24日のウクライナ侵攻一年に向けてロシアが大規模攻勢に出るとの予測が出ていますが、筑波大学名誉教授・中村逸郎氏が最新情報を語ってくれました。まずはドイツが戦車レオパルト2に続いて新鋭戦車「パンター」も供与するとの情報。また北朝鮮の兵士500人をウクライナの戦地に派遣するとの話。さらに1月中旬にロシア、ウクライナ、アメリカの3国が密かに和平交渉を実施。アメリカが「ロシアの占領地域を認める」といった提案を示したものの、クリミア半島の帰属をめぐってまとまらなかったといいます。(2023年2月10日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

ドイツ「パンター」供与、ロシア「ゼレンスキーは物乞いピエロ」

―――筑波大学名誉教授の中村逸郎先生です。ウクライナ情勢ですけども、アメリカの戦争研究所がロシア軍がルハンシク州で大規模攻撃開始というふうに発表しました。ルハンシク州は、一時期はウクライナ軍も陣地を奪還していた。領土奪還していたということなんですけども、非常に激しい攻撃が始まっているということです。中村先生によりますと、今月20日か21日に予定の年次教書発表に向けてプーチン大統領は成果が欲しい、大きな目標はルハンシク州、そしてドネツク州の完全制圧だと、そういうことなんですね。

 そうなんですね。実は今月の20日か21日かどっちかですが、年次教書を発表するということで、この年次教書って何かって言いますと1月2月ですけども、今年どんな政策を外交政策な国内の政策もどういう方針でいくかっていうことを官僚とか政治家の前にて提示するのが年次教書です。2022年は戦争を始めたためにしなかったんです。今年はやんなくてはいけないっていうことで、20日か21日ということで、それまでに実は大規模な攻撃が開始されるんじゃないかっていう話はずっと出てたんですね。この戦果をこの年次教書で誇るために、ルハンシク州とか、ドネツク州を完全制覇するんじゃないかという予想は出てたんですけども、今朝方、こういった形で大規模攻撃が開始されたというニュースが飛び込んできたのです。それともう一つザポリージャ州でも攻撃が始まったと。そしてルハンスク州のハリキウ、ウクライナ軍が奪還したところにも、また攻撃を始めてるというニュースが飛び込んできています。

―――現在のプーチン大統領なんですが、非常に焦ってるんじゃないかということなんです。中村先生によるとプーチン大統領には理由があります。一つ目が、ゼレンスキー大統領のイギリス・フランスの電撃訪問です。英仏そして独の首脳と会談して、さらにEU首脳会議にも出席した。これをみて焦ってるんじゃないか。ゼレンスキー大統領が自由に外国に行ってるじゃないか、なぜ阻止できないんだ、彼は5月のG7の広島サミットにも行く気らしいが、その話をしに行ったのか?こういったことを非常に気にしてるってことですね。

 ドイツの首相とも10日会ってるんですね。そこで昼間ですけどもニュースが入ってきまして、ドイツは最新の戦車パンターっていうらしいんですよね。これは最強の戦車と言われて、ドイツは外国に出したことないような戦車っていうことで火の中でも突撃していくことができるという。このパンターという戦車をウクライナに供与する準備ができたというニュースが入ってきている。こういった動きを踏まえて、ロシアではゼレンスキーさんの動きをどう報じているかといいますと、日本時間で今朝3時にロシアのニュースでもやっぱ扱われてて、ゼレンスキー大統領は欧米ヨーロッパを回りながら、まるで物乞いをしているようだとピエロのような人だという、非常に冷たい反応してるわけなんですね。

―――三澤さん、ドイツの強力な兵器を供与するという判断。一時期は非常に国内でも世論は分かれたということでしたけども、決めましたものね。

(MBS三澤肇解説委員)そうですね。レオパルト2に続いてパンター。おそらくパンターはちょっと小型の戦車ではないんだけどそれに準ずるような兵器だと思うんですが、非常に性能が高いという話なので、それも供与するということになれば、本格的ですよね。ただ供与のタイミングっていうのがいつになるのかっていうのが、おそらく春先に選んでいるということになると、今の大規模攻勢に間に合わないということになりますから。そこも狙っての攻撃ということなんでしょうね。ロシア側はね。

―――兵器の供与はできても操縦とか扱う人がトレーニングしないと使えないんですよね。あそこにも時間がかかると当然訓練しなきゃいけないということですからね。
 
ウクライナでは3万人の兵士たちをアメリカとイギリスで訓練するという話も入ってきています。

―――そしてG7広島サミット(5月)にゼレンスキー大統領が出席するのではないかという話もあるそうです。

ゼレンスキーさんとしてはできるだけG7広島サミットにオブザーバーという形でもいいから参加して、そして欧米にサポートされている、後ろ盾がしっかりしてるっていうところを見てもらいたいと、そのための調整もあったんじゃないかということは考えられるんですね。

民間軍事会社「ワグネル」のプリゴジン氏台頭、“囚人リクルート方式”をロシア軍も模倣か

―――プーチン大統領が焦っている理由は、民間軍事会社のワグネルの創設者、プリゴジン氏がゼレンスキー大統領を挑発する動画を撮影し公開した。プリゴジン氏が戦闘機の中から空中戦を挑むような発言があったというイギリスのザ・テレグラフが伝えています。最近プリゴジン氏は発言力を強めている。ゼレンスキー大統領とやり合うのはプーチン氏ではなくて自分だと言わんばかりじゃないかということですね。
 
 私はもう6月にはこの戦争終わるんじゃないかっていう予想を立てたんですね。それほどロシア軍は本当に崩壊状態になってきたところに実はプリゴジンさんが囚人たちをかき集めてなんとか巻き返していったんです。このプリゴジンさん。囚人をもうリクルートしない。招集しないっていうニュースが出てきたようなんですが、途端に何が出てきたかっていうとロシア国防省が今度は囚人を集めるんですって。

―――国防省が囚人を要するにリクルートする?
 
 リクルートして戦地に送っていくと、まるで最初にプリゴジンさんが考えたことを国防省がやるっていうことは、国防省自体が今度はプリゴジンさんに乗っ取られたような形にもなってきているわけなのです。それともう一つすごい重要なニュースが入ってきたんですけど、このプリゴジンさんは北朝鮮に深く関わり始めて先週のニュースによりますと、北朝鮮の兵士500人。年齢は19歳から27歳の兵士、条件として既婚者をウクライナとの戦地に送ると。それがこの2月の中旬からスタートすると。なぜ既婚者かっていうと、いわゆる北朝鮮は人質に家族を取るという形で送り込み、それをプリゴジンさんがやっているということで、プリゴジンさんの発言力がどんどんどんどん強まっている。来年の3月、ロシアで大統領選挙なんですね。それをにらんだ動きかもしれないですけども、プーチン大統領の後継者になるかも、狙っているだろうプリゴジンさんがどんどんと発言力を強化してくれるということなんですね。

―――元々このプリゴジンさんはプーチン大統領の側近って言われていましたね。

 1990年代から元々プーチンの料理人と言われていて、レストラン経営者だったんですけども、その人がもう本当にロシア軍を乗っ取るというようなところまで来てるということなんですね。

―――ですから決してそのプーチン政権が今一枚岩じゃないっていうことですか?

 そうですね。オリガルヒの中でも割れてきいて、実はコヴァリチュクさんっていう銀行のオーナーがいるんですよ。大金持ちの彼が、実はプリゴジンさんの方に付いてしまったと。その代わりロスネフチとかガスプロムといった天然資源の会社のオーナーたちはプリゴジンさんにはもうついて行けないってことで、少しずつ離れてしまってるという状況なんです。

「露・ウ・米」極秘三国会談はクリミア半島で暗礁へ、そこに「トルコ地震」

―――非常に混乱しているプーチン政権だということが言えるかと思いますが、番組の冒頭で今日は地震のお話もお伝えしました。このトルコシリアの地震がウクライナ戦争にこれ与える影響はどうなのでしょうかというところなんですけども。1月下旬に実はこれびっくりなんですけど、ロシア、ウクライナ、アメリカの3カ国で秘密裏に和平交渉が行われていた。そんなことがあったのですか?
 
 先週入ってきたんですよ。ニュースが、アメリカから。どうどういう交渉が行われたかっていうと、今、ロシアがウクライナ領の軍事的に制圧している20%をもうロシアのものだと認めようという提案をアメリカがロシアとウクライナに示したそうなんですね。ウクライナは当然嫌ですよね、認められない。ロシアも駄目だって言ったんですよ。なぜかって言うと、クリミア2014年に強制併合したクリミアについて何もこの提案がないと。いうことで乗ってこなかったんですね。クリミアが一つ大きなポイントでクリミアをどうするかっていうことで。これまでもうなかなかまとまらなかったのは要するにトルコがもう入ってしまうしかない。

 なぜかっていうと、トルコっていうのはクリミアの中にトルコ系の住民がいるわけですね。ですから、そこをエルドアン大統領が今年の6月までに大統領選挙があると言われてますので、積極的に自分の成果ということで大統領選挙を乗り切ろうとということで積極的に交渉してたんだけども今回地震があって、なかなかクリミア問題先行き見えない。私はこのスタジオに来る直前に入ってきたニュースがあるんですよ。

 タイム紙が打ったんですけども、これ地震があって、エルドアンさんに仲介を頼めないっていうことでウクライナはこのクリミアに向けてイギリスのミサイル「ハープーン」これ今欧米がウクライナに供与しているミサイルの中で最も破壊力の強いものを使って、このクリミアに攻撃をする準備ができたとウクライナ政府が発表したんですね。まさにこのタイミングで。

―――なるほど。やっぱりロシアもクリミア半島は譲れない、ウクライナもここ奪還したいという。
 
 (三澤肇解説委員)やっぱりロシアが南下してなぜクリミア取ったかっていうと港が欲しかったと。黒海艦隊の基地があるわけですね。ここはもう死活的な利益なんで、ここは絶対離したくないって当然思いますよね。ただウクライナは一時的にウクライナ領になってましたから、それは領土だというふうに言いますよね。なかなか双方とも譲れない一線だと思うし。クリミア・タタール人も先生おっしゃるようにいますしね。ちょっとややこしいですね。
 
 私、思ったのはウクライナとロシアの間で、もう本当に打開策が見えない。そこでエルドアン大統領が交渉に出てくるっていうことは、何か裏にうまくあるんじゃないかっていうのが、私の想像ですけども。エルドアンさんはひとまず自分がクリミアを預かりますよという解決策ってか打開策を持ってたかもしれないんですけど、地震からですね、影響してきたってことですね。

悪魔がプーチンに「地獄にあなたの居場所はないから出ていけ」…若者のプーチン離れ進行中

―――今はなかなかこの問題については動きが取れない状態であるということです。ではロシア国内は一体どうなのかというお話もしておきます。ロシア国民進むロシア離れ、プーチン離れ、どういうことなのか34歳以下の若者のうち一時的ではなくて、ロシアを離れたいと考えている人の割合が44%だというデータ、そしてもう一つ、特別軍事作戦に対する考え方について、これまでと変わらず、ネガティブ、後ろ向きだと答えた人の割合が何と75%と非常に高い数字が出たということです。だからやっぱりこのロシア離れプーチン離れというのが数字で出てきているということですね。
 
 この44%という数字に注目したいんですけども、今このロシアを去った人が970万人ぐらいいるんだろうと言われて、そん中にオリガルヒっていうお金持ちだけではなくて、若者も相当含まれている。そうなるとロシアのニュースによりますと、出生率の低下、最大15%落ちるっていうことで少子化が進むというとこで懸念が非常に大きくなってきている。実はさん、今週の初めですけども、「プッシー・ライオット」というロックグループの女性たちの歌がリリースされたんですよ。

 それがタイトルは「プーチンの遺灰」っていう12人の女性たちがナイフをかざしながらプーチンを襲いかかっていて地獄へ落としてやるって叫んだんですよ。ロシア国内で販売したんです、流れているわけですね。それちょっと私もびっくりしてロシア人の友人にメールしたんですよ。「プーチン大統領地獄に追いやるなんていう今曲が流れているのだけどどう?」って聞いたら、人々の間でロシア人の間でなんてひそひそ話があるって地獄に落ちてったプーチン大統領を地獄の入り口で待ち構えていた悪魔がプーチンに対して"「地獄にあなたの居場所はないから出て行け」と地獄からも追い出されるという、つまり罪深い人は地獄にも行けないということがロシア国民の間でひそひそ話で出ているということですよ。

―――ですからロシア国内でもやっぱりこういったプーチン離れロシア離れというのが進んでいるということですね。(了)